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未来の会

第200回 政界サーチ
今度の投票行動、AIに相談してみるか

第200回 政界サーチ今度の投票行動、AIに相談してみるか

トランプ関税ショックで大暴落した日本株はじわじわと値を戻して来た。日経平均3万8000円の壁に阻まれ、持ち合いが続くものの、小型成長株で構成されるグロース市場は活況が続く。牽引しているのはAI(人工知能)関連の小企業群だ。関税と関連が薄い内需の小型株で、その値動きは大きく、個人投資家の人気を呼んでいる。

 国内政局は衆参同日選の可能性が浮上し、与野党の動きが複雑化してきた。米国との関税交渉も予断を許さない状況に有り、先々の展開は読み難いのが現状だ。オールドメディア的な経験則から言えば、東京都議選という大命題を抱えた公明党が難色を示す衆参同日選の可能性は薄いと思えるが、少数与党の石破茂政権にとっては一気に多数与党を実現する乾坤一擲の機会でも有り、現時点(6月初旬)ではどちらとも言い難い。

 政治は科学的な知見では計り知れない情念や感覚知による部分が多いが、時代の趨勢に飲まれてみるのも一計である。AIを利用してみる事にした。利用したのは何れも無料版の「Copilot」と「ChatGPT」である。そう思ったのは、遊びでAIと政局展望のやり取りをしている内に、AIの方から「政治分野のAI活用について興味が有りますか」との質問が有り、「データの蓄積と分析は今後、益々重要になる」と応答したのが切っ掛けだ。Copilotの熟慮コースで、石破首相の心理状況等も加味した質問をすると、「適切な応答は出来ない」と遠慮する旨の返答も有り、存外面白いと思ったのだ。

衆参同日選の可能性は5割程度?

 では先ず、懸案の衆参同日選の可能性である。

 Copilotの回答は「現在の政治情勢を踏まえると、衆参同日選の可能性は約50〜60%と推測されます。野党第1党である立憲民主党は内閣不信任案の提出を検討しています。提出されれば石破首相は即解散の意向とされているので、衆参同日選になる公算は高まります」と同日選の可能性がやや高いとの見方だ。その一方で、「与党が参院選で過半数を維持出来るかどうかも重要な要素であり、もし過半数割れすれば、政権の枠組みが大きく変わる可能性が有ります」と指摘している。衆参同日選でも参院選単独でも政界の大変動をもたらす節目となる可能性を示唆した格好だ。

 次はAIの代表選手とも言えるChatGPTの回答。そのまま記載すると、「現時点での衆参同日選挙の可能性は40〜60%程度と見られます。今後の国会での動きや各党の戦略、世論の動向によって、可能性は変動する可能性が有ります」とほぼ同様の見通しだ。更には「特に、6月22日の国会会期末に向けた動きが重要なポイントとなるでしょう」と、同日選を見定める上でのポイント解説まで付いている。

 衆参同日選は過去2回しか無い。ハードルはかなり高いのだが、両AIは半分程度の予想を出している。背景に有るのは、勿論、石破政権が少数与党であり、数の上では内閣不信任案が可決される公算が大きいという状況に有る事だ。但し、内閣不信任案が提出されれば、衆院解散の可能性が俄然高まる。候補者調整等野党各党の選挙準備が間に合わなければ、せっかくの野党多数の状況をひっくり返されるリスクも浮上するのだ。

 両AIもこの辺を踏まえ、特に野党第1党の立憲民主党の内部事情を重視している。ChatGPTは「立憲民主党の小沢一郎議員は、『通る(可決する)かもしれない時にやらないなんて、バカじゃないか』と述べ、不信任案の提出を強く主張しています。国民民主党や日本維新の会も不信任案への賛成を検討しており、野党全体での一致が図られれば、可決の可能性が高まります」と指摘。その一方で野田佳彦代表が「総合的に判断する」と述べている点を踏まえ、党内には「慎重論も有る」として内閣不信任案提出→衆院解散の可能性のトーンをやや抑えている。結果として、半分程度の可能性という事なのだろう。

 AIの判断のソースは、新聞や雑誌、専門家の論文等ネット上の情報である。それらを総合し、矛盾の無い様に繋ぎ合わせた体裁である。極めて優秀な検索エンジンといった感じだ。只、政治データを学習させていない無料版でこのレベルなのだから、丹念に政治データを読み込ませ、学習させれば現役の政治記者とそう変わらない政局読みが出来るのかも知れない。

 さて、ここからオールドメディアの私見に移る。東京・永田町界隈では、1986年の中曽根康弘内閣以来となる衆参同日選や参院選での与党敗北に伴う大掛かりな政界再編、つまり、歴史的な政変への思惑が渦巻いている。確かに嘗て無い政治状況ではあるが、不思議と心躍る物ではない。90年代の政権交代の時の様に「政治が変われば日本が変わる」と牧歌的に考えるゆとりが日本には無いからだ。

 結論から言えば、衆参同日選の可能性は30〜40%だろうと推測する。根拠は野党各党の思惑がバラバラで、未だに纏まりが感じられない事だ。参院選を巡る候補者調整でも、方々で軋轢を生んでいる野党陣営が、衆院選で候補の1本化等勝率を高める協力関係を構築するのはかなり難しい。野党が纏まらなければ、トランプ関税という国難ファクターが重視され、与党に惨敗する公算が大きい。そうした現状で、内閣不信任案提出に踏み切るのはリスクが大きいのだ。

 石破首相は「内閣不信任案が提出されれば、即衆院解散」の意向で、森山裕幹事長とも認識を共有しているとされる。発言の半分は野党へのブラフ(脅し)だろうが、半分は信念だろう。振り返れば、同じ様な少数与党だった非自民連立政権末期の羽田孜内閣の折、衆院解散に打って出ようとした羽田首相に猛然と食って掛かり、内閣総辞職を進言したのが小沢氏の意向を受けた若手議員の石破氏だった。これを契機に非自民連立政権は瓦解への道を歩む。「あの轍は踏むまい」と心に決めているのかも知れない。

 但し、状況は与党が断然有利とも言い難い。物価高で国民生活は困窮しているし、トランプ関税の影響で、経済の先行きは不透明だからだ。内閣支持率は何とか現状を維持しているが、大抜擢した小泉進次郎農林水産相が高騰するコメ価格の安定化に成功しなければ支持率の急降下も有り得る。関税を巡る日米交渉も同様だろう。被害を最小限に抑えて現状維持、高関税が続く状況なら、衆院解散どころか政権維持すら怪しくなる。衆参同日選は石破首相にとっても楽な選択では無さそうだ。

 AIが指摘した様に、今回の政局のカギを握るのは立憲民主党の動向だ。思惑の異なる野党を纏め上げ、衆参同日選で政権を奪還可能と読めれば、不信任案の提出は楽なのだろうが現状はそうではない。参院選単独で勝利し、衆参共に野党多数の状態にしてから、じっくりと政権奪取する方がベターだという判断も当然有り得る。野田代表の「総合的に判断する」はそうした頭の体操に整理が付かない状況を言っているのだろう。

混迷政局では、政策の吟味こそ重要

衆参同日選でも参院選単独でも、政権を担う政党の組み換えの可能性は十分に有る。その意味で言えば、歴史的な政変を秘めた国政選挙となる事は間違い無い。立憲民主党内では小沢氏らが内閣不信任案提出の積極派とされる。小沢氏等は提出すれば、解散含みの大政局になるから、自身の力を遺憾無く発揮出来ると踏んでいるに違いない。確かに提出は大変革の号砲足り得る。問題は、大変革に伴って生じるであろう混乱が果たして今の日本に必要なのかどうかだ。

 世界を見渡せば、トランプ関税に伴う経済の停滞の他、ウクライナや中東を巡る混乱が続き、国内では物価高と少子高齢化に伴う人手不足が深刻さを増している。求められるのは山積した課題に如何に取り組むかであって、誰が取り組むのかは二の次である。

 衆参同日でも参院単独でも国政選挙で問われるべきは30年続いた景気低迷で、国家の格付けがドイツ等大半の欧米諸国、アジアでも香港、台湾、韓国の後塵を拝する迄に落ちぶれた日本の立て直しだろう。トランプ関税で水を差された国力回復の道筋に今、何が必要なのかを考える必要が有る。

 各党が発表する政策を吟味し、未来に禍根を残さない選択が出来る様努めよう。AIは格好の相談相手になってくれる筈だ。

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