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未来の会

第61回「精神医療ダークサイド」最新事情
農業で力を発揮する障害者たち

第61回「精神医療ダークサイド」最新事情農業で力を発揮する障害者たち
愛媛・愛南町ではアボカドが名産に

企業が障害者の法定雇用率を満たすため、外部業者から農園を借りて精神障害者らに職場を提供する農園型障害者雇用が数年前、激しい批判を浴びた。やりがいを感じられない仕事内容、良質とは言えない職場環境、法定雇用率を金で買うような企業姿勢、などが問題視された。だが、障害者に安定した農業就労を提供する企業や外部業者にまで批判の目が向けられたことは残念だった。

農業に適性がある人は精神障害者や知的障害者にも多い。オフィスビルではストレスを溜めて上手くいかなくても、農園では生き生きと働ける人が少なくないのだ。こだわりの強さを発揮して品種改良に乗り出したり、極めて正確な仕分けをしたりするケースもある。

筆者は昨年、障害者らが大事に育てた農作物を各地から取り寄せ、料理を提供する「OUTBACKカフェ」という取り組みを横浜で始めた。精神障害者の表現力や発信力を高める活動「OUTBACKプロジェクト」の一環として、1日限定で定期的に開いている。場所は、障害者向けグループホームと分譲マンションをあえて混在させたビル「ノアヒューセット」(横浜市営地下鉄センター北駅前)の1階カフェスペースを利用している。

昨夏の1回目は、社会福祉法人「グリーン」の広大な農園で知的障害のある人たちが育てたナスやオクラを使い、夏野菜カレーを作った。無農薬にこだわるこの農園では、馬糞を使用した堆肥作り(堆肥の山を定期的に移動させて熟成を進める作業)にも働く人たちの根気強さが生きている。

昨秋の2回目は、NPO法人「多摩草むらの会」の福祉事業所「夢畑」が栽培する濃厚で大きなしいたけを使用。サバのしいたけ肉詰めをメインにした定食を用意すると、開店と同時に店内が満員になる人気を集めた。

今年2月6日の3回目は、愛媛県愛南町のNPO法人「ハートinハートinなんぐん市場」が育てた希少な国産アボカドを使い、まぐろアボカド丼を提供した。国産アボカドは近年、西日本を中心に栽培面積が増えているが、精神障害者や高齢者の雇用創出に取り組むなんぐん市場はその先駆けとして、2009年から栽培に取り組んできた。味と品質が高く評価され、東京の果物専門店・銀座千疋屋が扱った実績もある。

愛媛県最南端に位置する愛南町での精神医療の歴史は、精神科医の渡部欣一郎氏が1962年、海を望む高台に御荘精神病院を開設したことから始まる。松山や宇和島で患者目線の診療を行った渡部氏は、この病院を隔離収容目的で作ったのではない。地域との交流を密にして障害者理解を広げ、いずれは病院や障害の壁をなくすことを目指した。

渡部氏の死後も思い↖は受け継がれた。御荘精神病院は御荘診療所に変わり、精神障害のある人とない人が一緒に働く光景が当たり前になった。なんぐん市場スタッフの中野良治さんは「高齢化や人口減、大企業の工場撤退などで町は活力低下の危機にあります。障害のあるなしに拘わらず、みんなで地域を支えるつながりが重要になっています」と語る。

なんぐん市場ではみかんやアボカドの栽培の他、しいたけ栽培、アマゴ養殖、温泉宿泊施設「山出(やまいだし)憩いの里温泉」の管理運営なども手掛けており、個々の障害者の適性に応じた活躍の場を広げ続けている。

アボカドの成育状況を見る中野さん(2025年9月筆者撮影)

ジャーナリスト:佐藤 光展

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