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第190回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ 高血圧新ガイドラインは危険

第190回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ 高血圧新ガイドラインは危険

日本高血圧学会は2025年8月、高齢者も含めて、降圧目標を130/80未満とする改訂ガイドラインを発表した。薬のチェック122号(25年11月)1)2)で批判的に吟味したので、その概要を紹介する。

改訂の根拠はSTEP試験

 改訂の根拠となったのは、STEP試験というランダム化比較試験(RCT)の結果である3)。60〜90歳(平均66歳)で、収縮期血圧が140〜190(平均146)、拡張期血圧平均82.5の中国人を、収縮期血圧110〜130未満を目標に1年後平均127.5に強力に下げた強化降圧群(以下、強化群:4243人)と130〜150未満を目標に135.3に下げた、いわゆる標準治療群(以下、標準群:4268人)におけるイベントを比較した。

その結果、強化群では、主なアウトカム(脳卒中や心筋梗塞、心不全など循環器疾患とそれによる死亡の合計)を3.3年後に26%減らしたが、総死亡は逆に11%増える傾向にあった。

したがって、循環器以外の病気による死亡は、強化群に多いと推察される。なお、プラセボ群を設けた比較ではないので、恣意的な操作がなされやすい方法である。

新ガイドラインで成人の約半数が治療対象に

03年の国民健康栄養調査のデータをもとに新たなガイドラインを適用した場合の影響を計算した。現在降圧剤治療を受けている2540万人中約7割の1800万人は降圧剤の追加が必要になる。また、現在降圧剤を服用していない2340万人が新たに降圧剤治療の対象になり、合計成人の約半数が降圧剤治療の対象になると推察された。

160/100未満では総死亡低下なし

コクランのシステマティックレビューでは、全年齢でI度高血圧である140–159/90–99の人を降圧したRCTのメタ解析で、総死亡は有意に低下させることができず、害反応によって試験を脱落した人が約5倍増えていた。

60歳未満で160/90未満、平均血圧が150/95の人を対象としたプラセボ対照RCTのメタ解析でも、総死亡は減らすことができなかった。

総死亡を減らしたのは、60歳以上で、平均年齢が73.4歳、平均血圧が182/95の人を降圧した場合だけあった。この場合でも、総死亡はプラセボ群に比べて9%低下したにすぎなかった。

強化群(135/85未満を目標に降圧)と標準群(140–160/90–100を目標に降圧)を比較した7件のRCTをメタ解析した結果では、むしろ強化群での総死亡が増える傾向を示した。

日本のRCTでは、がん増、総死亡増加傾向

日本で実施されたプラセボ対照RCTは小規模なものが1件(JATE)だけだが、降圧剤群で循環器疾患は減らず、がんが有意に増加していた。また、標準群(140–149/90–95目標)と強化群(140/90未満目標)を比較したRCT(JATOS)では、強化群の総死亡が増える傾向があった。

大規模観察研究(JACC)では、130/80未満に降圧すると、循環器死亡は降圧剤を使っていないI度高血圧の人の2倍に増えていた。

実地臨床では

 降圧剤を使用しても循環器病死は減らず、がんや感染症など他の病気による死亡が多くなったのでは、全く意味がない。ストレスを減らし、運動不足なら適度な運動をし、十分な睡眠・休養を取るようにするなどして、自然に血圧が下がるのを待つことを提案する。

参考文献

1)薬のチェック2025: 25(122): 135-139.
2)同Web資料 https://medcheckjp.org/wp-content/uploads/2025/11/122topicweb.pdf
3)Zhang W et al (STEP). NEJM 2021;385(14):1268

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