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心を癒やし「人」を中心に据えた医療を
261 HITO病院(愛媛県四国中央市)
製紙会社が多く「紙のまち」で知られる四国中央市に、19床の石川外科医院が開院したのは1976年。その後、診療科を増やしながら規模を拡大し、2009年からは中核病院として、地域住民の医療を担ってきた。又、高齢者が治療後も住み慣れたこの地域で自分らしく過ごしていける様、デイサービスや介護老人保健施設等も運営。医療・福祉グループとして、地域社会に貢献している。13年には愛媛県立三島病院の民間移譲により増床して新築移転。名称を「HITO病院」へと改め、グループのロゴ及び経営理念も新たに定めた。
「HITO」とは、「Humanity」「Interaction」「Trust」「Openness」の頭文字で、患者に心を開き、家族の様に接して相互理解を図り、信頼される医療を目指すという意味が込められている他、「HITO(人)を中心に考え、社会に貢献する」という経営理念にも通じている。新築に当たり、旧病院の石川病院らしさである「人を真ん中にした病院」をコンセプトとして空間デザインを含め、全方位的にCI・VI 含めて具現化した。当時、病院は清潔感や信頼感を表現する為に、壁・天井・床等を真っ白にする事が一般的だった。しかし、その無機質な印象は、時に手術や入院を控えた患者の気持ちを沈みがちにすると考え、開放的でありつつも癒しを感じられる、美術館の様な空間作りを目指した。その為、1階のエントランスロビーは木の温もりや優しさを感じられるダークブラウンの重厚なデザインにし、2層吹き抜けのホスピタルストリートへと繋げた。又、5階には屋上庭園を設け、入院患者らが自然の中でリラックスして過ごせる様にした。
更に、患者や家族だけでなく、病院で働くスタッフも、ここで癒しを得られる様にと取り入れたのがアートだった。現在は、外来スペースや病棟の他、事務フロアにも作品が展示され、様々なアートと触れ合う事が出来る。今年3月には作品の入れ替えを行い、これ迄とは違った作品を楽しんで貰える様にした。こうした「人の心を癒すデザインによる病院作り」は、HAKUHODO DESIGNの代表取締役社長でありアートディレクターの永井一史氏が、企画立案時より深く関わって実現した。又、作品の選定には、パブリックアートを手掛けるアートディレクターでPasona art now取締役会長の大貝道子氏が協力している。
緩和ケア病棟に在る談話室には書棚を設け、選書家で編集者の幅充孝氏が「人生を見つめなおす・振り返る」をテーマに本を選んだ。体力が落ちて外に出られない患者も、写真集を眺めれば心が癒される。世代を超えて楽しめる漫画であれば、高齢者も孫と一緒に楽しい時を過ごせる。様々なジャンルの本を通じて、患者や家族が思い思いに過ごせる様にした。
11階のレストラン「SORA DINING」は、職員や患者、家族、来訪者の誰もが利用出来る。市内で最も高い場所に位置し、瀬戸内海を一望しながら食事を楽しめる。これも、緊張が続く医療の現場の中で、ひと時でも安らぎを覚えて欲しいという思いからだ。「HITO」への思いを尊重しながら、癒しを大切にし、人の「いきるを支える」医療を実践している。
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