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新型コロナ感染判別用にショートステイ型の 「使い捨てベッド」を各地に仮設してはどうか

新型コロナ感染判別用にショートステイ型の 「使い捨てベッド」を各地に仮設してはどうか
1. 院内感染相次ぐ 
 医師・患者など疑い含め1000人余  NHKまとめ

 4月24日付NHKニュース「院内感染相次ぐ 医師・患者など疑い含め1000人余 NHKまとめ」によると、NHKがその取材をもとに、4月21日の時点で各地の院内感染の状況をまとめたらしい。それによると、「医療機関で新型コロナウイルスに感染した、あるいはその疑いがある医療従事者や患者などは、全国のおよそ60の医療機関で合わせて1086人に上りました。医療従事者は513人で、このうち医師は109人、准看護師などを含む看護師は181人となっています。また、患者は534人に上っています(※内訳不明者などその他は39人)」とのことである。

 当時の国内での感染確認者総数は1万1541人であったから、「院内感染が疑われる人は全体の1割近くに達する」ことになるらしい。大変なことである。まずは、医療従事者への院内感染を可及的に防止しなければならない。

2. 院内感染の可及的な防止策

 この度の新型コロナの感染拡大は、想定外の事態の連続であったので、そのための医療提供体制が十分には準備できていなかった。とは言っても、院内感染が相次いだのは日本だけではない(欧米も同様であった)。ただ、その中でも、PPE(個人防護具)やN95マスクなどの防護具の配給が進みつつある。PCR検査も、院内感染の予防という観点からも必須であったことが再認識され、今や普及しつつあるらしい。

 病床について見れば、結核病床が利用されたり、新型コロナ専用の仮の病床が増設されたり、仮設の多数の病床が「臨時の医療施設」(新型インフルエンザ等対策特別措置法第48条)として開設されたり、軽症者用にホテルが借り上げられたりするなどしている。新型コロナの感染者用の病床には、対策・対応が急速に進んで来た。

 ところが、「紛れ込み感染」などにより、新型コロナ以外の非感染者用の病棟に院内感染が広がってしまう例も相次いでいる。逆に、新型コロナ以外の非感染者のみを診療している病院では、他の入院患者や外来患者を守るために、救急搬送の受け入れに困難を感じてもいるらしい。つまり、非感染者のみを診療している病院が積極的に一般の救急搬送を受け入れると、ある時知らぬ間に「紛れ込み感染」が生じてしまう。

 逆に、そのような感染リスクを重視すれば、救急搬送の受け入れは極めて困難となる。少なくともPCR検査の結果を見てからの受け入れでないと、感染していない他の入院患者や外来患者への責任を果たせていないという考えも出るかもしれない。こうして見ると、たとえ巨額の財源を要したとしても、何らかの効果的・具体的な打開策を見出さねばならないであろう。

3. 感染判別用にショートステイ型の
「使い捨てベッド」を仮設

 新型コロナ以外の非感染者を診療している病院が、新型コロナの無自覚の感染者によって院内感染を引き起こされないようにしなければならない。しかし、社会的には、救急搬送の受け入れを積極的に行って、新型コロナ以外の急病の患者が困らないようにすることも強く要請されている。ただ、その両者の要請を達成するためには、救急搬送の受け入れの困難さを、抜本的に解消しなければならない。

 実際、一般の病院にグリーンゾーンとレッドゾーンとを区分けさせて、院内感染を全く起こさせないようにしつつ、適切に感染者も非感染者も診療できるようにするのは、並大抵のことではないように思う。さらに、それとても、1つの病院建物の中での「紛れ込み感染」の排除は難しい。

 と言って、多くの病床を1カ所に仮設したとしても、本質的には変わらない。もちろん、新型コロナの感染者のうち特に重症者をよく治療できるようにはなって良好ではある。しかし、一般の病院の院内感染対策には効果がない。

 そうすると、(あまり見たこともないことで空想の産物ではあるが、)アイデアとしては、「使い捨てベッド(病床)」というシステムが思い付く。新型コロナ感染の判別用に、救急受け入れ病院のすぐ近くに、受入れまでの間の緊急暫定のショートステイを想定した、使い捨ての病床(ベッド)を仮設する、というアイデアである。

 新型コロナへの感染の可能性を除外して、新型コロナ以外の非感染者への救急対応をしている病院につなぐことが、主たる役目と言ってもよい。典型的なものとしては、PCR検査もできる診察室と個室1病床のみの有床診療所のイメージである。その後に取り次ぐであろう近くの救急病院の規模などに応じて、2つ以上の多数の有床診療所を並べて仮設しておく。

 まず救急車はそのうちの1つの有床診療所に搬送し、患者はPCR検査を受けると共に、その病状に応じて応急措置(近くの救急病院の診療体制に応じて、産科も外科も何科でもあり得よう)を施されて、PCR検査などと総合した感染の有無の判別の結果が出るまでは、その有床診療所に入院している。

 その結果、新型コロナ陽性ならば感染症病棟に移るし、新型コロナ陰性ならば一般の病棟に移ることとなろう。なお、新型コロナ陽性となった場合は、その有床診療所は一旦休止して消毒をするので、その間は、並んでいる他の有床診療所のみが稼働することとなる。

 つまり、仮設の病院・診療所内で院内感染をしないように、1床のみの有床診療所とするのがよい。それを2つ以上のセットで並べ、救急病院のすぐ近くの敷地に仮設することとする。もちろん、新型コロナの流行が去ったら、直ちに取り毀すこととなるであろう。つまり、「使い捨てベッド(病床)」と言ってよい。

4. 都道府県が臨時の医療施設として開設

 この「使い捨てベッド」は、知事が都道府県内の救急受け入れ可能病院の状況に応じて、それら都道府県内の各地に多数、仮設する。開設者はその都道府県、運営者は近くの救急病院(単独または複数)、費用は全て開設者たる都道府県負担で、特別措置法第48条所定の「臨時の医療施設」として仮設する有床診療所とするのがよいであろう。

 以上は、検査とセットで運用することによって、院内感染を可及的に防止し、救急搬送などでの一般患者受け入れを円滑にするためのシステムである。もちろん、病床配置という観点だけからの1つのアイデアであるにすぎない。ただ、それであっても、効果的・具体的な打開策の立案のための何らかのヒントになれば幸いである。

 

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