去る2月27日、サントリーホール大ホールにおいて『集中』創刊10周年記念式典が開催された。この日は、10周年を機に創設された「集中医療大賞2018」と「癒しと安らぎの環境賞」の紹介、その第1回の贈呈式も併せて行われた。また、記念企画として「癒しと安らぎの環境コンサート」と題されたテノール歌手・佐野成宏氏によるコンサートが大ホールにおいて催された。
サントリーホールには開場前から多くの関係者、観客が詰め掛けていた。目当ては式典とともに、記念特別演奏会でもある。テノールの佐野成宏氏、ソプラノの北野智子さんが出演するとあり、彼らのファンもたくさんいるようだった。コンサートでは童謡から歌曲までが披露され、素晴らしい歌と演奏に惜しみない拍手が送られた。
コンサート終了後、関係者はANAインターコンチネンタルホテル東京の「プロミネンス」に設けられた会場に移動。そこでの受賞式、そして懇親会に出席し、二つの賞の受賞者達を祝福していた。
サントリーホールでは、まず、発起人代表として前日本医学会会長の髙久史麿氏からお祝いの言葉をいただいた。
「月日の経つのは早いものです。創刊当時からお付き合いのある『集中』ですが、創刊当時の自分達の写真を見ながら、多くの年月が流れたのに、あっと言う間だった気がしています。そして、もう10年も経ったのかと感慨深いものがあります。今も『集中』は毎号、読ませていただき、勉強させていただいています」
続けて、集中出版代表の尾尻佳津典から挨拶がある。
「2007年4月に『集中』を立ち上げました。この10年間、ひたすら走り続けてきましたが、医療界に多くの人脈を得ることができ、これが出版社にとっては大きな財産となっています。医学界は日進月歩で技術革新が行われ、さらにそのスピードは加速しています。そんな時代に情報はとても重要な役割を果たすことになるでしょう。私達は、それらの財産を手に、次の10年に向けて歩き出そうとしています。また、出版社としての社会貢献も果たしていきたいと考えています。選択と集中、継続は力なり。この言葉を胸に今後も努力を続けてまいります」
この後、ステージ上にて「集中医療大賞2018」受賞者と「癒しと安らぎの環境賞」受賞者の紹介が行われた。
「集中医療大賞2018」は、日本赤十字社足利赤十字病院院長・小松本悟氏、医薬品医療機器総合機構理事長・近藤達也氏、前日本医学会会長・髙久史麿氏、地域医療振興協会理事長・吉新通康氏、特別賞の衆議院議員・原田義昭氏。なお、日本医師会会長の横倉義武氏は所用のため欠席であった。
「癒しと安らぎの環境賞」は、北原国際病院、タカハシクリニック、練馬キングス・ガーデン。なお、千葉みなとリハビリテーション病院と総合病院土浦協同病院は欠席された。
その後、いよいよコンサートが行われたのだが、既に会場は熱気に包まれていた。
小松本 悟
日本赤十字社足利赤十字病院院長。強いリーダーシップを発揮し、多くの難題を乗り越え、新病院の建設と移転を成し遂げ、医療を通じて多大な貢献をされたことを顕彰。「素晴らしい賞をいただき、大変光栄ですし、職員一同、誇りに思っております。足利赤十字病院は郊外に全面移転したのですが、この病院には五つの特徴を持たせました。機能性重視の病院建築、全室個室による快適性の実現、自然に優しい病院、免震構造を備えた災害に強い病院、地域に開かれた病院の5点です。今後は、さらに病院を中心にした都市作りができると考えています」
近藤達也
独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事長。「より有効で、より安全で、より早く」を掲げ、課題だった審査期間を改善し世界最短を成し遂げた。さらには、医療水準の向上と患者満足度の向上を果たし、医療を通じて多大な社会貢献をされたことを顕彰。「このたび医療大賞を受賞する栄誉を授かり心から感謝申し上げます。それも多くの立派な先生方とともに受賞ということで、感激もひとしおです。これは私個人に対してではなく、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のこの10年にわたる業績を背景に頂いた賞であると考えています。ですから、PMDAのスタッフ一同とともに喜び、そして感謝している次第です」
高久史麿
日本医学会前会長。日本医学会会長として、また自治医科大学学長として長きにわたりその重責を担い、医療を通じて多大な社会貢献を果たしたことを顕彰。「10周年企画の発起人に名を連ねていながら受賞するのは面はゆいのですが、この賞は日本医学会そのものへの評価だと考え、ありがたく頂くことにしました。常に正論を載せる『集中』は毎号、興味深く読ませていただいています。その意見からは学ぶことが多く、最新の知識にも触れられ、とても意義ある雑誌だと思っています。その雑誌による賞ですから、今後さらに医療による社会貢献を果たすつもりでいます」
横倉義武
公益社団法人日本医師会会長・世界医師会会長。日本医師会会長として世界医師会会長に推挙されたことは快挙であり、日本の医療界にとっても大きな名誉であった。日本医師会会長として医療界全体を牽引し続け、様々な問題解決に当たり、医療を通じて社会への大きな貢献を果たしたことを顕彰。
「医療というのは、国民にとっては不可欠のライフラインであり、医療のないところに人は住むことができません。そのような我が国の医療を向上させるため日々ご尽力いただいている月刊誌『集中』から、このたび髙久史麿・前日本医学会会長とともに集中医療大賞にご選出していただいたことは誠に光栄であり、深く感謝申し上げます」
𠮷新通康
公益社団法人地域医療振興協会理事長。へき地医療を支えるための団体「地域医療振興協会」を自ら設立し、長きにわたりへき地医療・地域医療の確保と質の向上に努め、それら医療を通じて多大な社会貢献をされたことを顕彰。
「このような難しい雑誌(笑)から賞をもらったことに、まず驚きました。素直にありがたいと感じています。へき地に関しては国が対策を講じていますが、私達は、そのシステムに『魂』を入れることを続けてきたつもりです。そのことを評価されたのが嬉しいですね。各地を回っていますと、まだまだ地域の住民は外からやって来る医療に対して厳しい目を向けていると感じます。地域とともに生活することで、もっとプライマリーケアとして浸透させていかなくてはなりません。この受賞がそのための契機となってくれるといいですね」
原田義昭
衆議院議員。「日本の医療と医薬品等の未来を考える会」の設立発起人であり、国会議員団会長として当会を牽引し、医療の問題点などを自由闊達に議論してきた。また、当会の声を国政に届け、政治を通じて多大な社会貢献を果たしたことを顕彰。
「医療に関する賞ということで場違いな気はしましたが、特別賞ということで厳かに受けさせていただきました。医療、福祉、介護などは政治と表裏一体の関係です。ですから、医療分野に関わる諸問題は、私達政治家が考えなくてはならない仕事なのです。そして政策や予算と結び付いていくことで、より具体的に問題が解決されていくでしょう。この賞を励みに、今後もその一端を担い続けていくつもりです」
医療法人社団KNI
北原国際病院
北原茂実理事長の「病院ではなく『ヒーリングファシリティ(癒しの場)』であるべき」という考え方に基づき、様々な工夫がなされている。また、北原理事長は「医療はアート」との考えから、自らデザインをし、調度品を選び、心が癒される環境作りを行ってきた。院内の随所に患者の緊張や不安を和らげる工夫が凝らされ、心配りの行き届いた院内環境を作り上げている。そうした活動に対しての顕彰。なお、表彰式にはリハビリテーション科で言語聴覚士を務める平井亜紀子さんが出席してくださった。
「医療法人KNIは癒しを重視した医療を提供することを目指しておりますので、この賞を一同大変喜んでいます。今後は病院の周囲に果樹園、牧場などを持つ農場ができる予定で、入院患者さんだけでなく、多くの人が集まり、健康になる空間を目指しています」(平井亜紀子さん)
医療法人社団こころの会グループ
タカハシクリニック
こころの会グループは「地域に根差した心のケア」を目的として、東京・城南地区(港区、品川区、大田区)と神奈川・川崎市に五つのクリニックを展開している。その中核となるのが、蒲田駅近くのタカハシクリニック。ここでは、様々なプログラムを取り入れ、治療効果を上げるために高橋龍太郎理事長が個人所有する現代アートの「高橋コレクション」を院内に配し、患者の心を癒す環境を作り上げている。その活動をここに顕彰する。なお、表彰式にはこころの会法人本部事務局長の鎌田志郎氏が出席してくださった。
「私達は患者さんの地域社会における生活支援のため、デイケアやリワークプログラムにも取り組んでいます。また、院内のアート作品も患者さん達の癒しと安らぎに貢献しているのだろうと思います」(鎌田志郎氏)
社会福祉法人キングス・ガーデン東京
練馬キングス・ガーデン
特別養護老人ホームをはじめ、デイサービスセンターや、ショートステイなどの介護サービスを提供している。入所する前には元気のなかった高齢者が、ここで元気になる例も多く、取り組みの正しさが証明されている。「楽しみと喜び」をもって生活ができる場を目指し、介護を通じて入所者の満足度を高めるために様々な院内デザインを変更。特に、一人ひとりがゆっくりと楽しめるようにと、お風呂を「個浴」とし、「青森ヒバ」の木製家庭浴槽を導入するなど、より良い環境作りに取り組んでいる。これらの活動を顕彰する。
「光の当たることが少ない分野ですから、今回の受賞は、職員一同本当に嬉しく思っています。練馬キングス・ガーデンにはエデンの園という中庭があり、入居者様やご家族はそこで慰められるようです。まさに『癒しと安らぎ』の空間になっているのかもしれません」(中島秀一氏/練馬キングス・ガーデン理事長)
一般社団法人巨樹の会
千葉みなとリハビリテーション病院
脳卒中や骨折など生活機能が低下した急性期後の患者に対して集中的に訓練を行う回復期リハビリテーション病院。在宅復帰率92.2%を誇るその病院運営は、単にリハビリの的確さだけではなく、「癒しと安らぎ」の提供も伴っているからだろう。広い空間、カラフルな色調、新鮮な空気の環境下で訓練を行う屋上ガーデンなど、患者が気持ち良くリハビリテーションを継続できる院内環境を作り上げた。また、職員寮を院内の複数階に設置し、医療従事者にも配慮し、働きやすい環境作りにも取り組んでいる。こうした活動を顕彰する。
茨城県厚生農業協同組合連合会
総合病院土浦協同病院
開院70年を誇り、茨城県南部の地域医療を担ってきた。医療と地域の融合をコンセプトに、藤原秀臣名誉院長の造語「メディカル・エコタウン」を掲げ、敷地内に市民も散策できるリハビリパークを作ったり、大型ギャラリーや屋上庭園なども設け、市民の交流の場としても機能している。ちなみに、「エコ」には「エコノミー(経済)」「エコロジー(環境)」、そして「エコー(共鳴)」の意味が込められている。救急医療や高度先進医療、特殊専門医療を充実させる一方、小児医療センターではキャラクターイラストをふんだんに使い、子供らが安らげる療養環境を整える工夫もしている。今回、そのような活動を顕彰する。