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未来の会

第135回 ゴーン逃亡とIR汚職と政局と……

第135回 ゴーン逃亡とIR汚職と政局と……

 何とも物々しい年初だ。統合型リゾート(IR)を巡る汚職事件が政局に絡み始めたと思いきや、日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が保釈中にレバノンに逃亡する前代未聞の事態が日本の司法を揺るがせている。

 イラン革命防衛隊のガセム・ソレイマニ司令官を米国が殺害した事で、米国とイランの対立が一時、抜き差しならない状態に陥るなど、世界情勢も雲行きが怪しくなってきた。

入鉄砲に厳しく、出女に甘く

 「あのクソ達磨野郎(ゴーン被告の事)、荷物に紛れてプライベートジェットだと。ふざけやがって。近代国家となって以来、こんなにコケにされた事はかつてない。国家の恥をそそがねば、東京五輪どころではない」

 おとそ気分を害された自民党幹部はとてつもなく下品に、しかも口汚く、ゴーン被告をののしった。それもそのはずだ。帰省の混雑にうんざりした複数の支援者から「空港のチェックが厳し過ぎる。どう見ても普通の人なのに、上着まで脱がされ、パソコンを持って長時間だらだらと待たされるのは心外だ」との苦情を受け、「いや、56年ぶりの東京五輪・パラリンピックを控えておるし、さすが日本は違うなと、各国からお褒めをいただけるような完璧な検査体制にしている。ここは我慢してもらいたい」と大見得を切ったばかりだった。

 「日本の空港チェックはどこか間が抜けていると気付いたよ。地方空港に至るまで、ペットボトル飲料を検査し、ライターは1人1個まで、金属製のトゥースピック(三角ようじ)は持ち込みが駄目などと、事細かにモノはチェックするが、ヒトの検査が出来ていない。テロはテロリストが起こす。不審者をきちんと点検できない現状なら、抜本的に見直す必要がある」

 幾分、私怨も交じっているのだが、自民党右派の間では、ゴーン被告の逃亡を「特異な事例」とはみなさず、改革が必要だとの認識が広がっている。

 高性能の監視カメラの増設や高度な検査機器の導入等、またぞろモノに頼るアイデアが持ち出されているが、捜査当局出身の与党議員は少し異なる見解を示す。

 「スパイ小説ばりのゴーン被告のケースは、確かに国家の恥なのだが、やはり、例外的なケースだろう。他の先進国でも時折起こっている。実は、保釈中の被告の逃亡事案は国内でも何件も起こっている。大捜査網を広げて、何日も行方を追うような事態もしばしばだ。理由はいろいろあろうが、司法・捜査当局の人材の劣化がその理由の一つだろうといわれている。監視カメラ等の機器にばかり頼り、昔の職人肌の〝デカさん〟みたいな優秀な人材がいなくなった。というより、そうした人材を育てる仕組みがなくなりつつある。これこそが、大問題だ」

  与党議員によると、現在、逃亡中の被告は20数人にも及ぶのだそうだ。体にタグを埋め込む等の怖い話は遠慮したい。優秀な捜査人員の確保・育成に期待したいところだ。

 出入国管理に詳しい自民党中堅議員は別の観点から問題を指摘する。

 「江戸時代の関所政策は入鉄砲出女(いりでっぽうとでおんな)だった。江戸への武器の持ち込みと、人質になっている大名家の妻女の江戸脱出を最も警戒していた。今回の事件で浮き彫りになったのは、入鉄砲(入国)には厳しいが、出女(出国)には甘い現在の出入国管理の在り方だろう。富裕層が使うプライベートジェットの検査体制を緩くしていた事もになった。いずれにしても、盲点を突かれた」

 検察当局は事前にゴーン被告の逃亡を予想し、裁判所に保釈しないよう強く求めていたという。「裁判所が保釈を認めたのは、海外メディア等の外圧を斟酌せざるを得ない事情があったからだ。裁判所の〝要らざる忖度〟のせいで、努力が水の泡だ」。そんな恨み節が検察関係者の間で広がっている。

IR汚職も菅バッシング?

 さて、その検察当局は昨年末、カジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡り、不正な現金を受け取った疑いがあるとして、自民党衆院議員の秋元司・容疑者(東京15区)を収賄容疑で逮捕した。贈賄の疑いが持たれているのは中国企業「500ドットコム」だ。贈賄側が外国企業である事から「ロッキード事件型」等と永田町雀は騒ぎたがるが、自民党内ではややうがった見方が関心を呼んでいる。陰謀説だ。

 「現職議員を逮捕するには賄賂額が小さ過ぎるし、秋元容疑者は二階派だよね。IRと言えば、菅義偉・官房長官と二階俊博・幹事長じゃない。安倍晋三首相も麻生太郎・副総理兼財務相も埒外ではないけど、ダメージを受けるのは、菅&二階。昨年後半からの流れを考えると、なんか不自然だよね」

 発言には伏線がある。検察のトップである検事総長人事で、安倍首相と菅官房長官が反目していたとの情報だ。菅官房長官が昨年秋の内閣改造で、自分の子飼いである河井克行・衆院議員を法相に押し込んだのは検事総長人事を有利に進める狙いだったとされる。

 しかし、河井法相は妻の公選法違反の疑いで辞任し、菅官房長官の影響力は削がれる事になった。IR汚職は、菅官房長官と二階幹事長を押さえ込み、次期総裁選を含めた今後の政局の主導権を握りたい一派の陰謀だというのだ。

 昨年秋以降、菅官房長官の周辺はスキャンダル続き。こうした憶測が広がる素地はあるのだが、IR汚職による支持率低下は、安倍政権そのものも危うくしかねない。

 「検察が一部の政治勢力に忖度して動いたら、日本は本当にやばい国になっちまうだろうが。ゴーン被告の言っているとおりの司法になっちまうじゃないか。馬鹿どもめが」

 自民党長老は党内の陰謀説を一喝した上で、続けた。

 「政局ごっこで時間を潰している場合じゃない。IRは東京五輪後の景気落ち込みも見越し、先々の経済を下支えするための政策なんだ。何としてもやり遂げる。そして、きちんと衆院選で勝つ。今、自民党が考えなければならないのは、その事だけだ」

 まさに正論なのだが、ポスト安倍を巡る党内の暗闘が容易に収まる気配はない。

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