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癒やしと安らぎの環境賞2017

「内視鏡画像診断AI」なら 世界で勝ち抜くことが出来る

「内視鏡画像診断AI」なら 世界で勝ち抜くことが出来る
多田智裕(ただ・ともひろ)1971年東京都生まれ。96年東京大学医学部卒業。同年東京大学医学部附属病院外科。97年虎の門病院麻酔科。同年東京都多摩老人医療センター外科。99年三楽病院外科。2000年東京大学医学部附属病院大腸肛門科。同年日立戸塚総合病院外科。2001年東京大学医学部附属病院大腸肛門科。05年東京大学大学院外科学専攻卒業。同年東葛辻中病院外科。06年ただともひろ胃腸科肛門科院長。07年同理事長。12年東京大学医学部附属病院大腸肛門外科学講座非常勤講師。

AI(人工知能)の医療への応用が期待される中、さいたま市内でクリニックを経営する多田智裕氏は内視鏡専門医歴20年超の経験と人脈を活かし、内視鏡画像診断をアシストするAIを開発した。内視鏡医の作業軽減と病変の見逃し防止に役立つため、現場への普及を目指し、会社も設立。内視鏡医療は日本が世界をリードしているので、日本発の内視鏡画像診断AIが世界を制することも可能だ。


——AI開発に関わったきっかけは?

多田 私は内視鏡専門医として20年以上仕事をしてきましたが、AIについては素人でした。昨年、ディープラーニング(深層学習)の専門家である東京大学大学院の松尾豊・特任准教授の講演を聞いたのがきっかけです。ディープラーニングについての話を聞いて、これを医療に応用すればいいと思いました。

——どんな講演だったのですか。

多田 松尾先生は「今はカンブリア紀」だというのです。生物の進化を見ていくと、カンブリア紀(約5億4200万年前から約4億8830万年前まで)に一気に動物の種類が増える「カンブリア爆発」という現象が起きました。これは動物が目を持つようになったからだという説があります。松尾先生は、ディープラーニングとは、機械に目が出来たようなものだと言っています。これまでのコンピュータには目がなかったけれど、画像情報を人工知能で処理するようになると、機械に目が出来たのと同じ状態になるというのです。カンブリア爆発のように、多くの産業に目を持つ機械が登場し、活躍するようになるというわけです。

——内視鏡診断に使えると考えたのですね。

多田 AIの画像診断能力が人間を超えているということは、既に明らかになっています。内視鏡診断の分野で、AIに人間を超えるようなことが出来るのなら、ぜひやってもらいたいと思いました。実は、内視鏡医の側にも、AIを必要とするような問題があったのです。

——どんな問題ですか。

多田 二つあります。一つは、見落としリスクの問題です。胃がんの早期発見のために内視鏡の検診を受けても、見落としてしまえば何の意味もありません。内視鏡医の中には、経験の浅い医師もいます。また、能力の高い医師でも、見分けるのが難しい症例はあります。この見落としを解決するのに、AIは優れた役割を果たします。例えば、見分けるのが難しく、医師の判定で正答率が31%だった症例でも、我々が開発した診断システムを使うと、瞬時にある部分を示し「93%の確率でがんがある」と指摘してくれます。実際、そこにがんがあるわけですが、医師が見落としかねないがんも、たちどころに見つけることが出来ます。

——もう一つの解決すべき問題とは?

多田 医師の負担です。胃がん検診の内視鏡検査では、1人につき40枚ほどの写真を撮ります。私が所属している浦和医師会は、年間約5万人の検診を行っているので、チェックする写真は200

万枚にもなります。これを50人の医師で見るとすると、単純計算で1人が4万枚を見なければならないのです。実際に私が行う場合、1時間に30

00枚を見るのが限度。それ以上は集中力が持続しません。さらに、見落としを防ぐため、来年度から1人の枚数を50〜60枚に増やすことが決まっています。内視鏡専門医には他の仕事もありますから、この状況に本当に困っていたわけです。

——AIの利用で、大量の画像チェックと診断の精度向上を期待されているのですね。

多田 人間のミスを減らすのに加え、医師の技術格差を解消するのにも役立ちます。地方や僻地のように、内視鏡専門医が少ない地域で、特に役立つのではないかと思います。

覚えさせる症例が多いほど精度が高まる

——AIにはどのように学習させるのですか。

多田 がんのある内視鏡画像や、がんのない内視鏡画像を、1枚1枚覚えさせるわけです。ディープラーニングは「教師あり学習」なので、それは人間がやらなくてはいけません。ただ、人間に教える時のように、あそこが少し盛り上がっているとか、色がどうだとか、といったことは教える必要がありません。そういった特徴はAIが勝手に認識して学習していきます。

——覚えさせる画像は多いほどいい?

多田 学習した画像が多ければ多いほど、診断の精度が高くなります。胃がんの内視鏡画像診断をサポートするAIの場合、数万件に及ぶ症例を学ばせています。そうでなければ、実用に耐えられる精度は得られないのです。数百レベルの症例を覚えさせた程度では、使い物になりません。

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