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未来の会

265 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(沖縄県南風原町)

265 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(沖縄県南風原町)

芸術や自然に触れられる医療の砦に
256 沖縄県立南部医療センター・こども医療センター(沖縄県南風原町)

縄本島南部のほぼ中央、南風原町に在る沖縄県立南部医療センター・こども医療センターは、県内唯一の小児専門医療施設を備えた、県南部医療圏の基幹病院である。胎児から子供、大人まで継続して医療サービスを受けられる病院として全国でも数少ない部類に位置付けられ、県民の健康を一貫して支えている。

開院は2006年4月。当時、県内には高度な小児医療に対応出来る病院が無く、重い心臓病や難病を抱える子供の診療は県外の小児専門病院に頼らざるを得なかった。この状況を変えようと、心臓病の子供を持つ保護者らが「母子総合医療センター設立推進協議会」を結成し、20万人の署名を添えて県知事に要請した。その機運を背景に、県立那覇病院(那覇市)の老朽化に伴う移転·建て替えに併せて、総合周産期母子医療センターとこども病院の機能を備えた現在の体制が生まれた。

「こどもからおとなまで『大切な命を守り、県民に貢献する』」という病院の理念は建築計画にも反映された。正面玄関から院内に入ると、左右に小児外来部門と成人外来部門に分かれ、受付ホールはどちらも2階吹抜けの開放的な空間が広がっている。外来フロアは病棟の“みつうろこ”状の放射配置と呼応し、動線が扇状に分かれて明快だ。小児外来部門は黄色や緑、オレンジ等カラフルな色をふんだんに使い、子供が楽しめる雰囲気を心がけた。一方、成人外来部門は緑の有る落ち着いた雰囲気となっている。

又、新体制後に初代院長を務めた、小児科学と新生児学が専門の安次嶺(あしみね)馨氏は、正面玄関前にギャラリーを設け、小児科の受付前ホールはミニコンサートも出来る様、思いを設計に託した。同氏は、「病気の人も健康な人も、昆虫採集や芸術鑑賞の為に集える病院にしたい」と考え、蝶が舞い、花と緑が溢れる病院を目指して、樹木や草花等を敷地内や4階の屋上庭園に植栽した。

現在、ギャラリーの他、外来近くの休憩スペースや通路等には那覇市出身の画家・名渡山愛擴氏の教え子等で構成するイーゼル会の寄贈作品等が飾られ、患者や家族の目を楽しませている。又、PICUやNICU、GCUへ続く通路の壁には、病気や怪我の治療を受ける子供を励ます様に、海の生き物の絵等が描かれている。小児科外来ホールでも、院内コンサートやクリスマス会、ハロウィーンパーティー等が開かれ、患者や家族らが楽しいひと時を過ごしている。

戦争で焦土と化した沖縄は、医療分野でも壊滅的な損害を受け、まさに一からのスタートを余儀なくされた。戦後の沖縄の医療の中核を担ってきた前身・県立那覇病院の流れを汲む南部医療センターは、小児から高齢者まで年齢を問わず、24時間体制で救急患者を受け入れ、8つの離島にも附属診療所を置く等、県民にとって医療の最後の砦となっている。

県民の思いと期待を受け、新たな歩みを始めてから今年で20年目。県民の健康を守り、心の拠り所となる病院を目指して、今後も歩みを続けて行く。


沖縄県立南部医療センター・こども医療センター

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