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未来の会

公立病院の「指定管理者制度」に課題

公立病院の「指定管理者制度」に課題

公立病院の「指定管理者制度」に課題

全国各地の公立病院で、指定管理者制度を導入する事例が増えている。全国に約850在る公立病院の内、1割弱の約80病院に指定管理者制度が適用されている(2020年度末時点)。現在も導入の動きは広がっており、民間医療法人等の経営手法を取り入れ、効率的・合理的な運営を実現するのが狙いだ。だが、選挙の争点になったり、人件費を抑制し過ぎて医療従事者の退職が相次いだり、課題は多い。
 指定管理者制度が公共施設に適用される様になったのは、地方自治法が03年に改正された為だ。公立病院は救急や産科等を抱える為、一般的に赤字体質で、自治体が繰入金等で赤字補填してきた。民間では担いきれない医療ニーズを満たしながらも、赤字の財政を少しでも好転させるのが指定管理者制度導入の目的だ。
 公立病院からの指定管理先として多いのが、自治医科大学の義務年限を終えた医師等の受け皿となる公益社団法人「地域医療振興協会」だ。設立目的に「全国のへき地を中心とした地域保健医療の調査研究及び地域医学知識の啓蒙と普及を行うとともに、地域保健医療の確保と質の向上等住民福祉の増進を図り、もって、地域の振興に寄与する」と掲げている。
 実際に、あま市民病院(愛知県あま市)や飯塚市立病院(福岡県飯塚市)、伊東市民病院(静岡県伊東市)、市立大村市民病院(長崎県大村市)、市立奈良病院(奈良県奈良市)、三重県立志摩病院(三重県志摩市)、横須賀市立市民病院(神奈川県横須賀市)等、僻地等を中心に指定管理を請け負っている。
 吉新通康会長はホームページで「自治医大の義務年限を終え、何か自分たちでもっと日本の地域医療のために義務後引き続き何かできないかと(中略)課題に取り組みました」と明かしている。自治体関係者は「公立病院の指定管理者制度のノウハウを最も持っているのが、地域医療振興協会だろう。自治医大との関係も有り、医師の派遣も問題無い。只、指定管理を受託している公立病院の全てで経営的に成功しているとは限らない」と指摘する。

4病院の指定管理先に選ばれた「徳洲会」

 もう1つが「日本の病院王」と呼ばれた徳田虎雄氏が創設した医療法人「徳洲会」だ。日本赤十字社も複数で指定管理者に選ばれているが、民間医療法人として、生駒市立病院(奈良県生駒市)や和泉市立総合医療センター(大阪府和泉市)、榛原総合病院(静岡県牧之原市)、公立種子島病院(鹿児島県南種子町)の4病院の指定管理先となっている。
 東上震一理事長は徳洲会のホームページで「徳洲会は『いつでも、どこでも、誰でもが最善の医療を受けられる社会の実現』を目指しています」と宣言し、「組織運営の根幹は『患者さんに対する奉仕である』と考えます。地理的、経済的なハンデを抱えた患者さんのことを第一に考え、離島・へき地、地方であっても良質な医療を届けるために、徳洲会は病院をつくってきた」と謳っている事から、指定管理を請け負う経緯が垣間見える。
 これについて奈良県政関係者の1人は「生駒市立病院が制度を導入した時には地域の医療関係者から『医療従事者が引き抜きに遭う』と猛反発された経緯が有った」と明かすものの、別の関係者は「他の病院も含めて指定管理後に医療サービスの質が大きく落ちたという話は聞かず、寧ろ上手くやっている方なのではないか」と推し量る。
 地域医療振興協会や徳洲会等「大手」ではなく、地域の医療法人に委託するケースも有る。只、医療提供体制が効率化して財政が健全化した場合も有れば、その逆の事例も存在する。匿名を条件に或る自治体の職員は「新たな医師も来ず、病床稼働率も下がった。医療提供サービスの質が下がったと言わざるを得ない状況だ」と不満を漏らす。

正規職員の分限免職でトラブルも

一方で、制度の導入を巡り、法人と職員の間でトラブルになるケースも後を絶たない。例えば、愛媛県西予市では、市民病院や野村診療所、介護老人保健施設「つくし苑」に、経営悪化等を理由に指定管理者制度が導入され、地域医療振興協会が受託した。3つの施設合わせて191人の正規職員が分限免職され、30人を超す会計年度任用職員の雇用が打ち切られたという。
 引き続き地域医療振興協会の職員として雇用されたが、この内91人の職員が市の公平委員会に異議を申し立てている。元々西予市議会は市民病院等3つの施設に指定管理者制度を導入する議案を否決。しかし、次の市議会に於いて僅差で可決する等、指定管理者制度の導入経緯から波乱含みだった。
 自治労関係者は「指定管理者制度を導入する際、そのまま労働組合活動を継続されては困るという理屈からか、待遇を下げる等して労組幹部の雇用だけ継続にならない様にするケースは昔から散見された」と明かす。更に「看護師ら医療従事者は給料が低くなる場合が多く、賃上げが不十分等の理由で離職が相次ぎ、慢性的な人手不足に拍車が掛かる場合も有る」と警鐘を鳴らす。
 経営コンサルティング会社のデロイトトーマツリスクアドバイザリーが指定管理者制度に関する留意点を纏めた文書でも、「身分や待遇等の変化を嫌う職員の離職についても留意が必要」と指摘している。更に「公務員としての身分がなくなり、待遇も変化するということで既存職員への影響は大きい(中略)できる限り既存の職員には転籍してもらうことが望ましい(中略)地方公共団体がコストを負担する形で、一定期間は現給保障等待遇の維持が図られるケースがあります」と紹介している。

指定管理者自らが指定の取り消し

 経営の効率を高める為に指定管理者制度を導入した筈が、物価高騰の影響で指定管理者自らが指定の取り消しを求める事態も発生している。福島県三春町では26年3月31日付で町立三春病院の運営を担う星総合病院(同県郡山市)の申し出により指定管理を取り消す事となった。
 町と星総合病院とは27年3月末を期限とする協定を結んでいたが、患者の減少と物価高騰、人材難が重なり、星総合病院による病院運営が出来なくなった。町は後任の医療機関が見つかり次第、病院を再開したい考えの様だが、26年4月以降も継続出来るかは不透明な状況だ。
 直営から指定管理制度に移行し、「責任追及が曖昧になった」と明かす自治体職員もいる。この職員は「本来は救急や外科等の領域を手厚くしたいところだが、指定管理者の経営上の都合で、赤字になりそうな部門は後回しにされがちだ」と漏らす。
 賃上げの最中、一部の職員といえども待遇が改善しない点を問題視する声は多い。医療従事者や自治労関係者だけでなく、有識者からも同様の意見が上がっている。
 指定管理者制度が適用された公立病院の現状を取り上げた毎日新聞の記事(25年5月29日付)の中で、伊関友伸城西大教授は「医療従事者がたくさんいた頃は人件費を削って財政状況を改善すれば良かったが、今後は医療従事者が足りなくなる時代だ。人件費を抑制させると医療従事者が集まらなくなり、病院経営が困難になっていく」とのコメントを寄せている。
 物価高や診療報酬の伸び悩み等を理由に当面、公立病院の経営は厳しい状況が続くと見られる。赤字幅が拡大すれば、自治体による繰入金(赤字補塡)は増え、今後も指定管理者制度の導入を検討する自治体は増えるかも知れない。
 先ずは導入の判断が適切かどうか、又、導入に当たって、どういった指定管理者に委託するか、重要な判断は2段階で有る事を忘れてはいけない。

公立病院の指定管理者として代表的な大手2法人(ChatGPTで作成)

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