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保団連が診療報酬・介護報酬改定で要望

保団連が診療報酬・介護報酬改定で要望
「診療報酬の引き上げ」と負担

2018年度の診療報酬・介護報酬改定に向けた議論が本格化する中、医師・歯科医師約10万5600人の会員を擁する全国保険医団体連合会(保団連、住江憲勇会長)は9月21日、マスコミ懇談会を開き、同改定に向けた保団連の要望を説明した。

 第一の要望は、技術料を中心にした診療報酬の10%以上の引き上げと、患者負担の大幅軽減だ。厚労省が15年に発表した「医療経済実態調査」では、一般診療所全体の損益差額は減少、一般病院も赤字傾向が続く状況が伺え、中央社会保険医療協議会でも「人件費を抑え、何とか経営している。大企業と同じように賃上げすると、4700億円の医療費ベースの引き上げが必要」と指摘している。

 医科の初診料は20年以上実質的に据え置かれ、再診料に至っては引き下げられている。歯科の初・再診料は若干上がったように見えるが、基本診療料は医科と比べ低く抑えられている。今回、保団連は初・再診料点数の大幅な引き上げを求める。

 保団連によれば、社会保障費の自然増の抑制額は13年度から17年度までの累計で1兆4600億円に上る。この他、自然増に含まれないカット分が約2兆円。総額では5年間で約3兆5000億円の社会保障費が削減されることになる。

 02年から08年にかけての4回にわたる累計8%以上の連続マイナス改定で“医療崩壊”と呼ばれる事態が進行。10年、12年の改定で一応の手当てはされたが、安倍晋三政権発足後の14年、16年改定は再びマイナス改定。累積では10%超も引き下げられた。

 保団連が16年に発表した「2015受診実態調査」では、約4割の医療機関で患者の経済的理由による治療中断が起きている。また、約5割の医療現場で未収金が発生。うち全額回収出来たのは3割以下。医療機関が置かれている状況は悪化の一途を辿っているという。

 保団連は来年度の診療報酬改定で技術料を中心に10%以上の引き上げを求めると同時に、患者の窓口負担引き下げも求めている。さらに、消費増税にも反対している。

「医療費膨張」の要因は薬剤費にある

 診療報酬引き上げと窓口負担軽減という二兎を追う施策には、大規模な増収が不可欠だ。保団連は消費増税を中止しても、国庫負担と大企業・高額所得者の社会的負担増で財源を確保することは可能だという。また、一定以上の所得者の保険料は応能負担を徹底、薬価の引き下げ分は診療報酬本体に充当、薬価を諸外国並みに引き下げることを挙げる。さらに、定額窓口負担を上乗せしないこと、湿布薬や漢方薬などを保険から外さないこと、70歳以上の患者負担限度額(高額療養費)を引き上げないことなどを挙げ、患者負担増計画の中止を求めた。

 保団連は医療費膨張の大きな要因の一つは薬剤費にあると指摘する。2年ごとの薬価改定や後発品使用誘導策にもかかわらず、日本の医療費総額に占める薬剤費の割合は01年以降一貫して3割前後と国際的に突出した水準にある。特に、金額シェアの6割弱を新薬が占め、新薬の薬価が薬剤費を膨張させている。実際、国民医療費の概況(15年度)でも、新規のC型肝炎治療費の使用急増を背景とした薬剤料増加が医療費を押し上げたと指摘されている。

「遠隔診療」推進の問題点

 医師不足・偏在問題を解決する一つの策として、ICT(情報通信技術)の活用による遠隔診療が注目されている。政府の成長戦略の司令塔「未来投資会議」で、議長の安倍首相が遠隔医療を促進する意向を示し、次期診療報酬改定で評価すると表明している。ICTは数少ない成長産業であり、その発展を医療の現場でも後押しさせようとの思惑が見え隠れする。

 しかし、保団連の会員の間では「医療の質が落ちる」「対面診療という医療の原則が崩れる」などの懸念の声が上がっているという。

 長崎県保険医協会の本田孝也会長は「離島の多い長崎では30年前から遠隔診療に取り組んできたが、広がっていない」と話す。その理由は、現場の医師に「見落としが心配」「医療の質が落ちる」などの不安があるからだという。また、長崎で医師に遠隔診療についてアンケートを行ったところ、「普及してもよいが、一定の規制は必要」「離島・僻地など対象を限定すべき」との意見が多数を占めた。

 保団連は、ICTやAI(人工知能)の活用により、医療現場における新しい可能性を否定していない。しかし現段階では、あくまでも「対面診療の補完的役割」として位置付けるべきとの考えだ。そして、医療の質と安全性を確保するためには、十分なエビデンスの確保と議論をした上で導入するべきとし、次期診療報酬で拙速な評価を行うことに反対している。

 また保団連は、「長期にわたり効果が明らかでないリハビリが行われていること」を理由に、医療保険による維持期リハビリテーションが来年3月で打ち切られ、介護保険に移行することに対し、「リハビリは治療手段であり、医療保険で継続すべき」「医療保険と介護保険は制度が違い過ぎ、スムーズに移行出来ない」「受け皿となる通所・訪問リハ事業所が少なく、リハビリ難民が出てくる」などの懸念を示した。

 この他の主な要望は以下の通り。

【医科】
●1人の患者を専門の異なる複数の医師で管理する場合、双方で在宅患者訪問診療料の算定を認めること。
●介護保険への移行を促す項目は廃止し、必要なリハビリテーションは医療保険により、主治医の判断で、日数の制限なく継続可能な制度とすること。
●全ての入院基本料を大幅に引き上げること。
●同一建物居住者に対する医師・歯科医師による居宅療養管理指導を1回につき503単位とし、同一建物であるか否かによる点数格差をなくすこと。

【歯科】
●地域格差などにより、医療技術に関係のない要件によって届け出の出来ない施設基準については、届け出要件を抜本的に見直すこと。
●かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)の施設基準の内容を見直すこと。
●歯科衛生士、歯科技工士の評価を見直すこと。
●混合診療の拡大は行わず、新規技術の保険導入に当たっても評価基準を明確にし、不採算とならない点数で導入すること。

【薬価】
新薬を中心とした高薬価構造を是正すること。
●新薬創出加算を即時廃止すること。
効能追加時点で全て再算定の対象にし、外国平均価格調整は参照する価格を補正すること。
●中間年改定は実施不要。費用対効果評価の2018年4月よりの制度化は延期すること。

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