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第100回 厚労省人事ウォッチング
社会保障制度理解のカギを握る数理職

第100回 厚労省人事ウォッチング社会保障制度理解のカギを握る数理職
数理課長時代の武藤憲真氏(厚労省資料より)

5年毎に実施される公的年金制度の財政検証では、年金数理に基付いて長期的な年金財政の健全性がチェックされる。この重要な検証を実務面で担うのが、年金局に配属される数理職だ。数理職は年金の財政検証だけでなく、最低賃金や生活保護の見直しでも基礎資料の作成等で大事な任務をこなしている。厚生労働行政を支える数理職の実態とは。

 数理職は、論理的な思考力やプログラミング、システムの要件定義等、数理的な素養を生かし、年金や医療保険、介護保険、労働分野に於ける企画立案や現状把握の為の統計作成・分析、将来推計等に携わる。国家公務員採用総合職試験で「数理科学・物理・地球科学」もしくは「デジタル」区分で受験する必要が有る。毎年5人前後を採用し、厚労省では約100人の数理職が勤務している。

 東大など旧帝国大や早慶など有名私大の数学科を卒業した職員が多い。数理職は総務省統計局にも採用枠が有るものの1人のみ。厚労省の数理職は数学科の卒業生の就職先として割と知られた存在の様だ。

 只、数理職として採用されるのは数学科を卒業した学生だけでなく、工学部系出身者もいる。厚労省が入省8年目までの数理職の学生時の専攻を調べたところ、数理科学系が半数を占めるものの、物理・地球科学系も3割を占め、情報系は1割以上いたという。

 配属先として重要なのは年金局数理課だが、それ以外も幅広い。例えば、毎年の最低賃金改定に携わる労働基準局賃金課や生活保護制度を見直す社会・援護局保護課の他、保険局調査課や医政局地域医療計画課医師確保等地域医療対策室、政策統括官室等、多岐に亘る。数理職と同じ課で働いた事が有る職員は「真面目な人が多い印象。統計等の作業では頼りになる存在だ」と語る。

 数理課が採用も担当し、現在の課長は1998年入省の鈴木健二氏だ。財政検証毎に交代するのが通例の為、鈴木氏は次回の財政検証を担う。課長ポストは数理課長や調査課長の他、年金局主席年金数理官と政策統括官室統計管理官が有る。年金局総務課年金数理官や年金局数理調整管理官等、企画官級のポストも有り、特に数理調整管理官は、数理課長を補佐する重要な役職だ。只、職員数に比べて省内のポストが少ない為、日本年金機構や企業年金連合会、年金積立金管理運用独立行政法人等へ出向する場合も有る。

 中には年金担当の大臣官房審議官に登り詰める数理職もいる。その一人が今夏に退官した武藤憲真氏だ。東京大工学部を卒業した武藤氏は90年に旧厚生省に入省。数理調整管理官や数理課長、総合政策統括担当参事官等を歴任し、数理職としては山崎伸彦氏以来、9年振りとなる年金担当の大臣官房審議官を務めた。

 元年金局幹部は「数理職は年金か医療かどちらか詳しい人に分かれるが、武藤氏は年金に精通した傑出した存在だった。マクロ経済スライドの調整期間の一致といった数理的な説明が求められる重要な改正を控えていた為、武藤氏が大臣官房審議官に抜擢されたのだろう。その時々の事情に応じて、事務官からポストを割り振ることが有る」と明かす。

 数理職は「政治家や国民、マスコミ等に難しい事を分かり易く伝える能力が求められる」(数理職OB)。作成した資料の出来が社会保障制度への理解を左右し兼ねない重要な職種でもある。

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