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未来の会

コロナ禍で歯止め掛からぬ「雇用の悪化」

コロナ禍で歯止め掛からぬ「雇用の悪化」
日本経済へのダメージ大きい製造業への影響

新型コロナウイルス感染症の影響による雇用の悪化に歯止めが掛からない。完全失業率は8月でとうとう3%に達し、3年3カ月ぶりの水準となった。

 失業者数も200万人台に上り、新型コロナの感染拡大が4〜5月の緊急事態宣言解除後も雇用に暗い影を落としている現状が浮き彫りになった。

 年末には3・38%にまで悪化すると予測する民間研究機関もあり、当面は厳しい雇用情勢が続きそうだ。春闘に向けた動きも出始めているが、雇用維持を名目に賃上げは厳しい状況だ。

失業率・求人倍率・経済成長率は悪化

 8月の完全失業者数は前年同月に比べ、49万人増えて、206万人に上った。失業率の悪化に伴い、就業者数の落ち込みも顕著で、6676万人と75万人減った。パートやアルバイト等立場が弱い非正規従業員は120万人減って、2070万人と減少幅は大きい。

 産業別でみると、減少幅は製造業が52万人と一番大きく、宿泊・飲食サービス業は28万人、卸売・小売業が16万人で、日本の基幹産業である製造業に影響が出ているのは日本経済を考えるとダメージが大きい。

 コロナに絡む解雇や雇い止めは6万人を突破しており、増加ペースは速まっている。労組関係者は「製造業の拠点が多い地域で派遣切りが顕著になっている」と指摘する。

 早期・希望退職も9月の段階で60社に上り、募集人員は1万人を超えている。1万人を超えたのは昨年だと10月のため、1カ月ほど早い。アパレルや電気機器、輸送用機器といった業界で顕著で、35%が新型コロナの影響を受けたとみられる。

 有効求人倍率も8月は1・04倍まで落ち込み、前月を0・04ポイント下回った。8カ月連続の減少で、2014年1月以来、6年7カ月ぶりの低水準となった。東京都や大阪府等の都市部を含む13都道府県で1倍を切った。

 新規求人数は66万2446人で、前年同月比27・8%の減少だ。

 産業別でみても失業率と同様、宿泊業・飲食サービス業の新規求人数は49・1%減、生活関連サービス業・娯楽業は41%減と厳しさを増している。

 厚労省関係者は「イベント等の中止で宿泊業は厳しい状況が続いている。GOTOキャンペーンに東京が追加され、今後の増加に期待したい」と話す。

 新型コロナ感染症の影響が雇用に出始めた2月から8月までの推移をみると、完全失業率は2・4%から3%に、有効求人倍率は1・45倍から1・04倍に下がっており、緩やかだが確実に落ち込んでいる。

 公益社団法人「日本経済研究センター」の試算によると(20年10月現在)、20年度の実質経済成長率は6・12%のマイナスで、21年度にはようやく3・4%のプラスに転じると予測している。失業率も20年10〜12月には3・38%まで上昇し、21年1〜3月期も3・36%とほぼ同水準で推移するとみる。本格的に失業率が改善し始めるのは来年4月以降だろう。

 消費者物価上昇率も20年10〜12月にマイナス0・68%まで低下した後、次第に回復基調に入り、21年4〜6月にプラスに転じるとみる。

 政府は雇用対策として、雇用調整助成金の上限額を1万5000円に引き上げたり、申請書類を簡素化したりする等、特例措置に取り組んでいる。

 厚生労働省幹部は「雇用調整助成金の大幅な拡充効果が雇用を下支えしている」と分析するが、財源を考えるといつまでも続ける訳にはいかないだろう。現行の特例措置は当初の9月末から12月末まで延長されているが、公明党や野党は厳しい雇用情勢から来年3月末までの延長を求めている。

雇用対策への言及が少ない菅首相

 これに関連し、田村憲久・厚労相は10月2日の閣議後会見で「雇用調整助成金は、雇用情勢が悪化しない限り来年から段階的に通常通りに戻すが、今より大幅に悪化すれば現在の特例措置を当然延長するという話になってくる。雇用情勢を注視し、必要があれば延長も検討する。雇用情勢がコロナ以前に急激に元に戻るのを期待するのは難しい状況だ。現行制度を元の方向に戻すにしても、段階的になる」と述べた。

 今後の感染状況次第だが、対象範囲を縮小するのを念頭に期限の延長を検討する考えだ。

 この点について、先の厚労省幹部は「基本的に雇用調整助成金の特例措置は年末で打ち切る方針だった。延長を検討するにしても、対象範囲を縮小するとなると『なぜうちの業界を外すのか』、批判の声が上がるのは必至で見直しや縮小は至難の業だ」と指摘する。

 菅義偉首相から更なる雇用対策への言及は少ない。しかし、ある政府関係者は「官房長官時代から雇用調整助成金の特例措置の申請がうまくスムーズにいかない時は個別レクの要求が多く、厚労省は非常にねちっこく問い詰められていた」と明かす。今後、年末に向けて官邸主導による「差配」がみられるかもしれない。

 厳しさを増す雇用情勢の中、労働組合の中央組織・連合の神津里季生会長は10月2日の中央委員会で来年の春闘に関し、「雇用の問題と賃上げを二律背反で捉えるべきではない」と述べ、使用者側に賃上げを求める姿勢を明確にした。

 これは、経団連の中西宏明会長が9月の記者会見で「コロナ禍によって雇用維持に対するプレッシャーが大きい。従来型の相場観をもった賃金水準の議論は難しい」と発言したのを牽制したものとみられる。

 ただ、人事院は20年度の国家公務員給与改定で、ボーナスを引き下げるよう勧告した。引き下げはリーマン・ショックの影響を受けた10年度以来で、実に10年ぶりだ。民間のボーナスが減る見通しとなっており、ある大手企業の従業員は「会社からは冬のボーナスも下がる方針が既に示されている」と明かし、賃金を取り巻く状況も厳しい。

 連合が求めるような賃上げは困難を極めるだろう。

 とはいえ、リーマン・ショック時には完全失業率は5・5%まで上昇した事を考えれば、現状はそこまでは達していない。今回の新型コロナの影響は「リーマン並み」との声もあり、そう考えれば政策的な効果が出ているという評価も出来なくはない。

 雇用に詳しい専門家の中には「製造業に本格的な影響が出るのはこれから」という見方も少なくない。財源を考えれば雇用調整助成金にいつまでも頼る訳にはいかず、新たな対策に向けて政府全体で新たな知恵を出す事が求められるだろう。

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