.jpg)
ArtとSmartで温かく心地良い医療を目指す
264 大阪医科薬科大学病院(大阪府高槻市)
大阪で100年近い歴史を持つ大阪医科大学と、同じく120年近い歴史を持つ大阪薬科大学が統合し、2021年に大阪医科薬科大学が誕生した。それから4年。大阪医科大学創立100周記念事業として建築が進められてきた病院新本館が、25年7月にグランドオープンした。大学病院の建て替えプロジェクトが全て完了するのは31年の予定だが、診療系の施設と設備は、これで全て整った事になる。
病院新本館の建設に当たっては「Super Smart Hospital」をコンセプトに掲げ、「超スマート医療の実践」と「心地良い空間の提供」を目指した。19年末から拡大した新型コロナウイルス感染症の流行で、医療従事者と患者・家族・学生の関係は希薄化し、物理的・心理的距離も広がったが、従来から進めてきた「温かい病院」作りの重要性は一層明確になった。
今や病院にとっても欠かせないICTの活用やDXだが、技術面では外来患者向けに富士通ゼネラルの外来向けシステム「HospisionⓇ 」を導入した。スマートフォンアプリ「コンシェルジュ」と連携しており、患者は自分の手元で予約内容や診察の順番等を確認出来る為、受診時の待ち時間のストレス軽減が期待される。入院患者向けにはUHF帯RFIDリストバンドを採用。非接触で布団の上からでも患者の情報を読み取れる為、看護師は就寝中の患者を起こさずに3点認証が出来る様になった。採血もICチップで管理が行える。
運営面では、入院に関する手続きが1カ所で済ませられる「患者サポートエリア」を設け、臓器や疾患別に受付を纏める「ユニット外来」も開始した。これらは効率化によって医療の質をより高めるだけでなく、生み出された時間や空間、労働力を患者に還元し、寄り添う事が狙いでもある。
院内の建築やインテリアには、自然と触れ合う事で健康や幸福を得られるという「バイオフィリア」の理念に基づき、自然の息吹を感じさせるアートを随所に取り入れた。1階総合案内では広葉樹を模した大きなシンボルツリーが訪れる人を出迎え、エスカレーターの壁面にはサクラ、ロウバイ、そして高槻市の花であるウノハナの絵が描かれ、患者を優しく見守る。待合室や病棟には植物や鳥をモチーフとした作品を設置し、安らぎを演出した。小児科病棟は「高槻の森」をテーマに、廊下やプレイルームの壁に多様な生き物を描き、全体を木漏れ日や木立、散策路を思わせるデザインとした。子供達は、辛い療養生活の中で、森を探検している様な感覚を味わう事が出来る。
又、1階には大型サイネージを設け、大原美術館(岡山県倉敷市)所蔵の美術作品を映し出している。画面にはギリシア彫刻を模したアバターが現れ、絵画について説明する。「対話型鑑賞デジタルアートミュージアム」は国内の病院では初めての試みで、美術の知識が無くても名画を楽しむ事が出来る。
新型コロナウイルス感染症による未曾有のパンデミックは、多くの教訓を残した。その危機を乗り越えた経験を生かし、新たな環境で地域医療の要となる「心地良く温かい病院」の実現を目指す。
LEAVE A REPLY