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第120回 改造内閣から読み取る「ポスト安倍」の行方

第120回 改造内閣から読み取る「ポスト安倍」の行方

 第4次安倍改造内閣がスタートした。片山さつき・地方創生担当相など初入閣組は12人に上るが、平均年齢が高い上、女性閣僚も1人だけ。清新さはなく、改造の是非を問う世論調査では「不支持」が「支持」を上回った。陳腐な顔ぶれになったのは、自民党総裁選の論功行賞を優先したためだ。派閥への配慮を色濃くした今回の布陣は、安倍政権の「変質」と受け止められている。この変化は次期総裁選にどう影響するのか。有力候補の周辺では「ポスト安倍」に向けた戦略の再構築を始めている。

 「石破派から山下貴司・法務政務官を法相で入閣させた辺り、憎いと思うよ。法相は重要ポストだからね。特捜の指揮権だってあるんだから。そこに石破派だからな。昔なら考えられんよ」

 国民にとっては何らインパクトのない改造内閣の顔ぶれを眺めながら、自民党幹部は上機嫌だった。

 「メディアは、派閥均衡人事だとか、何かと悪口を言うが、本来、自民党は派閥というか政策グループが切磋琢磨することで安定を保ってきたんだ。安倍政権は『安倍一強』で、トップダウン型と言われてきたが、憲法改正など難しい問題に党を挙げて取り組む姿勢を示したんだと思うね」

 法曹出身とは言え、当選3回の山下法務政務官の法相抜擢は確かに異例だ。総裁選での石破茂・元幹事長の善戦に配慮せざるを得なかったとの見方が多いが、実は石破派に事前の打診はなく、安倍首相側のいわゆる「一本釣り」だったとされる。山下法相は東京大学から米コロンビア大学ロースクールに留学している。コロンビア大と言えば、総裁選の終盤になって石破元幹事長を支持した小泉進次郎・前筆頭副幹事長の留学先でもあり、「文部科学相に起用された柴山昌彦・前筆頭副幹事長兼総裁特別補佐と合わせて進次郎への当て付けじゃないの」とのうがった解説まである。

「一強型」の次は「最大公約数」?

 その辺の事情も承知のはずの自民党幹部が今回の派閥均衡型の改造に期待を膨らませているのは、「ポスト安倍」を見据えているからだ。この幹部は、次期総裁選で岸田文雄・政調会長を推す腹づもりだ。能吏タイプの岸田政調会長は、小泉前筆頭副幹事長や石破元幹事長のような際立つ個性を持ち合わせていない。一般国民の意向に近いとされる党員票での圧勝は望めず、派閥連携で、国会議員票の大半を抑えることが勝利の大前提になるとみられている。

 「安倍さんは、今回の総裁選では広く派閥の推薦を受ける派閥支持型で臨んだ。フリーハンドだった過去2回の総裁選とは全く異なる手法だった。派閥均衡の改造もその延長線にある。マスコミは指摘しないが、安倍さんは政権運営のスタイルを変えつつあるんだと思うよ。これが本流となれば、党内の最大公約数たり得る候補が次期総裁選の最有力ということになる。最も党内がまとまりやすい人間が誰なのか、言わずもがなだな」

 岸田政調会長は保守本流を継承する名門派閥「宏池会」の領袖だ。冷静で人格円満なのだが、その分、「戦闘力、指導力に欠ける」との指摘も付きまとう。今回の総裁選でも唐突な記者会見で「出馬断念」を明らかにし、一部から「戦わない男に総裁は無理」と酷評された。

 だが、石破元幹事長が善戦した総裁選を機に、総裁・首相像を巡る党内世論に微妙な変化が出てきたらしい。

 中堅議員が語る。

 「反面教師は米国のトランプ大統領だね。目立つし、何でもポンポン自分で決めちゃう。メディアを無視して、ツイッターで国政の大事を気ままに発信しちゃうし。まさにSNS(ソーシャル・ネットワーク・システム)時代を象徴するようなリーダーなんだけど、それが本当にいいのかと。政治家はお笑い芸人じゃないから、受けることが目的じゃない。地味だけど、合意形成を大事にする実直なタイプを再評価してもいいんじゃないかという機運が生まれている」

 もちろん、優れた政策であろうとも、国民に関心を持ってもらわなければ、宝の持ち腐れだ。その意味で、国民受けすることも政治リーダーの資質の一つであることは間違いない。自民党の合意形成だけで事が進められれば、国民不在とのそしりは免れないだろう。

 自民党長老がその辺も踏まえてこんなことを言っている。

 「安倍さんが首相に返り咲いた頃、日本は東日本大震災などで混乱の極みだった。合意形成よりも、強力なメッセージを持った指導力が問われた。今はどうかというと、朝鮮半島を巡る歴史的転換点ではあるが、『乱世』ではない。少子高齢化、人口減少という静かな脅威にしっかり向き合う沈着冷静な政治が必要かもしれない。『華のない内閣改造』などと言われているが、安倍さんもその辺を意識したんじゃないか。その文脈で言えば、次期首相の資質も変わって来るのかもしれないな」

携帯料金値下げ発言で〝菅株〟上昇中

 別の見方もある。派閥支持型のような閉じこもったスタイルではなく、広く国民に開かれた形で総裁、首相を選ぶべきだとの意見だ。この場合、有力候補の一人として急浮上しているのが菅義偉・官房長官だ。毎日の定例記者会見で茶の間の顔なじみではあるが、どこか得体の知れない「オヤジ感」が漂っており、国民受けするタイプとは言い難い。ところが、最近は国民の不満が募っている携帯電話料金の大幅な値下げなど、人口に膾炙する政策を表に出すようになった。携帯料金値下げは、総裁選での安倍首相の援護射撃だったとみられているが、「あのNHKのニュースによく出ているオジサン、良いこと言ってるじゃん」と若い世代の評判も上々という。

 菅長官は元々の安倍首相側近ではない。第2次安倍政権後に女房役として台頭した経緯がある。かつて安倍首相から「(総裁を目指すなら)派閥を作ったら」とからかわれたことがあるが、無派閥を通している。側近からも「もういい年なんだから、上を目指すならきちんと準備するべきだ」と背中を押されたが、これまで目立った動きは控えてきた。第1次安倍政権時代からの側近のやっかみを警戒したためとされる。しかし、安倍政権の「お尻」が決まった以上、女房役卒業後の進路を考えないはずはない。党内には「携帯電話は次期総裁を意識したアクション」と受け止める向きもあり、今後の動向が注目されている。

 もう一つ気になるのは、石破元幹事長と小泉前筆頭副幹事長、さらには「安倍一強」に反旗を翻した参院竹下派の動きだ。指南役は、参院のドンと呼ばれた青木幹雄・元参院議員会長だ。「まずは、小泉人気の高い若手議員らを水面下でまとめる気じゃないか」と派閥幹部らは警戒している。今のところ、顕著な動きはないが、安倍首相の政権運営が滞れば、その存在がクローズアップされるのは確実だろう。

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