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未来の会

第22回「精神医療ダークサイド」最新事情 6年経ても不鮮明な拘束急増要因

第22回「精神医療ダークサイド」最新事情 6年経ても不鮮明な拘束急増要因
国のやる気のなさが国会で鮮明に

 「(精神科の)身体拘束が2倍に増えたというご指摘でありますが、その実態について今一度確認するとともに、その意味の分析について厚労大臣とも確認をさせていただきたい」。2022年10月20日の参議院予算委員会。れいわ新選組の天畠大輔・議員から、身体拘束の急増要因について問われた岸田文雄・首相は、そう答えた。

 極めて重大な人権侵害でありながら、軽く扱われてきたこの問題に関して、首相が自ら答弁した姿勢は評価できる。だが、筆者は6年前と変わらぬ国の姿勢に衝撃を受けた。

 16年4月、「患者拘束1万人 10年で2倍」とスクープしたのは、読売新聞在職時の筆者である。杏林大学教授の長谷川利夫さんのコメントも掲載した。以後、多くのメディアが後追いして原因究明を求める声が高まったが、国は徹底調査を先送りした。そして6年半を経てもなお、急増の要因をきちんと把握していないらしい。役人たちがそれほど無能なはずはなく、知らぬふりをしているのだろう。

 先の予算委員会の7日後、今度は参院厚生労働委員会で質疑を行った天畠議員は、首相が約束した「確認」の結果を尋ねた。加藤勝信厚労大臣はこう答えた。「精神科病院での毎年の調査日(6月30日)における身体拘束件数は、平成16(04)年から平成26(14)年の10年間で約2倍(約5千人から約1万人)に増加しており、その後はおおむね横ばいで推移をしております」。「増加の要因については、令和元(19)年度の厚生労働科学研究において実態調査を行ったところであります。その結果によりますと、精神科病院に入院する高齢の患者が増加する中で、高齢者の身体疾患への対応のために身体的拘束が増加している可能性が示唆されているところであります」。天畠議員が切り返した。「可能性が示唆されているという言いぶり。つまり明確な理由がわからないということですか」。加藤厚労大臣は「ひとつの分析の結果であって、そこにおいては、そういう可能性が示唆されたということであります」と言葉を濁した。

 高齢患者の増加で、転倒や転落の防止、点滴抜去の防止、などを目的とした拘束が増えたことは急増の一因ではあるが、全てではない。それを分かっているからこそ、国は言葉を濁すのだ。

 この6年間にも、複数の若い命が理不尽な身体拘束で奪われた。読売新聞大阪本社は19年、全国の警察本部が持つ記録を集計し、身体拘束が原因で死亡した可能性がある患者は3年間で少なくとも47人に上る、との記事を掲載した。石川県の死亡例では、身体拘束を違法とする判決が最高裁で確定した。今年9月には、国連の障害者権利委員会が日本に対して「精神科病院での死亡事例の原因や状況について徹底的、かつ独立した調査を実施する」等の勧告をした。身体拘束の異様な長期化も深刻で、筆者は拘束の指示が計2000日を超えるケース(解除は時々あってもごく短時間)を確認している。

 こうした状況にも拘らず、国は徹底調査に及び腰だ。要因にされると都合が悪い連中への忖度のみならず、あまり追及すると精神医療制度を抜本的に見直す必要が生じるので、面倒くさいのだろう。身体拘束の問題は、とても1回では書ききれない。改めて報告したい。

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