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未来の会

女性人材を活かす病院経営
柔軟な勤務と積極的な登用で育児とキャリア形成を両立

女性人材を活かす病院経営柔軟な勤務と積極的な登用で育児とキャリア形成を両立

Vol.6 徳島大学病院(徳島県徳島市)
徳島大学病院は、国公立大学病院の中でも女性看護師の定着率が高く、女性が働きやすい環境づくりに熱心な病院と評価されている。具体的な取り組みについて、西良浩一病院長と原田雅史副病院長、上田美香看護部長に聞いた。

——女性が働き易い職場環境を整える為、どの様な支援策を行っていますか。
西良浩一 病院長   原田雅史 副病院長

西良 妊娠や出産など女性特有のライフイベントは、働く女性にとって大きな負担が掛かります。だからこそ、安心して子供を育てられる職場作りに取り組むのは当然の事だと考えています。更に、地方の病院は人員の確保に苦労する面が有り、女性が気兼ねなく配慮を受けられる態勢を整備する事が欠かせません。特に出産適齢期の女性が居る職場では、余裕を持った人員配置も必要です。この為、2008年から「全ての人が仕事と仕事以外の生活について働き方を調整する事で生活の質を高め、仕事にも良い影響を与える」という目標を掲げ、ワークライフバランスの実現に取り組んでいます。

原田 現在、本院の女性医師の約5割が産前産後休暇や育児休業を取得した経験が有ります。しかし、その期間を完全な休職とせず、希望に応じて「診療支援医師」として勤務出来る制度を設けています。診療支援医師は、出勤可能な時間帯に合わせて非常勤として働く仕組みで、診療や手術を担当したり、医局の症例検討会や学会に参加したりする事も可能です。働きながら経験を積み、知識を更新する事で、復職後のスムーズな現場復帰やスキルアップに繋がる事を期待しています。

——看護師の支援制度も有るのでしょうか。

西良 看護部では育児復帰支援プログラムを設けて、出産後の復職がスムーズに進むよう様々な支援をしています。育児休業中のスタッフには、病院での出来事をニュースとして知らせたり、復職後の配属先について意向調査を行ったりしています。ブランクによりスキル面に不安を覚えるスタッフもいると思いますので、希望する研修にも参加出来る様にして、復職を後押ししています。

——看護師の場合、夜勤者の確保に工夫が必要な場合も有るのではないでしょうか。

西良 本院では、夜勤に特化して働く「夜勤専従者」を登録する制度を設け、手当も従来の3倍程度に引き上げる措置を行いました。これにより、夜勤体制を安定的に維持しています。又、出産・育児世代だけでなく、高齢になってからも働き続けたいという声に応える為、配属部署を調整しながら65歳まで勤務出来る仕組みを整えています。体力的にフルタイムが難しい場合は、パートとして短時間勤務を選ぶ事も可能です。勤務時間の柔軟な運用により、1人1人が自分に合った働き方を選べる環境づくりを進めています。

——病院を含めて大学全体で女性が働き易い職場環境作りに取り組んでいるのですね。

西良 徳島大学では、女性研究者のキャリア支援や研究力向上を図り、全ての教職員のワークライフバランスを支援する為「AWAサポートセンター」を10年に開設しました。名称の“AWA”には、徳島を象徴する阿波踊りと“our(私達)”を重ね、皆で支え合う拠点にしたいという思いを込めています。文部科学省からも支援を受け、特に女性の人材育成に力を入れています。例えば「女性研究者上位職登用制度」では教授、准教授、講師として十分な業績が有る女性研究者を、各部局長の推薦に基づき上位の職で登用しています。この制度は13年から始まりましたが、これ迄に大学全体で48名が上位職で登用されました。病院の対象者は5名で、最近は1名の女性准教授が教授に登用されました。

——業務の効率化では、タスクシェアも重要です。

原田 本院ではキャリア形成支援センターを設置し、医師や看護師だけでなく、薬剤師や臨床検査技師、臨床工学技士等の医療技術職のキャリアアップに努めています。講習の受講費用等の補助制度も有り、様々な技能を身に着ける事で、タスクシェアにも貢献して貰おうと考えています。

西良 看護師の仕事は幅広く、何処の病院でも看護師に任せてしまう事がよく有ります。例えば手術の「器械出し」ではダヴィンチの様な医療用ロボット等の準備も看護師が行っている。しかし、臨床工学技士の方が機器の操作には精通しており、本来の業務範囲を考えてもその方が効率的です。この為、4月からは手術室に臨床工学技士を配置し、器械出しも担当する事にしました。看護師の負担を軽減して、出来るだけ看護師にしか出来ない業務に専念して貰うのが狙いです。こうした取り組みは、地方の公立病院では部分的に進んでいる所が有る様ですが、国立大学病院で舵を切ったのは本院が恐らく初めてだと思います。

——優秀な人材を確保する為の具体的な取り組みは。

西良 男女に関係なく、大学では教員のポストが限られている為、職位に付けない医師は「医員」という立場になります。医員は常勤ではなく給与水準も異なる為、週に4日勤務しながら、殆どの方が別の医療機関で兼業をしているのが実情です。それでも臨床と研究の両方に意欲を持って取り組んでもらいたいと考え、「アカデミア推進特任助教」という役職を今年5月に設けました。これも、国立大学では本学だけの制度だと思います。今年の選考は既に終わり、10月から特任助教として勤務して貰っています。

——選考はどの様に行うのですか。

西良 論文執筆や発表実績が有り、臨床と研究の双方にしっかり取り組んでいる人を対象に、教授らの推薦を受けて選考委員会で審査します。特任助教に採用された皆さんの実績は、助教と変わらない成果を出している人ばかりです。今回の選考では男性のみでしたが、今後は女性のキャリアアップにも繋がる制度として育てていきたいと考えています。

Voice

働き易い職場作りと看護師の未来

上田美香 看護部長

「ワークライフバランス」という言葉が一般的でなかった時代、子育てをしながら働く看護師は多くの困難を抱えていました。現在では、出産や育児への配慮は当たり前となり、短時間勤務や深夜勤務の免除等の制度を利用する看護師が殆どです。しかし、こうした制度が無かった時代を経験した看護師の中には、複雑な思いを抱く方もいます。それでも、誰もが働き易い職場を実現する事が何より大切。その為、私達は職場内でより良い人間関係を築く取り組みを進めています。

2012年から、看護部ではパートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)を導入しました。これは福井大学医学部附属病院が発案した看護提供方式で、2人の看護師が良きパートナーとなり、対等な立場で協力し合う仕組みです。患者さんの看護だけでなく、委員会活動や部署の目標達成まで、互いに支え合う事で業務の効率化とワークライフバランスの改善を目指しています。更に「働きやすい職場づくり委員会」では、パートナーシップマインドの醸成や、効率的に働ける仕組み作りにも力を入れており、これにより子育て中の看護師への配慮が自然に生まれる職場の雰囲気が整いつつあります。

職場の雰囲気が良くなる事で離職率は抑えられ、他の病院に比べてベテラン看護師の割合が高くなっています。今後も看護師としてスキルを高めながら、長く働き続けられる環境作りに取り組んでいきます。

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