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第54回 長谷川が準備しウェバーが放った「決定打」

第54回 長谷川が準備しウェバーが放った「決定打」
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
長谷川が準備しウェバーが放った「決定打」

 格差の固定化。安倍晋三政権が私たちの社会に押し付けた弊害の一つである。その縮図ともいえる企業が製薬業界に存在する。武田薬品工業だ。

 「今や武田の体質は外資系企業より外資的です。役員は数億円の報酬を懐に入れている。部門長は中途採用の外国人ばかり。一般社員は残業代ゼロでこき使われる。名ばかり管理職が大量発生。リストラを推し進めています」(製薬業界関係者)

 会長・長谷川閑史が金科玉条のように口にする「武田イズム」「ダイバーシティー(多様性)」を実行した結果、 社内連携や協力体制はほとんど見られなくなった。社内の人間関係は乾き切っている。2014年を通じて最も価値を下落させた企業──業界内外ではそんな評も飛び交う。

 武田の多様性はかなり独特なもののようだ。

 「外国人の役員や部長が好き勝手にし放題。机上の空論ばかりを現場に押し付けてきます。それが武田流のダイバーシティーです。結果として社内には彼らにおもねる人材ばかりがはびこるようになった。はっきり言ってすさんでいます。 これが武田イズムの結末です」(同前)

長谷川が趣味で推し進めた「粛清」
 「外資よりも悲惨」という見方もある。

 「土日も返上して自分や家族を犠牲にし、毎日深夜まで残業する。そんな働き方を続けて管理職にまでたどり着く社員もいます。ただ、末期はあまりに悲しい。過労で体調を崩して終わる者、大病を患う者、部下と衝突し、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの罠を仕掛けられ飛ばされた者など、枚挙にいとまがありません」(製薬ベンチャー企業経営者)

 度重なるリストラの連続で日本人社員の年収引き下げが横行している。役職は剝奪。早期退職で多数の人間が石もて追われた。内部登用はほぼない。これでやる気を出せという方がおかしい。リストラの舞台は武田が肝いりで稼働させた「湘南研究所」にも波及。「本社にまで及ぶのは時間の問題」(同前)との見方もある。

 武田流ダイバーシティーとは外国人優遇策の別名である。グラクソ・スミスクラインやファイザー、ノバルティスファーマ、サノフィ──並み居る海外メガファーマに子会社として組み入れられるのが落ち。そんな武田社員の軽口にも力は入らない。長谷川が趣味で進めた施策の弊害だ。

 「長谷川は今ごろになって内部登用を打ち出しています。だが、時すでに遅し。ダイバーシティーの名の下に社長時代、生え抜きのライバルや異分子を徹底的につぶしてきたのは長谷川自身です。一方で外国人や外資出身の日本人を要職に据えてきた。こうして出来上がったのが今の『長谷川帝国』。武田は質的に転換しました」(武田OB)

 長谷川の粛清によって少なからぬ数の優秀な研究員が放逐されていった。そんな人間でも自らの経営能力が水準以下であることにはさすがに気付いたのだろうか。長谷川は企業コンサルティングの世界ではちょっとした有名人である。

 「コンサルタントに莫大な金をつぎ込んでいます。もちろん、大半は無駄な捨て銭。コンサルにいいようにされている。言いなりに導入したせいで、人事や評価の制度はかなりひどいものになっている。現場は医薬情報担当者(MR)上がりばかりで専門家が皆無。コンサル業界では武田の企画や人事の担当者は『カモ』扱いです」(同前)

武田國男が準備した長期低落傾向
 もっとも、武田凋落の責任を長谷川一人に押し付けるのは酷かもしれない。先代の武田國男の評判も決して芳しいものとはいえないからだ。

 「國男は運に恵まれただけです。100億円以上を売り上げるブロックバスター─抗潰瘍薬『タケプロン』、高血圧薬『ブロプレス』、糖尿病薬『アクトス』、前立腺がん薬『リュープリン』の絶頂期に社長を務めた。一方で農薬をはじめ多くの事業を廃絶し、社員のやる気を失わせる人事制度を定着させています。現在に至る長期低落傾向を準備したのは國男政権時代。新薬の開発には10年以上の月日が必要です。國男以前の社長や研究者が真っ当であったことの配当を手にしただけ。國男が準備し、長谷川が推進し、決定打を放ったのは現社長クリストフ・ウェバーです」(同前)

 元来、武田は「新卒原理主義」を取ってきた。「中途採用者」をトップに据えるのは企業理念の大転換のはずだが、さしたる説明はない。もっとも、武田は近年、中途採用にご執心の様子。優秀なコンサルのアドバイスでもあったのだろうか。

 長谷川時代から武田経営陣は失策に事欠かない。ナイコメッド買収、研究体制の瓦解、海外訴訟、「CASE‐J」事件──。さらには長谷川からウェバーに至る経営体制自体も失敗の最たるものといえる。いまだに誰かが責任を取ったという話は聞こえてこない。どういうことだろうか。

 「ウェバー体制の発足直前、武田経営陣と創業家一族が正面衝突したことがありました。その時の経営サイドの言い分が傑作。『外国人社長が誕生すれば、海外との取り引きが増える。だから次期社長は日本人にやらせるべきではない』と(苦笑)。今時、こんな稚拙な論理で動いている企業は外資はもちろん、日系にもありません。長谷川の考える『グローバル』など、所詮はこの程度のものです」(前出の業界関係者)

 グローバル経済の荒波をかぶっているのはこの国ばかりではない。ウェバーの祖国・フランスも生き残りを懸けたな競争を戦っている。

 フランス政府は14年5月、「戦略的」企業に対する外国企業の買収・合併を事実上拒否できる政令を出した。国内企業保護への施策とみていいだろう。そんなフランス政府の主要な課題の一つが海外資本企業の誘致である。国内へ本社移転させ、フランス企業として登記変更させる。最終的には雇用確保と税収増を見込んだものだ。

 ウェバー社長の誕生がフランス政府のこうした姿勢と直接関わるものだとは言い切れない。だが、長谷川の哲学を欠いたなりふり構わぬ「売国経営」が必然的に生んだ現状を直視すれば、今後、何が起こっても不思議ではない。

 「グローバル」の定義すら明確に理解できていない経営陣が舵取りをする製薬大手。そんな企業の経営者が経済同友会代表幹事として「政治ごっこ」にうつつを抜かし、「成長戦略」に言及する。海外から見れば、失笑ものの光景だ。

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