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第52回 ユーグレナとの提携でも出口見えぬ「製薬の雄」

第52回 ユーグレナとの提携でも出口見えぬ「製薬の雄」
虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
ユーグレナとの提携でも出口見えぬ「製薬の雄

 なりふり構わぬ「武田イズム」がまたも発揮されたようだ。武田薬品工業(社長:クリストフ・ウェバー)は10月16日、ミドリムシを使った食品やジェット燃料の開発で知られるバイオベンチャーのユーグレナ(出雲充社長)と包括提携契約を結んだ。今後は豊富な栄養素を持つ藻の一種「ミドリムシ」を配合したトクホ(特定保健用食品)や栄養機能食品などのヘルスケア食品、一般用医薬品などの共同開発に当たっていく。

 包括提携契約の第1弾はすでに会見当日から動きだした。ミドリムシに大麦若葉、アシタバ、ケールを配合した健康補助食品「緑の習慣」を通販限定で発売するというものだ。武田による健康補助食品の本格展開は初である。当面はタケダ通販ショップのみでの取り扱いで、初年度売上高1億3500万円、3年後には5億円を目指す。第2弾、第3弾の商品開発もすでに路線に乗っている。

 社名でもある「ユーグレナ」は微細な藻類・ミドリムシの別名だ。ミドリムシは虫ではない。昆布やワカメと同じ藻の仲間。変形しながら自力で移動もできる動物の側面も持つ100分の1㍉ほどの微生物だ。必須アミノ酸やビタミン類など多くの栄養素を含み、植物のような硬い細胞壁がないため消化吸収率も高い。ビタミンやミネラルなど59種の栄養素を含み、健康食品やバイオ燃料などへの活用が期待されてきた。ユーグレナはミドリムシを屋外で大量に培養する技術を2005年に世界で初めて確立。これを用いた多くの事業展開で注目されているベンチャーだ。

 今後の製品開発の焦点となるのがミドリムシだけが持つ成分「パラミロン」。表面にミクロの穴がたくさんあり、油分などを吸着し、体外に排出する働きを持つといわれている。協力して早期の製品化を目指すものとみられる。

 武田が注目したパラミロンは多糖類だが、ヒトが消化できない物質。コレステロールやがん細胞を吸着するという説もあり、医薬品としての将来性に期待が持てるという。

 ミドリムシは化粧品やバイオジェット燃料、バイオディーゼル燃料など多方面で活用できることが分かっている。ユーグレナはJXグループやいすゞなど多くの企業と共同開発を行ってきた。

 青汁ならぬ「緑汁」(直販)やクッキー、ヨーグルトなど食品を多く扱う。提携企業はあまたあるが、医薬品メーカーとの提携は今回が初。

武田側が懇願した「包括提携契約」
 今回の提携で懸念される点が二つある。まず、一つ目は「包括提携契約を持ち掛けたのは武田側だった」という事実だ。武田からユーグレナに連絡を取り、13年春ごろから両社でのコラボレーションの検討が正式に始まった。

 ユーグレナはミドリムシに関する基礎研究から多くの可能性を発見してきた。だが、全ての開発を自力で行うことは不可能。ユーグレナにとってもこの申し出は歓迎すべきものだった。

 記者発表に出席した両社幹部の発言もこうした舞台裏の思惑を裏付けるものとなっている。

 「製品開発の速度を上げるのは単独では無理。武田に食らいつき、一日も早く良い製品をお客様に届けたい」「1社では大きなことはできないが、武田と一緒に(研究開発に)取り組んでいく」(出雲氏)

 「アリナミンなどと並ぶ大きなブランドに育てたい」「高い可能性を持つ素材だ。顧客のニーズを捉えた上で研究開発を進める」(武田薬品の杉本雅史ヘルスケアカンパニープレジデント)

 二つ目は「武田はベンチャーの目利きが本当にできるのか」という点。主力製品の特許切れに苦しむ武田は企業の合併や買収(M&A)に活路を見いだしてきた。だが、本誌既報の通り、結果として武田の研究開発部門は外資出身者に牛耳られてしまう。生え抜きの優秀な社員のうち、前社長(現会長)の長谷川閑史と衝突し、外に飛び出した者も決して少ないとはいえない数に達する。

 医薬品を1品目開発するのに必要な研究開発費は数百億円。武田の研究開発費も売上総利益の約3割を占めている。国内の他産業と比べても、これは飛び抜けた水準だ。製薬企業は「研究開発型」企業の典型の一つといわれるのもうなずける。

 そんな企業が新薬の可能性を次々に「外」に求めていく。しかも、M&Aの成果が目に見えて上がっているわけではない。今回もベンチャーに「三顧の礼」をもって包括提携契約を持ち掛けた格好。だが、今の武田に技術力を適切に評価できる人材がどこまで残っているのか。疑問である。

万年「活動停止」の製薬協副会長職
 武田をめぐっては9月にも看過できない事件が起こっている。当事者性を疑う事態だ。

 日本製薬工業協会(会長:多田正世〔大日本住友製薬社長〕。製薬協)は9月18日の理事会で武田の製薬協副会長としての活動停止を半年間延長することを了承した。不適切なプロモーションが指摘されたARB・ブロプレスの臨床研究「CASE‐J」をめぐる問題を受けた処分である。

 武田は今年4月3日からすでに副会長職としての活動を半年間停止されている。期限が満了する10月2日から暫定的にさらに6カ月間延長されることになった。今回の処分を受け、武田の副会長としての活動停止処分期間は通算1年間に上る。

 武田は13年にも副会長職としての活動停止処分を受けている。医療用注射剤「アリナミンF5」の自主回収に関わる薬事法違反に関して製薬協が下したものだ。期間は3月21日から半年間。アリナミンの製造委託先である日本製薬も会員資格を停止する処分を製薬協から受けている。それぞれの処分を受けた武田の談話。コピペ以下だ。

 「今回の製薬協の決定を真摯に受け、今後このようなことが発生しないよう、日本製薬に対し再発防止対策を徹底するとともに、日本製薬以外の委託先についても、よりいっそうの指導・管理を徹底していく」(13年3月25日付)

 「今回の決定を真摯に受け止めるとともに、患者および医療関係者をはじめとするステークホルダーに多大なご心配をおかけしていることを深くお詫び申し上げる」(14年9月21日付)

 「副会長職としての活動停止」なる処分にも首をかしげざるを得ない。ノバルティスファーマは臨床研究事件で会員資格停止の処分を受けている。両者の間にどんな差があるのか。

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