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第74回 現状打破の保証ない「グローバルな再編・集約」

第74回 現状打破の保証ない「グローバルな再編・集約」
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
現状打破の保証ない「グローバルな再編・集約」

 武田薬品は7月29日、世界5カ国に分散している研究拠点を、日本の湘南と米国ボストン、サンディエゴに集約すると発表した。湘南研究所は中枢神経系疾患・再生医療、ボストンの研究所はがん・消化器系疾患・免疫関係、サンディエゴは研究部門を支援する機能を持たせる。

 だが、鳴り物入りで2011年2月にオープンした湘南研究所は、その後これといった成果を示してはいない。武田自身、他社と比較しても見劣りがする新薬開発の停滞はかねてから衰退の原因として認識されているが、今回の「グローバルな再編・集約」によって、必ずしもそうした現状から脱却できるという保証が与えられているわけではないだろう。

薬と呼べないような薬で大もうけ
 実際、近年の武田の新薬開発については、お世辞にも業界トップという貫禄の片鱗も感じさせない。その典型が、2013年に発売された「ロトリガ」だろう。「中性脂肪を下げる高脂血症治療薬」と銘打っているものの、イワシなどの魚油成分を精製した、新規性ゼロの健康食品に毛が生えた程度の薬剤だ。新薬開発は国際的にも厳しさを増しているとはいえ、一昔前の武田なら「新商品」にすることすらちゅうちょしたのではないか。

 それでも、売り上げはいい。2015年の4月から12月まで、169億円も稼いでいる。だが、どう考えてもこの数字は、不必要に何かと薬に依存したがるこの国の「世界一薬好きの国民性」によってしか説明できそうにもない。

 何しろ、「ロトリガ」の2㌘のカプセル錠剤が261・3円もするのに、100円もしないサバの缶詰でも買った方が、「ロトリガ」の主成分である「エイコサペンタエン酸(EPA)」と「ドコサヘキサエン酸(DHA)」をはるかに多く取ることができるのだから。

 武田は新薬開発能力の停滞を、あこぎな商売でカバーしているということか。同じような商品に先発の「エパデール」があるが、こちらはDHAと作用に差は無いEPAを主成分とし、1・8㌘で237・4円と割安。ジェネリックのイコサペント酸エチル粒状カプセルに至っては、900㍉㌘で96・8円しかしない。しかも「エパデール」は、大規模臨床試験(JELIS)を受け、「主要冠動脈イベントの減少」が認められたというが、「ロトリガ」の方は今年2月段階でJELISを受けた形跡もないのだ。

 そもそも、中性脂肪を下げる効能があったとしても、そのこと自体が特に健康に格別の効果を及ぼすわけではない。そうなると、いったい「ロトリガ」とはどのような疾病のリスクを抑える「薬」なのか。その「高価格」は、何に見合った額なのだろう。

 同じように人畜無害に等しいくせに価格だけは一人前なのが、武田の「飲むだけでダイエット」というキャッチの肥満治療薬「オブリーン」だ。添付文書によると、プラセボと比較し、1年で1・1㌔の減量に成功したとある。参加者の平均体重は84・56㌔というが、1年かけてその程度の減量効果では、誰がどう考えても誤差の範囲だろう。そんな「薬」に金をかけるより、ウォーキングやランニングでもした方が余程「肥満治療」の効果があるはずだ。

 こうした薬とも呼べないような「薬」でもうけている武田が、今になって研究拠点の「グローバルな再編・集約」とやらに乗り出したとしても、今後果たしてどんな新薬が誕生するのだろう。「グローバル」がどうのこうのよりも、少しは自社のあこぎさを自嘲できるような正常な感覚を取り戻すことの方が先決ではないか。そうでもしないと、相も変わらずサバの缶詰より何倍も高価なのに主成分が劣る類いの「薬」が、「新製品」として登場しかねない。

 それでも「ロトリガ」だの「オブリーン」だのと、いくら人畜無害でもまだ救われる思いになるのは、今はやりの某週刊誌の連続企画ではないが、「危ない薬」よりはよほどいいからだ。米国で、巨額の賠償判決が下され、武田初の赤字の原因を作った糖尿病治療薬の「アクトス」。裁判では膀胱がん発症の因果関係は認められなかったが、16年3月に出版された高名な医学雑誌『British Medical Journal』によれば、「アクトス」の主成分のピオグリタゾンは、他の糖尿病治療薬と比較し、膀胱がんのリスクが1・63倍だとされている。

 こんな「薬」が、武田の稼ぎ頭として経営を支えてきたというから恐ろしい。日本でも集団訴訟が起きても不思議ではないだろうが、今年の『日経』1月24日付によれば、武田はさっさと糖尿病治療薬の研究を中止してしまった。普通に考えて、自社の主力商品が問題を起こしたら、新規の継続商品を発売するのが常道のような気がするが、今や武田の開発力とはしょせんこの程度なのだろう。

「重大な副作用」あっても販売継続
 より怖いのは、武田の降圧剤の『アジルバ』と『ザクラス』だ。『産経』によると、厚生労働省は今年1月12日、「降圧剤として使われている『アジルサルタン』『アムロジピンベシル酸塩』の投与を受けた患者18人が横紋筋融解症などを発症し、うちアムロジピンベシル酸塩の投与を受けた2人が劇症肝炎で死亡したと発表した」。

 この『アジルバ』と『ザクラス』も、主成分に「アジルサルタン」と「アムロジピンベシル酸塩」が含まれているが、記事にはメーカーの名前が出ておらず、問題自体の深刻さの割には他紙も含めて報道が控えめだった。恐らく武田の膨大な広告費の毒が回っているためだろう。だが厚労省は武田に対し、死亡者の1人が薬との因果関係が否定できないとして、添付文書を改訂し「『重大な副作用』の項目に横紋筋融解症や劇症肝炎を追記するよう求めた」(同紙)のは、事実だ。

 武田は「重大な副作用」がある『アジルバ』を販売中止もせず、「スーパーARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)」と称している。ところが『アジルバ』は同じ降圧剤でも他社製品と比較して割高の価格設定だが、肝心の降圧効果については同じかあるいは有意に劣るのだ。

 武田は「グローバルな再編・集約」がどうのこうのより、それ以前に一製薬メーカーとして自省する課題があり過ぎる。もっとも今の武田には、「グローバル企業」という見えだけが先行しているのだろうが。

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