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骨太の方針で社会保障費「国民負担増」に踏み込むか

骨太の方針で社会保障費「国民負担増」に踏み込むか
秋の総裁選、来夏の参院選、財政健全化にらんだ調整へ

厚生労働省で今年最大の関心事は、6月にも策定される「骨太方針」の中身だ。今後進展する高齢化に伴う社会保障費の自然増に対する新たな抑制目標や新たな改革工程表が盛り込まれる見通しで、抑制幅によっては国民の負担増に踏み込まざるを得ない状況になるからだ。

 財務省は厳しい抑制目標を求める方針で、財務、厚労両省はもちろん、官邸や与党を巻き込んだ調整にな↘りそうだ。

 多くの厚労省幹部は今年の課題について、「何と言っても骨太方針がどうなるかだ」と口をそろえて話す。こう話すには苦い思いがあるからだ。

 政府は2015年6月に、16〜18年度の自然増を計1兆5000億円、各年度で5000億円以内に抑える目標を「目安」として閣議決定した。財務省主導で進められた計画に、厚労省や与党厚労族は口を挟む余地はほとんどなく、厚労省はあくまで「目安」で「キャップ」ではないとの説明に追われた。

 しかし、自然増は16年度で6700億円、17年度で6400億円、18年度は6300億円と見積もられ、「目安」だったにもかかわらず、それぞれ1300億〜1700億円を削減し、目標を達成した。

 16、18年度は医療サービスの値段を決める診療報酬改定で大幅に削減した。医療費には10兆円規模の国費が使われており、削減の余地が大きいためだ。

 一方、17年度は高額療養費の自己負担上限額の見直しや介護保険料の総報酬割導入など、医療や介護分野の制度改正で削った。

 政府は、新たな抑制目標について経済財政諮問会議を舞台に議論を展開する方針だ。焦点は、目標の水準や改革工程表に盛り込まれる中身である。

 自然増を仮に「4800億円以内」とした場合、過去3年より200億円多く削らなければならない。負担増などを求める改革工程表が並んだり、新たな制度の見直しを迫られたりするなど、国民の痛みを伴う可能性がある。

 財務省は先送りされた基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化を27年度と見込んでいる。昨年7月時点で25年度に黒字化するとみていたが、消費増税の増収分の一部を教育無償化などに充てたため、先送りを余儀なくされた。このため、財務省は社会保障費の歳出削減に切り込んで27年度から前倒ししたい意向だ。

 短期での歳出削減により、中長期の社会保障制度の将来像を描けない厚労省は「様々な改革で自然増の伸びは徐々に抑えられてきている」と反論し、抑制幅を設定されたとしても5000億円程度に止めたい考えだ。前回の教訓を踏まえ、自民党厚労族に早期に働き掛ける方針である。

 秋には自民党の総裁選、来年夏には参院選を控えており、与党からの歳出圧力が厚労族以外からも強まることが予想される。

 既に自民党厚労族は「目安といいながら事実上のキャップだった。抑制目標を設けること自体に反対だ」との反発の動きもみられる。

 ある政府関係者は「前回のように3年1・5兆円の抑制目標ではなく、もっと中長期的なものになる可能性がある」との意見も出ている。夏にかけて政府・与党内での攻防が強まることは必至だ。

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