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参院選の大惨敗で自公政権の終焉近付く?

参院選の大惨敗で自公政権の終焉近付く?
争点を間違えた首相に国民や党内からもノーの声

第27回参院選は7月20日に投開票された自民、公明両党は、目標に掲げた非改選を含めた参院の過半数を維持出来ず大惨敗を喫した。一方、野党は明暗が分かれた。立憲民主党の議席は横這いで、国民民主党と参政党は大きく議席を伸ばした。与党大敗の要因を探る。

 先ずは議席数を振り返ろう。自民党が今回改選する議席は52議席だったが、獲得出来たのは39議席だけだった。13議席失った計算だ。公明党は14議席から8議席に減った。自民党の39議席というのは1989年の宇野宗佑首相(当時)の36議席、2007年の安倍晋三首相(当時)の37議席に次ぐ、過去3番目の低さだ。公明党の8議席に至っては07年の参院選等の9議席を下回る過去最低を記録した。

 石破茂首相は20日夜のテレビ番組で、「比較第1党の議席数を頂戴している」とした上で、物価対策や外交・安全保障政策等を挙げて、「国家に対して責任を果たしていかなければならない」と述べ、続投を表明した。記事執筆時点(7月24日)で、党内からの反発を受けながらも首相は退陣していない。

 参院選の勝敗を左右する、改選定数1の「1人区」で負け越したのが大きい。東北の福島選挙区は自民党の森雅子元法務大臣が競り勝ったが、青森、岩手、宮城は立憲民主党が議席を勝ち取った。秋田、山形も野党系無所属の勝利だ。前回22年の参院選で全勝した四国は全敗にひっくり返った。特に香川は、自民党の三宅伸吾元防衛大臣政務官が3選を果たせず、国民民主の候補に敗れた。その他、富山や和歌山、宮崎、鹿児島等保守勢力が強い選挙区でも取りこぼし、1人区は14勝18敗と負け越したのが響いた。

 改選定数2以上の「複数区」でも取りこぼしが目立った。北海道は何とか2議席を確保したものの、東京は武見敬三前厚生労働大臣が落選し、1議席のみ。千葉も同様で、大阪に至っては議席を確保出来ず、自民党の凋落ぶりが鮮明になった。

 比例代表の得票数は1280万8306票で、前回の約1825万票から545万票減らした。少数与党に転落した24年衆院選の1458万票からも180万票近く減らし、党勢の衰退に歯止めが掛からない。12議席の獲得は過去最低タイ。日本医師会副会長の釜萢敏氏は8位(17万4434票)、看護師の石田昌宏元参院厚労委員長は10位(15万2649票)、薬剤師の本田顕子元文部科学大臣政務官は11位(15万2518票)で辛くも当選した。

 公明党は複数区で国民民主党や参政党の候補者に競り負けたのが響いた。東京や大阪、兵庫、福岡で議席を死守したものの、埼玉、神奈川、愛知で落選した。比例代表では521万569票しか得られず、4議席に後退した。過去最低は6議席の為、大幅に減らした印象は否めない。得票数も前回の約618万票から97万票減らした。自公の得票率は前回の46%から30%に激減し、1983年の比例代表制導入以降で最低だという。自公にとって「最低」尽くしの参院選だったと言える。

国民民主党と参政党が躍進

 野党第1党の座を確保した立憲民主党も穏やかではない。北東北3県に加え、新潟、長野、三重、大分、宮崎の1人区で競り勝ったものの、福島や栃木、佐賀で競り負けた。複数区でも東京は1議席だけで、茨城や福岡、大阪で落選する等、今一つ伸び切れない要因となった。比例代表の得票数は739万7456票で、国民民主党(762万492票)と参政党(742万5053票)の後塵を拝した。昨年の衆院選が1156万票だったのと比べると物足り無さは否めない。

 一方で、国民民主党と参政党は与党に対する批判票の受け皿となり、議席数を大きく伸ばした。何れも保守的な主張を掲げ、都市部を中心に支持を集めた。国民民主党は1人区で議席を獲得。富山・香川に加え、山梨で勝った。複数区でも神奈川や愛知で議席を獲得し、東京では2議席を得た。比例代表の得票数は前回が316万票だっただけに、倍増した形となった。参院選最終盤の19日に開かれたJR新橋駅前の街頭演説には多くの支持者が集まり、SL前広場が埋め尽くされ、昨年の衆院選からの「ブーム」が続いている事を印象付けた。

 この参院選で最も伸びたのが参政党だ。1人区での議席獲得はならなかったものの、東京では自民党の鈴木大地氏(77万2272票)に次ぐ、2番目で当選。得票数も66万8568票まで伸ばした。この他、茨城、埼玉、神奈川、愛知、大阪、福岡と都市部を中心に複数区では着実に議席を確保した。比例代表でも立憲民主党を上回り、野党では2番目に着けた。インターネットでの露出を増やした戦略が功を奏した格好だ。この他、少数政党で議席の伸び縮みは有ったものの、ここでは割愛する。

物価高対策を求める国民よりも財務省重視?

自民党が敗北した要因は一目瞭然だ。首相が争点の設定を間違った点に有る。国民の多くが求めていたのが物価高対策だった。野党は消費税減税等を訴え掛けたが、首相は国民1人当たり2万〜4万円の給付を対策の柱とした。政府・与党は、家計調査を基に計算すると食費に掛かる1年間の消費税負担額が1人当たり2万円程度と一定の根拠らしき試算を示した。だが、元々、4月に給付金を1度検討した上で実施を見送っているのに、消費税ではなく給付金を選択した為、整合性の点から批判を浴びた。頑なに消費減税を選ばない点も、国民生活よりも財政健全化を重視している様に映った。政策に柔軟性を欠き、一部の国民から「ザイム真理教」等と批判されている、財務省の影がちらついた。

 通常国会でも、衆院で少数与党ながら今年度の当初予算や年金改革法案等、野党の協力を得ながら何とか乗り切った。だが年収の壁の引き上げは、国民民主党が求める178万円には程遠く、年金改正法案もマクロ経済スライドの調整期間の一致が削除される等、中身は骨抜きで内容に乏しい。自民党内は「参院選で訴える内容が無い」との嘆きで溢れ、徒手空拳の戦いを余儀無くされた。

トランプ米政権との関税交渉も間に合わず
参院選の結果に厳しい表情の石破首相

 政権が全力で取り組んだトランプ米政権との関税交渉は期限が7月9日から8月1日に延期され、相互関税は15%で双方合意に達したものの、発表されたのは7月23日と、参院選後だった。詳細は明らかになっていないが、政権として数少ない「成果」の1つと言えそうな材料さえ選挙期間中に間に合わなかった。国民だけでなく、党内からも不人気だった首相。選挙区で競り勝った自民党の陣営関係者は「選挙戦の終盤は、石破首相の応援演説をどうやって断ろうか必死だった。首相が応援演説に入れば票が減るだけだから」と明かした。神戸市内で行った第1声も、動員を掛けたものの数百人しか集まらず、「会場のキャパの割にスカスカだった」(政治部記者)という有り様だ。公明党に至っては組織の高齢化が著しく、運動量が落ちているのは明白だ。給付一辺倒の自民党とは距離を置き、消費減税に含みを持たせたが、党内の若い国会議員は弁護士や証券会社幹部等エリートばかり。弱者に寄り添う公明党の姿とは程遠く、今後も厳しい戦いが予想される。

 与党で47議席というのは自民党が前回大勝した参院選で野党が獲得した数字に近い。国民からはノーを突き付けられた様な形の首相だが、続投の意向を示している。政党支持率では自民党は20・4%、公明党に至っては4・0%だ。自公政権の終焉が近付いているのは間違い無い。

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