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未来の会

第213回 厚労省ウォッチング
高所得高齢者がターゲット

第213回 厚労省ウォッチング高所得高齢者がターゲット

政府・与党は、株式配当等金融所得の把握を進め、医療費の窓口負担や保険料に反映する制度の導入に乗り出す。「現役世代の保険料引き下げ」を迫る自民党の連立パートナー、日本維新の会に背中を押された格好で、先ずは支払い能力の有る75歳以上の高齢者をターゲットとする。長年導入を望みながら、「把握は難しい」と諦めモードだった厚生労働省内も「課題は多いが、作業を加速させたい」(幹部)と意気盛んだ。
 医療等の負担に金融所得を反映させる案は、11月21日に閣議決定された総合経済対策に「具体的な法制上の措置を2025年度中に講じる」と明記された。先に75歳以上を対象にするのは、全員が後期高齢者医療制度に入っていて、同年代間の公平性を保てると判断した為だ。その次には自営業者等の国民健康保険も対象として検討する。勤め人が入る健康保険は給与を基に保険料(労使折半)を決めており、反映が困難な事から対象外とする。少額投資非課税制度(NISA)の口座も対象から外す意向だ。金融所得を自己負担割合に反映させる事は介護保険でも検討する。
 実際、金融所得は高齢者に大きく偏っている。総務省の全国家計構造調査(2人以上世帯)で利子・配当金の割合を世帯主の年齢層別に見ると、65歳以上が全世代の63%(19年時点)に上り、75歳以上だけで30%を占める。60歳以上の金融資産は平均1800〜2000万円(同)に上る。上場株式の配当等の金融所得は確定申告をした人であれば、翌年度の社会保険料に反映される。しかし確定申告を避けて源泉徴収を選ぶ事も可能で、その場合、自治体は当該者の金融所得を把握出来ない。
 財務省の試算では、75歳以上で500万円の配当を得ている場合、確定申告すると医療保険料は年間約52万円に上る。医療費の窓口負担も3割だ。それが未申告なら保険料は1万5000円程度で済む上、窓口負担も1割のまま。厚労省幹部は「高所得層を中心に金融所得の9割程は医療面の負担に反映されていない。負担を逃げている人には支え合いの輪に加わって貰う」と話す。
 「市場の活性化」を理由に、金融所得課税は証券税制優遇等で低く抑えられてきた。が、その結果、所得1億円超の人は稼ぐ程、税負担が下がる「1億円の壁」が生じた。
 これ迄、厚労省は介護施設に入居した低所得の人を対象とする光熱水費等の軽減措置について、一定以上の金融資産を持つ人を対象外とする等はしてきたものの、それ以上は踏み出せていない。説得先が財務省や証券金融業界、総務省や自治体と多岐に広がり過ぎる点もその要因の1つだ。厚労省にとって維新の「保険料の引き下げ」の主張は煙たいばかりだが、一方で、政治の流れが金融所得を保険料へ反映させる方向へ動き始めた事に関しては追い風と受け止めている。
 25年度からは、超高所得者層の税逃れを阻止する税制「日本型ミニマムタックス」が導入される等、金融所得も聖域では無くなってきている。とは言え、医療や介護の負担に反映させるには課題も少なく無い。データの把握は、証券会社が国税庁に出す税務調書を使う事を想定している。政府は専用データベースを社会保険診療報酬支払基金に置く等して、自治体が保険料算定に使える様にする。だが、金融機関との密接な連携や膨大なシステム改修等、幾多の困難が待ち受ける。デジタル化も不可欠で、マイナンバーのオンライン提出の義務化等も徹底する必要も有る。
 11月21日の自民、維新による社会保障制度改革を協議する会合では、金融所得も議題に上った。只、議論はOTC類似薬の保険給付見直し等が中心となり、金融所得に関しては「把握する為の仕組み作りが焦点だね、という位」(自民党の出席者)に止まったと言う。何時まで経っても決められない改革は、重要度が低いという事か。

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