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未来の会

第60回「精神医療ダークサイド」最新事情
ヤバイ成分入り市販薬が今も流通

第60回「精神医療ダークサイド」最新事情ヤバイ成分入り市販薬が今も流通
若い女性の苦悩を知る対策を

もう10年くらい前になるが、風邪薬などの市販薬に覚醒剤に近い成分が入っていることを新聞社のウェブ連載で伝えた。すると当該製品を販売する製薬会社が説明を求めてきた。

まだ新聞社が健全な時代だったので、スポンサーの圧力などどこ吹く風で「ウソは書いていない」と突っぱねた。あれからずいぶん経つのに市販薬メーカーは「ヤバイ」成分を使い続け、10代や20代の女性が多くを占める市販薬オーバードーズが大変な問題になっている。

厚生労働省は昨年、薬機法改正を行い、今年5月から市販薬の乱用対策を強化する。薬局などでの「指定濫用防止医薬品」(指定6成分を含む市販薬)の複数あるいは大容量の製品販売は、18歳未満に対しては禁止(小容量1個のみ)になる。また成人の複数購入者に対しても、店側が他の店舗での購入状況や氏名などを確認することが義務化される。相変わらず「規制」しか能がないようだが、市販薬をもっと使わせたい厚労省としては乱用対策も考えているフリをしないと格好がつかないのだろう。

6つの指定成分と、これを含む市販薬の一部を列記しておく。

①エフェドリン(市販薬なし)、②メチルエフェドリン(ルルアタックCX、エスエスブロン錠、エスタックEXネオ)、③プソイドエフェドリン(パブロンエースPro-X、ベンザブロックL、新コンタック600プラスs)、④ブロモバレリル尿素(ナロンエースT、ウット)、⑤コデイン(アネトンせき止め錠)、⑥ジヒドロコデイン(エスエスブロン錠、ベンザブロックせき止め錠、パブロンゴールドA)

 メチルエフェドリンやプソイドエフェドリンは含有量が10%を超えると覚醒剤取締法における覚醒剤原料として違法になる。市販薬は成分が薄まっているとはいえ、服薬頻度が増えると体質によっては統合失調症のような幻覚や妄想が一過性に表れることが指摘されている。

アヘン関連のコデイン、ジヒドロコデインも薄めると合法の「家庭麻薬」になるが、多幸感などが生じて依存につながりやすい。急に止めると離脱症状が強く出る恐れもある。またブロモバレリル尿素は依存性が強く安全性が低いため、欧米では医薬品として販売できない。

一般人の多くは、市販薬は処方薬よりも効きが「弱め」と考え気軽に服用する。そこに少量とはいえ、覚醒剤やアヘンの仲間、あるいは医者が使わなくなった危険な成分が含まれているとは考えもしない。

「薬ではなくオーバードーズするヤツが悪い」と語る自己責任論者もいるが、女性たちは好きで使っているのではない。つらくてたまらないから飲むのだ。

国立精神・神経医療研究センター薬物依存研究部部長の松本俊彦さんはこう指摘する。

「市販薬を使う10代の女性たちはハイになりたいのではなく、マイナスの感情をゼロに近づけるために使っているように見えます。以前はリストカットを繰り返し、それを止める代わりに市販薬のオーバードーズを始める。そのようなケースが少なくありません」

若い女性がこんなにも生きづらいのはなぜなのか。松本さんの最新の調査では、10代の薬物乱用・依存患者は10年前の5・2倍に達し、その7割強が主に市販薬を乱用していたという。市販薬の乱用対策は彼女たちの苦悩と向き合うことから始めるべきだ。

松本さんの講演(2025年12月筆者撮影)

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