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第96回 厚労省人事ウォッチング
陰に隠れた91年入省組 台頭するのは?

第96回 厚労省人事ウォッチング陰に隠れた91年入省組 台頭するのは?

 厚生労働省で逸材が揃う1990年入省組の陰に隠れている年代が有る。黒田秀郎老健局長や宮崎敦文大臣官房長等、旧厚生省の91年入省組だ。枢要なポストを占める様になり、90年入省組が退官した後の厚労省を背負う存在になるかも知れない。

 この年代でいち早く局長級ポストに昇進したのが黒田氏だ。東京・桐朋高から東京大法学部を卒業して入省。雇用均等・児童家庭局総務課少子化対策企画室長や内閣官房内閣参事官、保険局医療介護連携政策課長、老健局総務課長等、省内でも重要なポストを歴任。大分県副知事を経て、23年夏に局長級の大臣官房総括審議官となり、昨年7月から老健局長を務めている。今後想定される介護保険法改正に向け、その下準備をしている最中だ。厚労省の人事に詳しいOBは「この期のエース的な存在が黒田氏だ。大分県でも評判が良かったと聞く」と明かす。

 一方、91年入省組で黒田氏を追う様な存在が宮崎敦文氏だ。開成高から東京大法学部を卒業して入省。年金局資金運用課長や老健局医療介護連携政策課長、保険局総務課長、大臣官房会計課長を歴任。内閣審議官や総合政策担当審議官を経て、昨年夏に大臣官房総括審議官、今夏の幹部人事で官房長に就任した。

 両氏の経歴を比べると、複数のポストで重なっているが、その就任時期は黒田氏の方が早い。先述のOBは両氏を比べ、「黒田氏は自分のビジョンを形にしていくタイプの官僚だ。一方の宮崎氏は与えられた仕事をこなすタイプで対照的。黒田氏はややむらっ気が有るが、宮崎氏は苦しい仕事でも耐え忍び、安定感が有る」と評価する。

 今夏の幹部人事で医薬局長に就任したのが、宮本直樹氏だ。札幌北高から一橋大法学部を卒業した宮本氏は、職業安定局雇用開発部障害者雇用対策課長や保険局保険課長、子ども家庭局総務課長を歴任。医政・精神保健医療担当や健康・生活衛生担当の大臣官房審議官も経験した。省内では「仕事ぶりは堅実」(中堅職員)との声が有る。

 この年代で厚労省の局長に昇り詰めたのは今の所この3人だけだが人材は他にもいる。例えば浦和高から東京大法学部を卒業した内山博之氏は現在、内閣府健康・医療戦略推進事務局長だ。直近では、大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官やデジタル庁国民向けサービスグループ次長等を歴任している。鹿児島の私立ラ・サール高から東京大法学部を卒業した鳥井陽一氏は消防庁審議官。健康・生活衛生担当の大臣官房審議官や医薬・生活衛生局総務課長等を歴任した。鈴木建一氏は国立国際医療研究センター理事長特任補佐、高橋和久氏は社会保険診療報酬支払基金理事長特任補佐に就任している等、省外に出ている人材が多くなる年代でもある。

 当面、厚労省の中核を担うのは間隆一郎保険局長や鹿沼均社会・援護局長、村山誠職業安定局長等の90年入省組だが、91年入省組も主要ポストに就き始めている。事務次官は90年入省組で暫く回す事が予想される為、91年入省組から輩出されるかは分からない。事務次官になれるかどうかは政権幹部の意向や政策課題の設定次第で、時の運も左右する。先述のOBは「どうなるかは見通せないが、黒田氏や宮崎氏は十分その候補者になり得るだけの能力を持った存在だ」と太鼓判を押す。突然の石破退陣は、91年組に吉と出るだろうか。

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