
巧妙な「ハゲタカジャーナル」にご注意!
医療業界関係者の間で、論文の信頼性を巡る深刻な問題が浮上している。「ハゲタカジャーナル」とは、適切な査読を行わず掲載料目当てで論文を受け入れる粗悪なオープンアクセス誌を指すが、OMICS Publishing GroupやWASET等、従来はPubMed等の正当な医学文献データベースに収録されていなかったり、インパクトファクター等のジャーナル指標の掲載がなかったり等で、一目で見分けが付く事が多かった。しかし、近年その境界線が極めて曖昧化。しかも、ハゲタカジャーナルでも高いインパクトファクターを獲得するケースが増加し、問題視されているという。
或る大学病院の研究者によると、「論文投稿時に査読者や編集者から、そのジャーナルに掲載された論文を参考文献として引用する様指示される手口が横行している」という。この巧妙な仕組みにより、見掛け上の学術的価値が演出されているのだ。更に、これ迄信頼出来る学会誌だった雑誌が経済的理由からハゲタカジャーナル化するケースも深刻化している。前述の研究者は「以前は安心して投稿していた雑誌が、気が付けば怪しげな運営に変わっていた」と証言する。
医療従事者や企業の研究開発担当者が注意すべき点として、オープンアクセスのみのジャーナルを避ける事、査読からアクセプト迄の平均期間が極端に短い場合も要注意だ。だが、「査読に数日しか掛からないのに、インパクトファクターは一流誌並み。詐欺まがいもここまで来ると芸術だ」と、別の医師は苦笑いする。
果たしてハゲているのは雑誌の倫理か、それとも業界人の危機感か。
「特定機能病院」新基準で医療地図はどう変わる?
厚生労働省が2024年11月、特定機能病院の「とりまとめ案」として医師派遣機能を要件に追加する方針を示した事で、我が国の医療提供体制が大きく様変わりしようとしている。「どうせ補助金目当てでしょ」と医療関係者からは冷ややかな声も聞こえるが、実際には医師人事の実質的支配を取り戻す狙いが透けて見える。
大学附属病院本院が特定機能病院の承認を受ける為の要件として、医師派遣機能を追加する事も提案された今回の改正案。或る病院関係者は「新研修医制度で大学から医師の人事権を剥がそうとしたが失敗した。今度は特定機能病院の承認や補助金をちらつかせて、首輪をつけ直そうという魂胆だ」と眉をひそめる。承認条件に医師派遣を織り込めば、大学が医師配置をコントロールする仕組みを復活させるのも容易という訳だ。
新基準では、総合診療科の設置も承認要件に加わる見通し。だが総合診療専門医は全国で約940人しかおらず、特定機能病院全てに配置するには人材不足は火を見るより明らか。臨床検査科についても同じ穴のムジナで、現状では病理診断科や血液内科、感染症科が臨床検査業務を兼務しており、独立した臨床検査科を持つ施設は少ない。臨床検査専門医の絶対数も限られ、必須化すれば現場は間違いなく悲鳴を上げるだろう。
更に、40年に向けて議論が進む新しい地域医療構想との整合性を取る形で、類型化や承認要件の詳細を詰める議論は続いており、24年12月には取り纏められた。だが地方の中核病院への影響は避けられそうにない。「看板を守る為に無理な派遣要請に応じれば、本院の医師不足が更に深刻化する」との懸念も広がる。派遣先では「3年は戻ってくるな」と言われ、派遣元では「いつまで人を取られるんだ」と詰められる、そんな板挟みが現実化し兼ねない。
現在88病院が特定機能病院として承認されているが、新基準の導入で一部は承認取り消しリスクに直面する可能性も出てきた。厚労省が描く医療地図の再編は、果たして地域医療の充実か、それとも、承認権と補助金を盾に官僚と大学が人事を牛耳る「医師派遣版・天下り」の復活か。医療界は、表向きは無関心を装いつつも、内心では気になって仕方がないといったところだろうか。
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