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第53回 「日本売り」に邁進する長谷川・ウェバー双頭体制

第53回  「日本売り」に邁進する長谷川・ウェバー双頭体制
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
日本売」に邁進する長谷・ウェバー双頭体制

 遅過ぎる玉座からの転落だった。10月6日、武田薬品工業がアステラス製薬に株式の時価総額で「業界首位」の座を奪われたのだ。武田の首位自体は「繰り上げ当選」にすぎず、企業としての理念や実力、文化において何ら誇るべきものはない。本誌はこうした見方をたびたび開陳してきた。このたびの逆転劇は当然の出来事。驚くべきことは何一つないといって構わないだろう。

 10月30日に開かれた2014年度中間期(4〜9月)の決算説明会。6月に社長のいすを長谷川閑史から禅譲されたクリストフ・ウェバーの表情は硬かった。武田の株式時価総額は07年には7兆円を超えていた。2位のアステラスの2倍超。それが現在は約半分で推移している。社長就任早々、逆転について説明する羽目に陥ったのだ。空元気でも出してみろという方が無理な相談だろう。

 アステラスの時価総額は11年に底を打っている。両社の明暗を分けたのは、本誌が再三指摘してきた「2010年問題」への対応力だ。

 胃潰瘍治療薬「タケプロン」と高血圧症治療薬「ブロプレス」、糖尿病治療薬「アクトス」の三つで全盛期を謳歌した時代は08年を頂点に終わりを告げる。この年と比較すると、3商品だけで6000億円もの売上が消えてなくなった。

 次代を支えるべきパイプラインは枯渇。窮余の策として武田はなりふり構わぬ大型企業買収に打って出る。08年には米国のバイオベンチャー「ミレニアム」を約9000億円で配下に引き入れた。11年にはスイスの「ナイコメッド」を約1兆円で陣営に加えている。

 これらのM&Aによって武田は売上高こそ上向きのカーブを保つことに成功した。だが、収益構造の地滑り的崩壊はいかんともし難い。13年度の営業利益は1393億円。ブロックバスターで荒稼ぎしていた08年度と比較すると、実に3分の1にまで落ち込んでいる。悠揚ならざる事態だ。

 では、武田を追い落としたアステラスはどうか。前立腺肥大症治療薬「ハルナール」が米国で09年に特許切れを迎えた。約1200億円の売上はほぼ半減。だが、武田と違い、有望な新薬が登場。目減りした数字を補填した。12年の米国発売を皮切りに26カ国で販売中の前立腺がん治療薬「イクスタンジ」や11年以降に各国で発売した過活動治療薬「ベタニス」がそれに当たる。

 もっとも、そのアステラスにしても、4年後には主力商品の特許切れが相次ぐ。製薬企業の宿命として、洋の東西を問わず、常に有力な新薬候補を確保しておかなければならない。

円安でも外資ファンドは食指を動かさず
 さて、武田が苦汁をなめた決算説明会。国策である「アベノミクス」による異次元金融緩和がもたらした円安効果で海外売上が増大。国内は薬価改定とジェネリック医薬品使用促進の「逆風」が吹き、長期収載品の売り上げが落ち込んでいるものの、ひとまず、14年度上半期は増収増益だった。

 武田の医療用医薬品売上高は前年同期比2・9%増の7701億円。高血圧症治療剤「カンデサルタン」や胃潰瘍治療剤「ランソプラゾール」、抗がん剤「リュープロレリン」が売り上げを減らす一方、抗がん剤「ベルケイド」や痛風治療剤「コルクリス」など新薬群が好調。海外売上は8・9%増となった。国内に目を転じると、「三強」のブロプレス、リュープリン、タケプロンが2桁減。3・6%減の2794億円である。海外売上比率は63%で約2ポイント上昇。

 長谷川の見苦し過ぎる安倍晋三政権へのすり寄りを振り返るまでもなく、武田は円安政策の恩恵でかろうじて一息ついている状態にある。だが、その円安も決して万能薬ではない。グローバル化した製薬業界にあってはもろ刃の剣ともいえる。

 円安とは他国通貨に対して円の価値が低下することに他ならない。10月17日に内閣府が発表した14年7〜9月期の国民所得統計1次速報。実質国内総生産(GDP)は前期比マイナス0・4%、年率換算マイナス1・6%となり、4〜6月期に続きマイナス成長を記録した。市場予想と比べると、民間消費、設備投資、民間在庫が弱い内容。これを受け、株安・債券高・円安が進んだ。

 武田は現在、コンプライアンス上の問題で日米両国において批判の矢面に立っている。株価の低落に加え、円安効果もあり、武田は東日本大震災当時よりも「買いごろ」になっている。それでも外資系ファンドなどが食指を伸ばさないのは、前述のような体質で「うまみ」がないためだ。ウェバーとしては「痛しかゆし」といったところか。

長谷川の対米追随姿勢表す「富士山会合」
 武田の会長を務める長谷川閑史は「CASE‐J」事件後も依然として経済同友会代表幹事の座にとどまり続けている。その同友会は今年2月、日本経団連、日本商工会議所と共にTPP早期妥結を求める文書を首相に提出している。

 長谷川の「米国かぶれ」は今に始まったことではない。だが、このところの対米追随ぶりはさらに拍車がかかってきている。先述の文書もその証左の一つだ。さらには、11月1日、2日の両日、神奈川県箱根町で開かれたある会合への関与をめぐっても、さまざまな憶測が飛んでいる。

 その会合は「富士山会合」と呼ばれている。日本経済研究センターと日本国際問題研究所が共催する会員制の新事業「日米知的交流・共同研究プログラム」の第1回年次大会だ。このプログラムは米戦略国際問題研究所(CSIS)など外部のシンクタンクとも協力。日本の考え方を対外発信する広報外交に取り組むとされる。武田も会員だ。10月31日にホテルオークラで行われた発足記念レセプションには安倍も出席、あいさつしている。

 会合では国際関係や安全保障について日米の政府関係者、経営者、専門家らが対話した。米国側の出席者は元国務副長官リチャード・アーミテージや国務省経済局筆頭副長官補カート・トン、ハーバード大学特別功労教授ジョセフ・ナイら。ワシントンで「ジャパンハンドラーズ」と呼ばれる利権集団を形成する人脈に通じる。外交政策において欧米で主流を成す「リアリスト派」とは一線を画し、元国務長官ヒラリー・クリントンや共和党上院議員ジョン・マケイン、同上院議員マルコ・ルビオらの「ネオコン派」に肩入れしている。

 長谷川や武田がどこの国のハゲタカに身売りしようが、どうでもいい。だが、「日本売り」そのものに加担するのなら、話は別だ。

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