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未来の会

日立会長の経団連トップ就任で強化される「政業癒着」

日立会長の経団連トップ就任で強化される「政業癒着」
「儲けさせろ。リスクが生じたら、税金で救済しろ」の図

5月31日に開かれる経団連定時総会では、次期会長に、日立製作所会長の中西宏明が選出される。既に巷では「久々の本格政権」だの「本命中の本命候補」、あるいは「もの申す経団連再登場」だのと、「期待」が集まっているようだが、どう考えても今回の人事によって、日本的な特定企業が優遇されるクローニー・キャピタリズム(縁故資本主義)がさらに跳梁跋扈するという予測が↘避け難い。

 今から20年以上前のアジア通貨危機の最中に散々指摘されたクローニー・キャピタリズムが、現在も形を変えてこの国で全盛であるのは疑いないだろう。

 中西本人はIT(情報技術)やAI(人工知能)に詳しいようだが、そうした「時代の先端」めいた光景よりも、これからより露骨に出現するのは、カビ臭いコネ優先の「政業癒着」という名のクローニー・キャピタリズムなのだ。

 そもそも日立は、2011年3月に事故を起こした東京電力福島第1原子力発電所に、子会社の日立GEニュークリア・エナジーと共に1号機と4号機の主要設備を納入している。いくら原子力損害賠償法で原子炉メーカーは製造物責任法の適用外になっているとはいえ、トップが財界活動に興じる資格などあるのか。この史上最大規模の原発事故は、依然復旧のメドが立たない絶望的状態にあるにもかかわらずだ。

福島事故よそに原発事業に急傾斜

 原子炉内の溶け落ちた核燃デブリ(原子炉が異常過熱した結果、溶融した核燃料や原子炉構造物、制御棒などが冷えて固まったもの)を取り出す方法も、さらには仮に取り出せたとしても、その後の処理方法は↖皆目見当がつかないまま。

 しかも、事故現場からの放射能汚染水を遮水する技術すら存在しない。建屋4棟を囲むようにして地下水が流入しないよう14年6月に着工された凍土壁も、未だに限られた機能しか発揮していない。第一、事故原因すら確定しているとは言い難い。

 だが、そんな惨状をよそに、中西と日立の原発傾斜は際立っている。東芝が米原子力事業子会社のウエスチングハウス(WH)の米連邦破産法申請で破綻寸前まで追い詰められ、三菱重工が世界最大の原発関連会社と呼ばれながら2カ所の新型原子炉建設に難航して事実上破綻した仏アレバへの700億円超の出資を迫られ、苦境に立たされているのとは対照的に、「国策」に便乗して、国内では新規建設の需要がない原発の輸出を目前にしているのだ。

 そのスキームがすごい。日立の英国子会社ホライズン・ニュークリア・パワーが、ウェールズの島に原発を建設するプロジェクトに、日立製の出力130万㌔㍗級改良型沸騰水型軽水炉を2基設置するという計画。総事業費約3兆900億円のうち、ホライズンの出資金は4500億円。そのうち、3分の1の1500億円を日本政策投資銀行や東京電力ホールディングスなどの電力大手が負担する。

 加えて、日英双方からの事業融資2兆2000億円のうち、1兆1000億円を、国際協力銀行やメガバンク3行など日本勢が供与する予定とか。しかも、異例にもメガバンクの総額4500億円にも達する融資については、日本貿易保険を通じて政府が全額保証するという。まさに至れり尽くせりだが、中西自身はこの英国への原発輸出について2月13日の時期経団連会長の「お披露目」記者会見で、次のように弁じている。

 「ホライズンのプロジェクトの前提条件はインベスタブル、投資可能なプロジェクトにするということが英国政府と日立の共通の認識で、投資を決めたものだ。投資を決めてから、アレバ、ウエスチングハウスの破綻のように、新しい大きな炉の建設にコストが予見できないリスクが生じた。……従ってインベスタブルだよねって説明することが、正直申し上げて難しくなった」——。

 要するに、もはや原発業者がバタバタ倒れたり苦境に陥ったりして、外国での原発新規建設など「インベスタブル」になり得ないから、「国策」でリスクを被らないよう保証してくれ、ということだろう。こうなるともはや、ビジネスとは呼べまい。通常ならよほどの「公共性」がないとあり得ないようなスキームだが、今どき一企業の原発輸出のどこに「公共性」があるのか。

 しかも中西は16年12月19日、自身が民間委員に任命された成長戦略を検討する政府の諮問機関「未来投資会議」の会合で、英国への原発輸出を念頭に「日本政府からもご支援いただいていて、大変有り難いのですけれど、最後はインベスタブルというか、民間が投資できる形にしていくことがゴールだ」などとちゃっかり発言している。

政府に泣き付く悪癖が体質化

 これでは、政府の政策に影響を与える公的な場所で提言し、その結果、好都合な政策が実現して「受益者」の立場に変じた後も、念を押すように「自分達に儲けさせろ。そしてリスクが生じたら、国民の税金を投じても自分達を救済しろ」と放言している図式ではないのか。

 以前から経団連に限らず財界は、平気で「国民の痛みを伴う思い切った改革」(榊原定征・現経団連会長)などと口にする一方で、自身にはなるべく「痛み」が来ないよう政府に頼り、時には泣きつく悪癖が体質化している。しかもキヤノンの御手洗冨士夫が会長時代に、経団連は何やら国士ぶって「改憲」まで提言していた。

 後は叙勲が最大関心事でしかない経営者として「上がり」の老人達の政治ごっこなら笑って済まされるが、クローニー・キャピタリズムがはびこれば、社会が堕落し、経済は非合理性を色濃くしていく。

 日立のこんな無理筋がまかり通るのは、どうひいき目に見ても政治権力との距離の近さの賜物ではないのだろうか。

 周知のように、中西は首相の安倍晋三を囲む最も古い財界人の集まりである「四季の会」の一員。また、三菱系経営者が多い同じく囲む会の「さくら会」にも名を連ねている。安倍の打ち出した原発や鉄道をはじめとする「インフラシステム輸出」を「成長戦略」の中に盛り込む路線に、日立の事業が重なるのは偶然であるまい。

 経済界では安倍と最も昵懇で、「四季の会」を立ち上げたJR東海名誉会長の葛西敬之に至っては、東海道新幹線の乗客数減が避けられなくなっているこの時勢に、同社元社長が「絶対にペイしない」と断言し、本来は自己資金で建設するはずのリニア事業に対して、3兆円もの税金を安倍の一言で投入させる猛者ぶりを発揮している。

 何のことはない。国会での偽証の「論功行賞」で国税庁長官に栄転しながら、あちこち隠れ回った末、辞任した佐川宣寿以上に、「逃亡生活」が長い「加計学園疑惑」の主役にして安倍の親友の加計孝太郎同様、皆「お友達」故のクローニー・キャピタリズムの受益者ではないのか。「ペイ」するどころか、下手をすると東芝の二の舞になりかねない原発輸出事業に鼻息を荒くしている中西も、例外ではあるまい。 (敬称略)

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