
厚生労働省で「出世の登竜門」とされる大臣官房総務課長に旧労働省出身の官僚が久々に起用された。以前は旧厚生省出身者とたすき掛けの人事だったが、「旧労働省の人材不足」(厚労省OB)を理由に近年は旧厚生系が独占していた。今回は大臣官房総務課長経験者のその後や、知られざる業務等を紹介したい。
大臣官房総務課長は、人事、会計、国際と並んで「官房課長」と呼ばれる4ポストの1つだ。特に人事、会計、総務は重要視されており、例外は有るものの事務次官になるにはどれかの経験が必要だとされている。その業務は、厚労省提出の法案成立に向け、国会審議の円滑な運営の為に汗をかく事だ。与党である自民党の国会対策部屋に出入りしたり、与党の厚労部会長や衆参の厚労委員会の筆頭理事等に根回ししたりする。重要な情報や決定権を持つ国会議員ら関係者への接待等も日常茶飯事だ。与党議員のみならず野党議員等も対象だ。
大臣官房総務課長OBによれば、国会開会中は省内に有る個室に滞在する時間は短く、国会議員会館や国会、自民党本部辺りにいるという。只、国会が閉会すれば業務は閑散期を迎える為、前述のOBは「業務は不祥事等全省的な問題が起きた時の相談役になるぐらい」と明かす。
現在の大臣官房総務課長は、この夏に赴任した宇野禎晃氏だ。慶應義塾大を卒業し、1996年に旧労働省に入省した宇野氏は、雇用環境・均等局勤労者生活課長や社会・援護局福祉基盤課長、人材開発統括官付参事官等を歴任。大臣官房広報室長や塩崎恭久厚労相秘書官、人事企画官も経験している。旧労働省の事情に詳しいベテランは「宇野氏は旧労働省出身者の中では、国会回り等の経験が比較的有↘る方だ。現在いる旧労働省の人材の中では適任と言えば適任だ」と明かす。
旧労働省出身者が官房総務課長に就任するのは、2015〜17年に務めた吉永和生氏以来だ。吉永氏以降、国会議員への根回し等に慣れた職員が育たなかった為で、或る厚労省OBは「吉永氏の後任と目された里見隆治氏が公明党参院議員に転身したのも大きかった」とも指摘する。近年、大臣官房総務課長に就任するのは、大西証史氏、間隆一郎氏、野↖村知司氏、巽慎一氏等旧厚生省出身者が続いていた。
では、大臣官房総務課長を経験した官僚のその後の人事はどのようなものになっているのか。旧厚生省出身の水田邦雄氏は事務次官に迄昇り詰め、旧労働省出身の小林洋司氏や坂口卓氏は事務次官級の厚生労働審議官に迄出世した。事務次官級に迄なれなくとも、労働基準局長で退官した吉永氏の様に主要な局長に就任する等一定程度迄は出世している。旧厚生省出身の大西氏も老健局長を務めた。こうした経歴から期待された人材が就くポストである事は間違いない。
只、前述の経験者は「旧労働に比べ、旧厚生は大臣官房総務課長の地位は相対的に低い様だ」との見方を示す。旧厚生省のポストで予算を握る会計課長の方がより重要なポストと見られている為だ。
大臣官房総務課長は危機を未然に防いだり、トラブルを抑えたりする役目の為目立ち難いが、厚労省の屋台骨を支える様なポジションと言える。こうした業務を通じて、事務次官や厚労審議官といった役職に昇進させられるかどうか見定められている。


LEAVE A REPLY