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未来の会

集中OPINION 平和と健康を享受する社会見据え「頂点」から愛用者の裾野広げる

集中OPINION 平和と健康を享受する社会見据え「頂点」から愛用者の裾野広げる
廣田 康人(ひろた・やすひと)1956年愛知県生まれ。80年早稲田大政治経済学部卒業後、三菱商事入社。2001年同本社広報部長、10年執行役員・総務部長、14年代表取締役常務執行役員コーポレート担当役員を経て17年関西支社長。18年アシックス入社。顧問を経て同年3月代表取締役社長COO。22年3月より現職。

新型コロナウイルスの感染拡大で、東京オリンピックが延期される等、多くのスポーツイベントが中止、延期され、スポーツを楽しむ機会も減ってしまった。そうした状況の中、1人でも気軽に出来るスポーツとして、ウォーキングやランニングを始める人も増えているという。それを裏付けるように、スポーツ用品メーカーのアシックスは2021年度の売上高が4期振りに4000億円を超えた。新型コロナ禍の沈静化と健康志向の高まりで、今後も好調な業績が期待されるアシックス。三菱商事から華麗な転職を果たした廣田康人氏に、人気の主力商品や経営戦略、将来の展望について聞いた。


——コロナ禍では、数多くのスポーツイベントが中止や延期になりました。経営面でどの様な影響が有りましたか。

廣田 コロナによる自粛も2年3カ月位になりますが、やはり影響は有りました。しかし、人々の間では健康志向が高まっています。密にならない、気軽に出来るという事で、走ったり歩いたりする人が増えて来ました。こうした機運の高まりは世界的な傾向で、我々にとって追い風になっているとも言えます。2021年の連結決算では、4期振りに売上高が4000億円を超えました。健康志向の高まりで売り上げが伸びた事は、アシックスの商品が多くの方から信用を頂いているという事でもあると思います。

——事業ではランニングに注力されていますが、海外勢との競争の中で、どのような戦略を描いているのでしょうか。

廣田 世界のスポーツブランドの中で言えば、1位がナイキで、2位がアディダス。我々はランニングシューズの分野で、世界各地のナンバーワンとなることを目標に掲げています。海外、特にヨーロッパで大体35%位、オーストラリアだと40%超のシェアを持っています。日本は12〜13%ですが、日本では海外ブランドが強い。伸び代が有るという意味では、今後が楽しみなビジネスとも言えます。

——アジアではどうですか。

廣田 インドやインドネシアでも健康志向が高まっています。経済が発展し国民の所得水準が上がると、健康に目が向くようになりスポーツ専用シューズの需要も高まります。アジアはそうした国が増えて来て楽しみな市場です。特に中国を見ると凄いですね。我々は中国では後発でシェアは4%位しかない。スポーツファッションブランドの「オニツカタイガー」はシェアも高いのですが、スポーツブランドとしてのアシックスはまだまだ弱い。しかし、多くの人口を抱える中国の健康志向が高まっていますから、市場を開拓する余地はまだまだ有ると思います。

頂上を目指す事で、一般への普及を図る

——「厚底シューズ」が画期的なシューズとして陸上界を席巻しています。アシックスもMETA SPEEDというシューズを開発しましたね。

廣田 厚底シューズはナイキの牙城で、そこに食い込みたいという事で開発に取り組みました。昔は軽量化を図る為に靴底は薄くしていましたが、今は軽い素材が出来て、厚底シューズでも重さは片足200g程度です。それと、靴の底にカーボンが入っていて、強い反発力を得る事が出来る。東京オリンピックではトライアスロンの男女共、アシックスのシューズを履いた選手が金メダルを取り、シューズへの手応えを感じています。そうしたトップアスリート向けのシューズの開発を「Cプロジェクト」と呼んでいます。「C」とは「頂上」をローマ字で書く時の頭文字で「頂上プロジェクト」。オリンピックで金メダルを取った様に、先ず世界大会で頂上に立ち、一般ユーザー向けの商品でシェアを高めて行く事が基本的な戦略です。これを世界で展開しています。開発には製造部門だけで無く、研究所や知的財産・特許部門、デザイン部門、マーケティング部門と全社から若い精鋭社員が集まり、1つのチームとなり作り上げてくれました。

——デジタル技術の分野にも積極的に取り組んでいますが、どの様な狙いが有るのでしょう。

廣田 デジタルとスポーツは非常に相性が良いです。ランニングをする人の大抵はスマホやランニングウォッチ等でタイムやスピードを計っています。そして、測定した数値を基に、次にどの様なトレーニングをすべきか考える。こうしたデジタルとスポーツの相性の良さを広げて行きたいと思っています。今、「OneASICS」というメンバーシッププログラムを展開しています。アシックスのシューズやアパレルのファンを増やす為のプログラムで、アシックスの新製品をアピールしたり、「ASICS Runkeeper」を使えば最適なトレーニングアドバイスを受けられる事を紹介したり、住んでいる場所の近所で開催されるレースをレコメンドしたりしています。会員になる事で、トレーニング方法を含め、ランナーに必要な情報にアクセスできます。サービスや情報を提供する事で我々の商品の付加価値を高めたいと考えています。

——デジタル事業の拠点は何処に置いているのですか。

廣田 本拠地は米国のボストンです。アシックスデジタルの本社が在り、そこで全世界のデジタル戦略を主導しています。先ずは米国でデジタルのシステムを導入し、全世界に展開する方針で進めています。日本人スタッフも含めて社員は150人位でしょうか。IT人材の確保は重要で優秀な人材は取り合いです。日本国内ではなかなかIT人材を確保出来ない。ボストンには多くのIT人材がいてスポーツ人口も多い。ちなみに社内システムのITインフラの本拠地はオランダのアムステルダムに在ります。オランダもIT人材が豊富で、公用語はオランダ語ですが普通に英語が使われています。

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