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未来の会

第50回「日本の医療の未来を考える会」 リポート 新型コロナ対応に当たる医療従事者の 「メンタルヘルス」を守るために

第50回「日本の医療の未来を考える会」 リポート 新型コロナ対応に当たる医療従事者の 「メンタルヘルス」を守るために

この1年数カ月、新型コロナウイルスとの戦いの最前線にいる医療従事者達は、大きなストレスに晒されてきた。自分が感染するのではないかという懸念から、うつや不安が生じてくる事もある。また、自分の仕事のせいで家族に迷惑をかけているというストレスから、モチベーションを維持出来なくなる事もある。こうしたメンタルの不調を未然に捉え、適切にサポートしていく事が求められている。4月28日に衆議院第一議員会館で開かれた勉強会では、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科精神行動医科学教授の高橋英彦氏を講師に迎え、パンデミック時に医療従事者が陥りやすいメンタル不調と、それを回避するために行うべきサポートについて解説して頂いた。

原田義昭・「日本の医療の未来を考える会」国会議員団代表(自民党衆議院議員)この勉強会がついに50回目を迎えました。世の中のたくさんの意見を吸い上げられる勉強会にしていこう、という事で始まった勉強会です。専門家の皆さんがご意見をしっかり出し合ってくださる事が、必ずや世の中のためになると考えています」

三ッ林裕巳「日本の医療の未来を考える会」国会議員団(内閣府副大臣、自民党衆議院議員、医師)「本日のテーマは医療従事者のメンタルヘルスですが、コロナ禍による自殺者の増加が気になっています。今年に入り、孤独孤立対策担当の副大臣もせよとの事で、現在はその担当として、あらゆる施策について相談しているところです」

COVID-19に対応する
医療従事者のメンタルヘルス

■職員全員を対象としたメンタルサポート

 東京医科歯科大学は、昨年3月に新型コロナウイルス対策室を立ち上げ、4月2日に1人目の患者を受け入れました。4月6日には本学執行部から「長丁場になるので、職員のメンタルヘルスをしっかりやってほしい」との話があり、私もそれが必要と考えていましたので、メンタルヘルスケア(MHC)チームを作り、職員のメンタルヘルス対策を開始しました。MHCチームは、精神科医の他に、緩和医療医、保健管理センターの職員、看護師で構成されています。

 メンタルサポートの対象としたのは全職員です。第1に、新型コロナの診療に当たっているICU、ER、コロナ病棟、テント外来で働く医師と看護師に対して行いました。次に、PPE(個人防護服)を装着した支援業務に全診療科・部門が関わるため、PPEの着脱講習が行われたので、その時にセットでメンタルヘルスのアセスメントを受けるようにしました。

 医師と看護師だけでなく、実際に患者さんや検体に触れる人達を対象にしました。更に、研修医も、PPEは着ないが患者と接する受付事務や看護助手も、患者と接する事がない事務の人も対象としました。

 職員に対するメンタルサポートの取り組みを「mPCR」(mental and Psychological Care/Relief)と名付けました。心のケアは軽視されやすく、自分は大丈夫と考えがちです。しかし、自分は新型コロナに感染しないからPCRは受けないというのが許されないように、メンタルPCRも自分は大丈夫だからと考えず、しっかり受けていただきました。

 メンタル状態のアセスメントでは、不安、抑うつ、燃え尽き等の評価を行いました。その中で、「パンデミック時の医療者のストレス評価尺度」を開発し、それを使った評価も行いました。質問紙を使ってスクリーニングを行い、カットオフ値以上の人を呼んで、2回面談をするのです。その中で「問題なし」となる場合、保健管理センターで心理カウンセリングを継続する場合、医療の介入が必要な場合に分けて対応しました。

■新しいストレス評価尺度を作った

 「パンデミック時の医療者のストレス評価尺度」(TMDP=Tokyo Metropolitan Distress Scale for Pandemic)という新しい評価尺度を開発しました。パンデミックにおいて、医療者は自分が感染源になって家族へうつすリスクがありますし、社会的偏見や経済的負担等、感染症に特異的な事象が起こります。このため、医療者が家に帰らずに仕事をしたり、家族から職場の変更を求められたり、他の施設への出勤を断られたりと、様々な事が起こります。これらの問題は、うつや不安とは別に、医療者のモチベーション低下や離職に繋がる事があります。そして、これらパンデミックに特有の人間関係や経済的負荷等を評価する尺度は、これまでなかったのです。

 医療者のメンタルの不調だけではなく、自発的な欠勤や辞職も医療崩壊に繋がります。そこで、この尺度では、「感染に対する懸念」と「社会的なストレス」の両方を評価出来るようにしました。

 感染に対する懸念は、自分が感染したり、自分が感染を広げてしまったりするのではないか、というストレスです。うつの尺度であるPHQや、不安の尺度であるGADという既存の方法があり、これを使えば、ある程度はうつや不安は予測する事が出来ます。つまり、メンタル不調による欠勤や辞職のアセスメントが出来るのです。

 パンデミック時に特有の社会的ストレスがあります。それによって人間関係が悪化したり、社会生活が制限されたり、収入が落ちたりする事で、モチベーションが低下します。これをアセスメントする尺度がなかったので、新しく作りました。


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