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第56回 厚労省人事ウォッチング 新型コロナ対策を引っ張る江浪結核感染症課長

第56回 厚労省人事ウォッチング 新型コロナ対策を引っ張る江浪結核感染症課長
江浪 武志氏

 厚生労働省で新型コロナウイルス等の感染症対策を中心的に担うのが、健康局結核感染症課だ。医師免許を持つ医系技官が課長ポストを占めているが、その課長には2020年8月から江浪武志氏が就任している。2年近くに渡って新型コロナ対策を引っ張って来た江浪氏の知られざる評判とは————。

 先ずは、江浪氏の経歴を紹介したい。江浪氏は大阪大医学部を卒業し、旧厚生省に入省した。保険局医療課長補佐や健康局総務課長補佐、健康局結核感染症課長補佐等を務め、医系技官の登竜門とも言えるポストを歴任して来た。その後は、健康局健康課予防接種室長、大臣官房厚生科学課医療イノベーション企画官、健康局がん・疾病対策課長を経て、新型コロナの感染が収まらない20年8月に前任の日下英司氏に代わって結核感染症課長に就任した。

 若手時代には、スイスのジュネーブに在る世界保健機関(WHO)に派遣され、総務局資金調達部渉外医官として働いた経験が有る。WHOに勤務していた時代を振り返り、「ドナープロファイルの様式の標準化について取り組んだ」等と明らかにしている。地方自治体に派遣された事も有り、11年7月から2年間、青森県庁の健康福祉部長を務めた。

 感染症分野を中心に医系技官としてのエリートコースを歩む江浪氏。幹部クラスの或る医系技官は「江浪氏はとても優秀。将来を期待されている存在だ」と話す。仕事ぶりも堅実で評判も上々だ。ただ、話が長い事でも知られ、ある職員は「知的好奇心の強い後藤茂之厚労相と話し込み、大臣室で3時間も議論していた事も有った」と明かす。↘感染症の専門家から不織布マスクが推奨される迄は、家族が作ったという柄入りの布製マスクを愛用していた「家族想い」としても知られている。

 ただ、マスコミからの評判はいまいちな面も有るという。新型コロナの第5波で感染が激しかった21年8月、厚労省は病床を効率的に使用するという観点から、入院患者を重症患者や重症化リスクの高い人に絞り込んだ。この方針を記者向けブリーフィングで説明したのが江浪氏だった。当↖時、デルタ株のまん延で中等症患者が増えた時期で、記者の質問は中等症患者が入院出来るかどうかに集まった。厚労省の方針は「中等症Ⅱ」に分類される感染者は入院させるというものだったが、江浪氏はこの点をきちんと記者に説明せず、一部のマスコミは中等症患者が入院出来ないと誤認させる様な記事を書いた。

 記者側の取材不足も有ったが、この記者向けブリーフィングに参加した大手紙の記者の1人は「最初は中等症患者が一律で入院出来ないかの様な説明ぶりだったが、言い方を次第に変遷させ、結局、歯切れの良い説明が無かった。ブリーファーとして江浪氏は不適格だったと言える」と話す。別の大手紙記者は「雑談レベルの話でも頭が良過ぎるのか何を言っているのか分からない事が有る」とぼやく。

 毀誉褒貶が有るものの、人材不足気味の医系技官の中で江浪氏に代わる人材が居ないのも実情だ。新型コロナ対策については、引き続き江浪氏の手腕に期待せざるを得ないのは幸か不幸か。

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