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カイザーは3つの組織からなる

 カイザーパーマネンテ(以下、カイザー)は1945年にカリフォルニア州オークランドに実業家のHenry J. Kaiser氏とSidney Garfield医師によって設立された。カイザーはKaiser Foundation Health Plan, Inc.(保険)、そして地域の運営体であるKaiser Foundation Hospitals、Kaiser Permanente Medical Groupの3つの組織からなる。

 米国で最大規模のマネジドケア(管理医療手法を用いた医療費を抑制することを目的とした医療保険制度)の機構で、現在では8州(ハワイ、ワシントン、オレゴン、カリフォルニア、コロラド、メリーランド、バージニア、ジョージア)、そしてワシントンDCで展開している。詳細は以下の通りである(2018年12月現在)。

■会員数:1,220万人

■従業員:217,415人

■医師:22,914人

■看護師:59,127人

■メディカルセンター:39カ所(2017年10月統計)

 Kaiser Foundation Health Plan, Inc.医療保険、Kaiser Foundation Hospitalsは病院を運営している非営利組織である。つまり、病院と保険会社を同時に所有しているのである。米国においては、IDN(Integrated Delivery Network)という概念の下で、こういった保険会社と病院が同じ経営母体の中に存在する例も増えてきているが、基本は医療機関が中心であってカイザーのように、保険と医療機関が同列になっているわけではない。

 その意味でカイザーの面白さは、レベニュー(定期的な収入)が保険からであると言い切るところである。これはカイザーの保険がHMO(Health Maintenance Organization:米国の医療保険システムの1つである健康維持機構)タイプであり、保険料として得られた収入を、医療機関には包括で支払う形式であるからである。

 もちろん、カイザーとしては HMOと呼ばれたくないという気持ちもある。それは74年前にカイザーがスタートした時に、前払いの健康管理予防システムとしてGarfield医師とそのスポンサーであるkaiser氏が1日5セントのプリペイドシステムとして始めたという誇りがあるからである。従って、カイザーでは医療機関を受診する人を患者ではなく「メンバー」と呼んでいる。

 もちろん、医療機関が、追加で個別に収益を上げることはあるであろうが、基本スタイルがこうなっている。ここから、カイザーの特徴である予防医療を重視する取り組みが、経済合理的に導き出される。もっといえば、高度医療を中心とした米国病院ランキング(例えば『US News and World Report』の病院ランキング)にカイザーの病院が必ずしも出てこないことも、ある意味うなずくことができる。逆に言えば、カイザーはプライマリケア、遠隔医療、在宅医療の重視システムである。

 在宅医療の重視といっても日本とはかなり異なる。それは医師がほぼ在宅医療に関与してないという点である。在宅医療は、退院後1日1時間週5日間で3週間続けて行うことが通常である。対象患者は外傷が50%と多く、心不全、重症糖尿病、COPD(慢性閉塞性肺疾患)のチーム医療を行っており、ソーシャルワーカー、看護師、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)、ST(言語聴覚士) などが訪問する。

 「教育を処方する」という概念で、家族に教育し、3週間以後の在宅ケアは家族あるいは家族が誰かを雇って行うことになる。もちろん、尿管カテーテル留置中だとか寝たきりの患者のように、10%ほどの患者は例外であり、3週間以降もチームが訪問するケースがあり得るという。在宅医療の患者はメディケア(高齢者向け公的医療保険制度)が多く、また余命1年以内の緩和ケア、特にメディケアが認めている余命6カ月以内で保険がおりるような患者は医師が診察する。

 また、病院とは異なる「マルチディシプリナリーハブ」という概念で、日帰り手術とプライマリケアを重視した大きな診療所の建設を行っている。

 Kaiser Permanente Medical Groupは医師の営利組織である、ここもカイザーならではの特徴がある。米国では、医師への報酬と病院の報酬は別個になっている。言い換えれば、医師には直接報酬が支払われる仕組みであるわけだ。これは医師の独立性を示すものともいえる。

 ただし、直接払われる報酬は出来高払いの報酬体系を取るので、カイザーとしてはこの体系をとっていない。すなわち、この医師グループに属している医師達は、カイザーの保険の患者しか診察しない。そして、給与+インセンティブという形で組織からの報酬をもらうことになる。このインセンティブは診察回数の多さだけに与えられるものではないので、無駄な医療は行われないということになる。

病院

 今回は、2017年4月25日にオープンしたサンディエゴメディカルセンターを視察した。この病院は新しいので、建築の考え方が今後のカイザーの病院のモデルになったと言われている。

■施設面積:617,215平方フィート

■病床数:321床

■OR(手術室):10室

■駐車場収容台数:1,462台

■屋外ヒーリングガーデン&散歩道:4エーカー

■平均在院日数:2.8日

■ロボット外科手術

 考え方の1つとして、待合室を極力減らしていくということがある。つまり、事前にスマホやパソコンでチェックインし、病院ではキオスク機能で待ち時間を極力短くしていくということである。患者目線を重視している。

ICTの活用

 カイザーのもう1つの特徴としては ICT(情報通信技術) の活用がある。ICTの活用は予防に親和性が高い、そして収入の6%を ICT 投資に行っており、電子カルテメーカであるEPICのシステムを「カイザーパーマネンテヘルス コネクト」という形で運用している。2017年の1年間に2,300万件のメールのやり取りがあり、7,800万件の処方箋が電子的にやり取りされたという。

 このヘルスコネクトにアクセスする患者のうち64%がスマートフォンなどでのモバイルでアクセスしており、PHR(Personal Health Record:患者が自らの医療・健康情報を収集し一元的に保存する仕組み)を使用している。「テレフォン・ヴィジット」と呼ばれる遠隔面談も増加してきており、2017年には13,975件行われ、2018年には2倍になりそうな勢いであるという。 

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