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未来の会

【番外編1】日本の医療レベルと医療の国際化①

【番外編1】日本の医療レベルと医療の国際化①
日本の健康度や医療に対する評価は高い

 ダボス会議で知られる世界経済フォーラムが発表した2018年版「世界競争力報告」によると、日本の総合順位は5位だった。前年の9位から上昇した。健康やデジタル分野の評価が高く、特に寿命の長さを背景に「健康」の評価が最高であった。アジアでは香港を上回りシンガポールに次ぐ2番目の高さとなった。

 筆者も『日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一』(2017年2月、講談社+α新書)を出したりしているが、それが改めて裏付けられた。そして、この優れた医療を武器に医療の国際展開を図ろうというのが医療ツーリズムの動きであった。

 しかし、問題は、日本の医療保険をうまく利用としようという動きが現れたことである。例えば、日本で働く外国人は2018年10月末で128万人(厚生労働省調査)といわれる。現行の医療保険制度では、外国人労働者が大企業の健康保険組合か、中小企業向けの全国健康保険協会(協会けんぽ)のいずれかに加入した場合、その外国人労働者が生計を支えている子や孫など3親等以内については、日本に住んでいなくても扶養家族として扱われる。つまり、3割の自己負担や高額療養費制度の恩恵を享受できる。いくらなんでも適応範囲が広過ぎるということで、政府もこの適応を日本に住んでいる人のみに改める方向だというが、こういった抜け穴は他にも多く見られる。そこで、今回から3回で、番外編として医療の国際化の歴史を見てみたい。

グローバル化とは何か

 なぜ日本にこんなに外国人が増えたのであろうか。このような現象をグローバル化あるいはグローバリゼーションという。いきなり、堅い話で恐縮だが、グローバル化あるいはグローバリゼーションとは、これまでの国家や地域などの境界を越えて地球規模で複数の社会とその構成要素の間での結び付きが強くなることに伴う社会における変化やその過程、と定義される。社会のグローバル化あるいは流動化は次の順で起きる。①情報②資本(お金)③人(旅行者〈健常者〉、労働者、患者)の順である。

情報や資本のグローバル化

 情報のグローバル化はいうまでもないことである。インターネットを中心に、情報がグローバルに伝わることは今では論を待たないであろう。そして、医療情報が国を越えて伝わることが、患者の流動化に繋がっていることも重要である。いわゆる医療ツーリズムの動きである。

 資本の場合にもグローバル化が進んでいる。例えば、日本から米国の株式を購入することも容易になっている。

消費のグローバル化と資本

 旧来は経済発展および技術の進歩によって、消費者が欲しいものが順に表れた。かつての日本であれば、1950年代後半、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目が「三種の神器」と呼ばれ、60年代半ばには3C(カー(自動車)、クーラー(ルームクーラー)、カラーテレビ)のトリオがそれであった。

 ところが、現在の新興国の富裕層はそれを全て購入できる環境にある。

 ここで、医療や健康の役割を考えてみよう。

 中国の古代皇帝は不老不死を求めた。徐福伝説というのがある、時は紀元前219年、秦の始皇帝の時代に「童男童女500人を含め総勢3000人の集団を引き連れ、仙人と不老不死の仙薬を求めて中国大陸から東方の蓬萊へ旅立った一団がいた。それを先導したのが秦の始皇帝からその命を受けた徐福であった……」というものである。

 全ての権力を握った人間の究極的に欲しいものが健康なのである。しかし、逆に言えば、健康とは全ての人が欲しい究極のものなのである。究極という意味は二つある。最高権力者でも欲しいし、一般の庶民でも欲しいものなのである。その意味では、差異がない。

 医療は究極に人が求めるものである。先進国や新興国の富裕層にとって、健康で疾患を持たない生活は究極的に人類が求めるものであるために、薬剤や医療機器、医療技術の研究が進み、高度化が進んだ。

国際化は元々行っていたことではある

 医学は学問である。つまり、客観的なデータでものを考える。従って、医学の学会は古来から行われており、その中で国を越えた情報交換がなされていた。また、アジアの中での先進国として、アジア諸国への援助としての医療貢献の歴史は長い。

 このような貢献も含めた国際化は以前から行われている。この活動は「グローバルヘルス」(日本語訳は国際保健)という用語で代表されるが、グローバルヘルスの定義は、Wikipediaによれば、「グローバルレベルでの人々の健康課題、あるいはそれについて研究する公衆衛生、疫学、医学、看護学、人類学、開発経済学、政治学、社会学などの複合的な学問領域を指す」。あるいは、「グローバルレベルで人々の健康に影響を与える課題に対して、その課題解決のためにグローバルな協力や連携が必要な領域」(https://www.ghitfund.org/motivation/motivation1/jp)という視点で、人道的な視点が大きい。

国際化に医療の産業的視点の導入

 麻生太郎内閣(2008年9月〜09年9月)の時に、海外で医療ツーリズム(医療観光)というものが流行っている、という情報が入ってきた。これには、拙著『グローバル化する医療:メディカルツーリズムとは何か』(2009年7月、岩波書店)も多少影響があったのではないかと自負している。要するに、アジア新興国の新たなビジネスとして医療ツーリズムというものがあるということが分かったのである。この考え方は、ほどなく2009年9月に政権を奪取した民主党にも受け継がれた。

 すなわち、医療を求めて患者が移動する現象が現場で起きているということを反映し、同じことを日本で行おうということで、当初は医療ツーリズム中心の政策になった。

 具体的には2007年には年間300万人の欧米・中東の外国人患者がアジアの主要国を訪れるまでに市場が成長した。そして日本でも、民主党政権時の2009年12月に閣議決定された政府の「新成長戦略(基本方針)」に盛り込まれて、以降自民党政権でも継続的に国家戦略の一つとされている。

 医療を求めて旅行をするという現象は古来からみられるが、1997年のアジア通貨危機以降、アジア諸国では外貨獲得のためのサービス産業発展のために、その一環として医療と観光を連携させた医療ツーリズムという新しい形態を促進し始めたというわけだ。目的の一つは外貨の獲得である。

 日本においては、日本医師会の反対、厚生労働省の中立的立場(医療交流なら行う)があり、一部地域での盛り上がりはあったが、2011年に起きた33・11もあり急速に熱が冷えてしまった。

 

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