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第45回 長谷川の「失言」で薬事法違反の時効が吹っ飛ぶ

第45回 長谷川の「失言」で薬事法違反の時効が吹っ飛ぶ

虚妄の巨城 武田薬品工業の品行
長谷川の「失言」で薬事法違反の時効が吹っ飛ぶ

 本誌が昨年12月号と今年1月号でいち早く報じた武田薬品工業(社長・長谷川閑史)の「CASE‐J」事件。その後、他誌やテレビメディアも後追いし、世情を大いに騒がせる事態となった。

 3月3日、1通のリリースが武田側からメディアに放たれた。当初予定されていた長谷川の「メディア懇談会」を急遽中止。代わってCASE‐J事件について記者会見を開くという内容だ。

長谷川の会見に評価すべき点見当たらず
 同日午後6時から東京・八重洲で行われた会見。長谷川は「CASE‐Jは弊社によるデータ改ざんといった関与はなく、公正に行われた臨床研究」と言い切った。「その研究成果を使用するに当たり、プロモーション活動の一部に不適切な点があったことについて深く反省し、おわびする」と謝罪。今後は外部委員を交えた第三者委員会を設置し、原因究明と再発防止に努めるという。

 「長谷川が自ら矢面に立とうとした点は評価できます。ただ、これは企業経営者なら誰でも知っておくべき『危機管理術』の基本中の基本を実行に移したにすぎない。肝心要の発言内容は『営利集団の長』であることを再確認させる以上に見るべき点はなかった。日本の製薬業界ナンバーワン企業を率い、財界活動にも血道を上げてきた人物として見識や哲学を披歴するような芸当を彼に期待する方が間違いです」(厚生労働省OB)

 会見の内容を詳細に検討してみると、長谷川は「火消し」の役割さえまともに演じ切れていないことが分かる。いや、火の手はさらに勢いを増しているのかもしれない。以下で見ていこう。

 「CASE‐J研究の登録基準には『最低3年』と明記されています。論文を見ると、3年が経過した時点で多くの人が脱落していったことが分かる。つまり、3年を待ってみんなやめているわけです。CASE‐Jは3年以内の経過を見る試験。ところが、武田側も参加した有名医師たちも一貫して3年以降のことにばかり言及してる。これでは本質的な意味での『誇大広告』といわれても仕方がない」(国立研究機関の常勤職員)

 武田は学会データを広告に利用した点に問題を矮小化しようと躍起になっている。いつもの「タケダイズム」全開というところだろう。だが、現実に行われていることはそんな水準を超過している。ミニマム3年であるCASE‐Jでは本来「参考の参考」でしかなく、多くが脱落している3年以降のデータを強調し、「活用」している。では、3年以内ではどうか。答えはすでに出ている。武田は「負けている」のだ。

 インターネット上にあるCASE‐Jのウェブサイトには本誌既報のそうそうたる顔ぶれがコメントを顔写真入りで寄せている。いずれも「ちょうちん」の域を一歩も出てはいない。今後の参考のために、主要な談話を引いておこう。

 〈CASE‐J試験で是非ともご紹介したい点は、カンデサルタンが特にBMIが25á`/áu以上の肥満を伴うハイリスク高血圧患者さんで素晴らしい効果を示したことです〉(京都大学大学院医学研究科内科学講座臨床病態医科学・内分泌代謝内科教授・中尾一和/CASE‐J研究責任者)

 〈まずCASE‐Jで特記すべき点は、カンデサルタン群、アムロジピン群ともに十分な血圧コントロールが得られた点です。降圧薬として両薬剤がどちらも非常に優れていることが確認できました〉(大阪大学大学院医学系研究科老年・腎臓内科学教授・荻原俊男/CASE‐J運営委員長)

 日本高血圧学会腐敗の元凶ともみられる面々の立ち居振る舞いについても触れておこう。NHKの報道で早々に馬脚を現したのは慶應義塾大学名誉教授・猿田享男だ。「私は知らなかった」。この談話を長谷川や他の研究者たちはどのような思いで聞いたのだろうか。猿田はCASE‐Jの「研究代表」を務めている人物である。

 「明白な誇大広告です。もはや科学の体を成しているとはいえない」(前出の研究機関職員)

 つまり、こういうことだ。お手盛りの臨床研究を行い、論文を書く。少しでも使えそうな部分があれば、粉飾して販売促進に生かす。製薬業界の頂点に君臨し、社長は経済同友会代表幹事を務める企業がこんなでたらめを日常的に行っている。

 「CASE‐Jは国内循環器内科の学界と製薬企業の体質を象徴的に表している事例。このまま放置していれば、誇大広告による薬事法違反で確実に引っ掛かります」(同前)

財団を介した金の流れに注目集まる
 このへんでそろそろ長谷川の「失言」に触れておかなければなるまい。薬事法違反の時効は3年である。長谷川は会見でCASE‐Jのデータを最近まで販促に使っていたことを認めた。社長自ら、である。現実に企業活動で使用している以上、時効が適用されることはない。長谷川は自身の発言によって時効の壁を取り払ってしまった。

 「明白な失言です。『使っていません』とか『分かりません』『調べてみます』と言っておけばよかったのに、『使っている』と言い切ってしまった。取り返しのつかない事態です」(同前)

 厚労省は十年一日の対応に終始している。医系技官には正確な意味での「調査能力」がない。本誌が再三指摘してきたように、情報のルートが限られている点が致命的である。

 「CASE‐Jは医療界・医学界がどうとか、製薬業界がどうとかいう議論の範疇にはない。臨床研究の本質を外れたところでデータを販促に使った。このことの是非が問われます」(同前)

 武田はCASE‐Jに参加した京都大学に25億円の「奨学寄附金」を入れている。これとは別に財団を介して10億円が京大に渡った。

 「医療関係者は誰しもうすうす感づいていたことです。『本体』より若干低めの金額は『財団』を迂回させて企業に入る。武田側としては当然、本体と財団では金を区別しているはずです。使途も違ってくるでしょう。今後はこうした金の流れにも注目する必要があります」(同前)

 長谷川の勇み足。代償は高くつきそうだ。CASE‐Jを的にかけているのはNHK。今後も「ネタ」を押さえて仕留めに来るのは間違いない。

 「武田は第三者委員会を立ち上げさせられ、国会答弁で厚労相が『この問題はやる』と答弁したことで完全に押されています」(同前)

 今後の推移を予想しておこう。武田の調査委員会は「中間発表」で恐らく日和る。大臣は激怒。ツイッターをはじめネットでの批判が高まる。既視感に満ちた光景がまたも繰り返されるのだろうか。

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