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未来の会

第101回 高齢者の総合健診は寿命を短縮

第101回 高齢者の総合健診は寿命を短縮

 乳がん検診や肺がん検診など、特定の病気を発見するために行われる検診と異なり、「健診」あるいは「総合健診」は、幅広く各種の検査を実施して総合的に体の健康状態を点検するもので、「健康診断」や、行政用語の「健康診査」を略したものである。様々な検査結果から、将来の本格的な病気、寿命短縮に繋がる恐れのあるリスク因子を発見するのが目的である。食生活や運動、睡眠、喫煙、血圧値などのリスク因子を発見して、是正する指導と、各種診療ガイドラインに基づいた薬物療法を医師は勧めている。

 そうすることで長生きが達成されれば、素晴らしいことといえよう。薬のチェックTIP誌では、本年の年間テーマとして、診療ガイドラインについてレビューを行っている。

 リスク因子に対する生活指導や薬物療法の具体的な指導指針を、高血圧ガイドライン、コレステロールガイドラインなど、個々の疾患ガイドラインが提供しているが、これら診療ガイドラインが適切ならば、総合健診によって、本人が気づかなかったリスク因子が発見され、より健康になり寿命が延長するはずである。

 そこで、薬のチェックTIP76号(2018年3月)では、診療ガイドライン批判の手始めとして、総合健診が寿命延長に繋がっているかどうか検討した1)。その概略を紹介する。

65歳未満には健診は無効

 コクランのシステマティックレビュー2)では、65歳未満の成人を対象に寿命延長を検討している。平均9年間追跡して、死亡者数は1000人中、対照群75人に対して、健診群74人とまったく差がなかった。様々な要因で詳しく分析しても、差はまったくなかった。心疾患死亡率やがん死亡率もまったく差が認められなかった。

65歳以上では寿命が短縮

 薬のチェックTIPでは、コクランのシステマティックレビューで検討対象外としていた65歳以上を対象として総合健診をして2〜3年後の総死亡に対する影響を調べた研究8件(12集団)について、メタ解析を実施した。

 その結果、65歳以上全体(75歳以上も含めて)でみると、健診群は対照群に比べて総死亡が30%増し(併合オッズ比1.30:95% CI:1.00-1.69、P=0.053、I2=65.2%)であった。75歳以上に限ると、総死亡が62%増しであった(併合オッズ比1.62:95%CI=1.25-2.10、 P = 0.0002、I2=0%)。

壮年男性の健診後指導と治療でも総死亡増加

 壮年男性(38〜54歳)を健診後に公平に二つの群に分け、一方に積極的な指導・治療を5年間実施し、対照群には、著しく危険な人に受診を勧める以外は特別な指導や介入をせず、合計18年間追跡調査したフィンランドの研究がある3)。その結果は、積極的な指導や治療を行った方が、18年後の総死亡が54%増えていた。健診後の積極的な指導・治療の方法に問題があったことが示唆される結果である。現在の、各種診療ガイドラインのリスク因子への介入方法も、このフィンランドの研究の方法と、基本的に違いはない。

結論

 総合健診は、無効なだけでなく、特に65歳以上の高齢者には間違った介入により寿命を短縮する。


参考文献
1) 総合健診は有効か、薬のチェックTIP、2018: 18(76): 28-31 
2) Krogsbøll LT et al Cochrane Reviews 2012, Issue 10.CD009009
3) Strandberg TE et al. Br Heart J, 1995; 74: 449-54.

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