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維新、自民のOTC類似薬保険適用維持案で妥協

維新、自民のOTC類似薬保険適用維持案で妥協

公的医療保険の適用対象ながら、市販薬と似た成分を持つ「OTC類似薬」。「保険から外す」と息巻いていた日本維新の会だが、保険適用を維持した上で価格の一部を特別料金として自己負担分に上乗せするという自民党案を受け入れた。国会議員の定数削減に続いて再び維新肝煎りの改革案が腰砕けに終わった事で、同党が最重視する「現役世代の保険料の引き下げ」にも暗雲が立ち込めてきた。

 自民党の小林鷹之、維新の斎藤アレックス両政調会長は昨年12月19日、国会内で会談し、OTC類似薬の患者負担見直しについて、公的医療保険適用を維持したまま患者に追加負担として価格の25%を求める事で合意した。薬代の25%は患者が全額を負担し、残る75%分には保険が適用されて1〜3割の負担となる。両政調会長が署名した合意書には、子供や慢性疾患の患者、入院患者、所得の低い人等の負担の在り方に一定の配慮を検討する事も盛り込まれた。

 25%の上乗せ負担となる薬は約1100品目(77成分)と全体の15%程度。これによって約900億円の医療費抑制に繋がるとしている。政府は来年の通常国会に関連法案を提出する方針で、成立すれば、2026年度末頃に実施される。

 OTC類似薬はOTC医薬品(市販薬)と成分や効果は似ているが、市販薬と違って保険が適用され、医師の処方箋無しには買えない。湿布薬や保湿剤、胃腸薬等約7000品目に上る。市販薬の様な広告費が掛からず、市販薬より安い薬が多い。

 厚生労働省の試算によると、乾燥症状の皮膚に塗る「ヘパリン類似物質クリーム」なら、標準的な使用をした場合の負担はOTC類似薬で2847円(自己負担3割)。これに対し、市販薬は1万5400円とOTC類似薬の5・4倍だった。

 高齢化や医療の高度化により医療費は高騰しており、保険料負担は重くなっている。「現役世代の保険料引き下げ」を強く訴えて連立政権入りした維新は、主要な対策の1つに「OTC類似薬の保険適用除外」を唱え、保険から外す事で「1兆円の医療給付費削減に繋がる」と喧伝していた。

 保険対象から外れると、薬代は患者の全額自己負担となる。その分、保険料や税金が浮く上、処方を受ける為の診察費、薬局の調剤費等も抑えられる。この為、現役世代の負担を和らげ、日本の医療の持続性も高まるというのが維新の主張だった。

 しかし、自民党の厚労族や日本医師会は強く反発した。長期に亘ってOTC類似薬を必要とする人の負担が重くなる他、受診控えを招いたり、医師の診察を受けずに市販薬を買う事で重病を見落としたりする可能性が有る、と反論した。OTC類似薬を継続して使うアレルギー疾患やがんの患者団体等も見直しに異を唱えた。自民、維新両党の実務者による協議は1カ月以上に亘って難航し、保険から外す維新案は宙に浮く格好となっていた。

 連立パートナーとなった維新の顔を立てつつ、保険適用を続ける策は何か有るだろうか——。そう考えた厚労省が当初から温めていたのが、24年10月にスタートした、後発薬の有る先発医薬品(長期収載品)を選定療養に組み入れた制度をヒントにした案だ。長期収載品の処方を望む患者には、後発薬との価格差の25%を自己負担してもらう内容で、OTC類似薬の負担見直しにも、これを参考にした妥協案を用意し、自民党側に投げ掛けた。

 この案に乗るかどうかで維新内は割れ、実務者同士では埒が明かなくなった。打開策として両党の政調会長が乗り出す事になり、結局、維新の斎藤氏が政府に「今後の保険適用除外を見据える」との申し入れをした上で、自民の小林氏と折り合った。厚労省は保険適用を残し、一部上乗せを求める案を「落とし所」として描いていただけに、省内には安堵の空気も流れる。

 維新は連立入りする前からOTC類似薬の保険適用除外を訴え、石破茂前政権の25年度政府予算案に賛成する見返りとして協議を迫った。その結果、6月に閣議決定した政府方針「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」にはOTC類似薬について「保険給付の在り方の見直し」が盛り込まれた。厚労省幹部は「保険適用除外と一言も書いていないのがミソだった。今回は文字通り給付の在り方を見直した」と話す。

医療費抑制叶わず、維新党内に不満

合意後、斎藤氏は「今後も現役世代の負担を下げる改革を全党一丸で取り組みたい」と述べた。とは言え、当初維新はOTC類似薬の保険適用除外で1兆円の医療費削減が可能と豪語していた。それが約900億円と1割にも満たない水準に止まり、党内には不満が溢れている。「保険適用を維持する基本は守れた」と満足気な自民党厚労族を横目に、或る中堅議員は「保険適用が残る以上、処方を受ける為の通院も減らない。衆院議員の定数削減に注力し過ぎた結果、OTC類似薬の方が疎かになり、更に定数削減でも『実』を取れなかった」と嘆く。

 自維両党の社会保障制度改革案に関する合意には、長期収載品の処方を求める患者への追加負担アップ等も含まれている。だが、これ等を含めても医療費抑制効果は1880億円程度と1兆円には程遠い。

 医療費に大きな影響を与える診療報酬改定も、維新が歓迎出来る姿とは異なる結果になった。

 12月19日午後、26年度の診療報酬「本体」の改定率見直しを巡り、高市早苗首相は片山さつき財務相と上野賢一郎厚労相の協議に加わった。この日、片山氏は2%超の引き上げ迄は認めつつ、上野氏が示す3・09%のアップには難色を示していた。膠着が続く中、首相は「厚労省案で行きましょう」と告げ、3・09%増で落着した。

 医療体制の危機を踏まえ、首相は就任前から診療報酬本体をアップさせる考えは示していたものの、満額回答には自民党厚労族幹部も「厚労省側の要望が、ほぼ丸々通っちゃったよ。連日働き掛けていたとは言え、ここ迄とは」と驚いていた。

 通常、診療報酬を引き上げると保険料のアップに直結する。但し、「今回は配慮している」と厚労省幹部は明かす。近年の賃上げ傾向によって保険料率を維持したままでも保険料収入は増える事を織り込み、保険料がギリギリアップしない範囲で診療報酬の引き上げ幅を調整したという。

自民党内からも維新に「うんざり」の声

 それでも、26年度は子育て支援金の財源として、医療保険料への「上乗せ」がスタートする。初年度は6000億円。これは段階的に増え、28年度には1兆円を想定している。政府は「社会保障への切り込みで負担増は生じさせない」と言ってきたが、OTC類似薬改革の失速、診療報酬の大幅アップにより、一層実現があやふやになった感は否めない。

 患者の月の自己負担に上限を設ける高額療養費制度も中高所得層の上限は引き上げつつ、多数回該当の負担上限は維持した。その結果、石破政権時代の当初案で見込んでいた約3700億円の保険料圧縮幅は萎む見通しだ。

 介護保険では、本来なら3年に1度で27年度になる予定だった介護報酬改定を26年度に前倒しし、2・03%引き上げる方向だ。自己負担割合(原則1割)を2割とする所得層の拡大は慎重論に配慮し、25年中の決定を見送った。

 維新が掲げる社会保障改革に関し、高齢者等が多く持つ金融資産を医療の保険料や窓口負担に反映させる改革については関連法案を26年の通常国会に提出する方向だ。が、準備に時間を要し、実現は数年先となる見通し。「病床の11万床削減」「給付付き税額控除の導入」も道筋はハッキリしていない。

 維新内に自民党への不信感が広がる一方で、閣内に入らず、連立離脱をチラつかせる維新に対しては自民党内からも「もううんざり」(中堅幹部)との不満が膨らんでいる。「年収の壁」の見直し合意で国民民主党が政権に接近する中、高支持率を背景に高市首相は衆院解散に踏み込んだ。自維両党が約束した社会保障制度改革の先行きは連立政権の行方と共に一層不透明感を増している。

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