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未来の会

社会福祉法人大磯恒道会「破産」の真相②

社会福祉法人大磯恒道会「破産」の真相②
内部調査で露呈した経営悪化3つの理由

長い歴史を誇った社会福祉法人大磯恒道会(神奈川県大磯町。以後は大磯恒道会)が2018年12月6日に破産した。歴史の長さに反するように実にあっけない破産だった。しかし、これは用意周到に仕組まれた破産劇で、この破産劇には多くの不正と闇が隠されている。この中で蠢く人々を連載でお伝えする。

 まず、大磯恒道会の負の歴史を振り返る。ここ十数年、経営は過去の理事長らの放漫経営で苦しい状況が続いていた。横浜銀行は地元のための銀行といいながら経営難に苦しむ大磯恒道会から目を背けた。地元信用金庫の支援が唯一の救いだったが、それも限界があった。

 弊社代表・尾尻が理事長に就任し、弊社はすぐに大磯恒道会の内部調査を始めた。その結果、経営悪化の理由は次の3つと理解した。だが、経営悪化が破産の要因ではない。破産した理由は詐欺的行為によるものだ。

不正経理と耐震不良は県にも責任

 経営悪化の要因の1つ目は元理事長・木沢豪(仮名)による不正経理とこれを神奈川県が長期間放置し続けた事だ。ここに16年12月24日の「調査報告書」がある。作成者は弁護士と公認会計士らからなる大磯恒道会・社外調査委員会だ。この報告書は03から12年までの10年間、不可解な経理、不適切な会計処理があり、「解任された元理事長による不正経理で1億8000万円が消えている」、そして「監督官庁の神奈川県が積極的な指導監査をした形跡がない。もし適正な監査が行われていれば早い時点で解決出来たはずだ。決算書の精査を怠った杜撰な監査が不正な会計処理が続けられた理由だ」と断じている。当時の神奈川県は老人の命を軽視していたと批判されても仕方ない。

 2つ目の要因は耐震不良問題で、これも神奈川県の責任と言える。本部のある大磯市虫窪には介護施設の東館と西館がある。東館は耐震が不十分で、今も使えない。これは「姉歯事件」と同様だ。姉歯元一級建築士による構造計算書偽造が05年に発覚した時、当時の神奈川県知事は「県内の姉歯案件は全て解決している。神奈川県には存在しない」と公表したが、事実と異なる。大磯恒道会は神奈川県も認めた耐震不良物件だったが、なぜか隠されていた。

 その証拠がここにある。10年11月2日付で発行人は当時の神奈川県知事・松沢成文による「認定できない旨の通知書」だ。この書類は大磯恒道会が神奈川県へ耐震不良の改修費用の補助金申請をした「認定申請書」に対する回答書で「コンクリートコアの圧縮強度が不十分であり、耐震不良が認められるため補助金は出せない」とある。世間の感覚とはかけ離れた法律だ。弊誌『集中』が2年前、東館の建設を担当した当時の工事関係者を探し出し取材した際、「完成時からコンクリート業者の手抜きで強度不足が指摘されていたが、神奈川県は確かめもしないで判を押していた。当時はそういう時代だった」と話していた。ちなみに建設完成直後に耐震不良の程度を検査している。この検査資料は今も存在するが、関係者により某所に隠されている。完成時から耐震不良物件だったため、今も補助金は得られない。資金の無い大磯恒道会は東館の強度改修工事を今でもしていない。尾尻が理事長在任中「この耐震不良問題は神奈川県にとっては何が何でも消し去りたい話だ」と複数の関係者から聞き、改めて神奈川県保健福祉局へ補助金申請を談判したが、答えは同じくNOだった。現在、東館の建物は激しく傾斜している。無人で静まり返る長い廊下にビー玉を置くと勢いよく転がり出す。東館の入居者は全員西館へ移動させていたが、稼働室が半分では売り上げも上がらない。そんな経営状況ゆえ高利の資金に手を出してしまうのも理解出来る。その状況の中で、当時の大磯恒道会理事長・中井弘隆(仮名)は再び、突然の破産宣告を申請した張本人・山下純一(仮名)の資金に期待するようになる。

管財人が犯した致命的なミス

 3つ目の要因は社会福祉法人楓林会(仮称・以下・楓林会)との提携がご破算になった事だ。楓林会が大磯恒道会の窮状を知り、経営を支える有り難い話もあったと聞く。一時は提携までしたものの、デューデリジェンスの結果、ご破算となり離れていった。楓林会と提携した時に送り込まれた一人に山下がいた。山下は提携がご破算となった後も新たな資金提供を中井に持ち掛け、信用を得て幹部に抜擢されている。しかし前号の記述通り、資金提供話はホラ話で大磯恒道会から追い出されている。中井は大磯恒道会の中では有名人だったが、上野保破産管財人は弊社との訴訟の中で致命的なミスを犯した。破産管財人・上野保弁護士が下書きした中井の陳述書には、山下は尾尻が大磯恒道会に連れて来た人物だと記載されていた。破産管財人は嘘をついたり、陳述書を勝手に作文したりしてはいけない。

 新経営陣の下、大磯の経営改善が順調に進んでいるのか不安ながらも、推移を見守っていた矢先の18年11月初旬、尾尻の携帯が鳴った。送信者は大磯恒道会の幹部だ。「尾尻さん! 山下理事長から資金が全く入りません! その上、資金の相談をしたいと申し出ても逃げてしまいます。今月末の給与資金もありません」という話だった。案の定、再び資金を出さずに乗っ取りを謀る行為に出たのだろう。実質の理事長でありながら、あまりにも無責任な行為だ。山下の「私にとって介護は天職です」との言葉は欺しのテクニックのひとつなのだろう。尾尻は急ぎ、11月16日に大磯の経営参加に意欲を示していた社会福祉法人を持つ企業の日の本総合医療(仮称)と面談をした。実は半年ほど前に地元の重鎮から紹介があり、後継理事長候補者として面会していたが、この時は山下純一で行く事で合意が出来ていたために、有り難い申し出ながら断っていた。経理からの悲鳴のような報告を受け、急きょ面談をした。日の本総合医療の考えに変わりは無かった。そして資金力も十分だと確認出来たので、後継理事長候補として神奈川県保健福祉局に伝え、早々に面談するよう依頼した。しかし神奈川県が面談をする事はなかった。もし面談をしていれば大磯恒道会の破産は間違いなく避けられた。不思議な事に後継理事長候補者の話が直ちに山下に伝わった。誰が伝えたのか? 山下はこの話を聞き焦ったに違いない。このままでは自己資金の拠出が必要となってしまう。山下は破産申請を急いだ。そして、退任したものの名義上の理事長である尾尻の承認を必要としない準破産申請をした。

 準破産の一報を聞き、尾尻は旧知の法務省幹部を訪問した。幹部は「破産管財人は債権者の利益を守る事を最優先する。一言で言えば後継者に求められるのはより多くの資金が出せるか否かだ。上野保破産管財人もその手順で動くはずだ」と言う。尾尻は直ちに上野保破産管財人に後継者候補の日の本総合医療と面談を行うように要請したが、彼らが面談をしたのは全てが決定した後だった。3週間以上も無視し続けた行為を「破産管財人として有り得ない行為」だと法務省幹部は言う。これが上野保破産管財人と和田正弁護士の最初の怠慢と悪手となった。破産により借金が消え、大きな価値を持つ新生大磯恒道会が誕生した。そして、山下がタダ同然で手に入れた。人はこれを間違いなく泥棒と呼ぶだろう。主演男優賞は山下純一と上野保破産管財人であり、助演賞は中井隆弘前理事長だ。そして、大磯恒道会債権者会議でこれらの不正行為を追求する集中出版に突然、破産管財人・上野保弁護士、みなと協和法律事務所の和田正弁護士・野口隆一弁護士の3人からの訴状が届いた。幼稚な口封じ策だ。彼ら3人は集中攻撃で墓穴を掘る。次号ではこの訴訟を記す。(敬称略)

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