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第148回 自公連立政権は「耐用年数」切れ?

第148回 自公連立政権は「耐用年数」切れ?

 自民、公明両党の衆院議員4人が緊急事態宣言下の東京・銀座で深夜まで飲み歩いていた問題で処分された。公明党の遠山清彦・前副財務相は「政治不信を招いた」と議員を辞職、自民党の松本純・元国家公安委員長ら3人は離党処分となった。

 国民の気持ちを逆なでする愚行なのだから当然だが、国民の怒りはこの程度では収まらない。地方選挙では自民、公明候補の落選が相次ぎ、「自公連立政権はもはや耐用年数切れ」との厳しい批判も出始めた。

 東京五輪・パラリンピックの開催も見通しが立たず、長男の不正接待疑惑にも見舞われた菅義偉政権はどんよりと曇ったままだ。

 「結党以来の恥辱」

 公明党幹部は肩を落とした。公明党は「庶民(生活者)の味方」を自負してきた。大資本優遇で、庶民生活を省みる事の少ない自民党をいさめ、「平和」や「平等」といった普遍的な価値を尊ぶよう促すのが役割だと教えられてきたからだ。

 もちろん、仏教に範を取る支持母体・創価学会の意向が背景にあるが、置き去りにされがちな庶民に寄り添う政策を打ち出す事で、政党としての独自性を築いてきたのだ。

深夜の銀座飲み歩きで総スカン

 それだけに、次世代のエースとして衆目が一致していた遠山・前副財務相の深夜の高級クラブ通いに続き、公設秘書が政治資金からキャバクラの飲食費を支出していたとのスキャンダルは衝撃的だった。

 遠山・前副財務相は創価大卒の生え抜き。外交政策に明るく、その理知的な振る舞いで、若い頃から将来を嘱望されていた。前回の衆院選で、唯一取りこぼした神奈川6区の議席奪還のため、比例九州ブロックからの〝国替え立候補〟が予定されていたのも、支持母体や党幹部らの期待の表れだった。

 「安倍晋三政権下で安保法制を仕上げた時にも支持者から『もうお前に票はやらん』と抗議が殺到したが、今回はあの時よりもずっと厳しい。安保法制は政策上の問題だったが、今回は公明党という政党の有り様そのものに批判が加えられた。レーゾンデートル(存在意義)が問われている」

 安保法制整備の際に反対の姿勢を示し、「連立離脱」まで口にした元公明党幹部は「長い与党生活で公明党はすっかりスポイルされた」と悔しげに語る。

 山口那津男代表らも当初は事態を甘く見ていた節がある。遠山・前副財務相を幹事長代理の要職から外したものの、神奈川6区への立候補は予定通りに進める構えだった。ところが、SNS等で公明党批判は燎原の火のように広がり、収拾不能に陥った。

 「お前らこそが仏敵だ」

 「自民党の3流議員と同レベルだ。公明党はもうない。自民党公明派だな」

 山口代表は神奈川6区に候補者を擁立しないと言明。次期衆院選に向けた戦略の練り直しを余儀なくされている。

 とは言え、長年の自公連立により、両党の選挙協力体制は切るに切れない関係にある。下手にいじれば共倒れの危機すら招きかねない。自民党の泥も被りながら、信頼を回復するのは至難の業だ。

 「ぐうの音も出ないほど、もっと叩いてくれ。全ての罪を背負うぐらいに叩かれ、頭を下げ続ける事でしか、支持者の許しは得られない」

 公明党中堅の殊勝な一言が公明党の今を体現している。

 定期的に醜聞に見舞われ、スキャンダル免疫が出来ている自民党も、今回ばかりはしょげ切っている。菅首相と二階俊博・幹事長のステーキ会食がやり玉に挙げられ、綱紀粛正を誓ったばかりのところに勃発した深夜の高級クラブ通いだったからだ。

 しかも、松本・元国家公安委員長は田野瀬太道・副文科相、大塚高司・国対副委員長との同席を隠し、国民の前で平然と嘘をついていた。スキャンダルはのらりくらりとかわし、ほとぼりが冷めるのを待つ戦略の二階幹事長も、さすがに今回ばかりは3人の離党勧告に踏み切った。

 国民の怒りはそれでも収まらない。「離党って、次の選挙で勝てば公認っていう事でしょ。何の処分にもなっていない」。SNSには処分の甘さを非難する声が溢れた。

 窮状を察した下村博文・政調会長はBS番組で「次の選挙に出るにしても、党の公認では出られない。政治生命を失いかねない厳しい処分だ」と繕うよりほかなかった。

北九州ショックで戦略練り直し

 下村・政調会長ら党幹部の脳裏にあったのは1月31日投開票の北九州市議選(定数57)での惨敗だ。自民党の公認候補22人のうち6人が政権批判の逆風で落選し、6議席を失ったのだ。

 落選したベテラン市議の1人は「様々な場面で、『お前も(松本・元国家公安委員長と同じ)自民やろ』との批判を浴びた」と逆風選挙の実態を語っている。

 コロナ禍が長引き、国民は疲れ切っている。怒りの矛先が政権与党に向かうのはやむを得ない事だが、県連副会長等のベテランも含め現職6人もが落ちたのは前代未聞の事態だ。

 「国民の1人として、今回の松本の態度は許し難い。息の根を止めてやりたい気分だ」。普段は冷静な自民党選対スタッフは、そう言って語気を荒げた。

 与党議員の醜態で、菅首相の国会答弁はお詫びのオンパレードになった。松本・元国家公安委員長は神奈川1区選出。麻生派所属だが、菅首相(神奈川2区)と同じ横浜市が地盤だ。

 「首相になってから、菅さんはツキがない。横浜市議会の後輩で、同じ神奈川県連の仲間にまで足を引っ張られた。ここまで、ツキに見放されたのだから、五輪ぐらいは何とか良い方向になってくれないかな。そうじゃないと報われない」

 神奈川選出の若手議員が期待する東京五輪・パラリンピックは組織委員会の森喜朗前会長(元首相)の女性蔑視発言を巡る大混乱が尾を引いている。カギを握るのはスポンサー料の大半を担う米国の判断だが、国民の8割が消極姿勢を示す中での開催はハードルが高い。

 五輪見送りなら、菅首相は政権浮揚策のないまま、ずるずると行くしかない。株価の高騰は好材料なのだが、実体経済と離反した値上がりは、いずれ弾けるバブルとの警戒感も消えない。 

 「最長政権となった安倍内閣で自公連立政権は耐用年数を過ぎた。菅首相に恨みはないが、今後もボロが出てくるだけだろう。コロナ対策が終わったら政権交代しかない。それが日本のためだ」

 野党幹部はコロナという国難を脱するのが自公連立政権の最後の仕事と息巻いた。1桁支持率にあえぐ野党に何が期待出来るのかと腐したくもなるが、野党にやる気がみなぎって来た事が、唯一の明るい材料なのかもしれない。

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