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「金利が有る時代」に転換! 好景気でも実感は無い?

「金利が有る時代」に転換! 好景気でも実感は無い?

トランプ寄りのFRB議長就任でバブル発生の可能性も

昨年来の金融市場では、大きく変動したものを2つ挙げる事が出来る。1つは日経平均が史上初の5万円乗せを果たした株価。そして、もう1つは金利だ。特に後者は、バブル崩壊後、殆ど「金利が無い」状態が続いたが、これからは「金利が有る」時代に変わる。この金利上昇が金融市場を始めとする経済全体、我々の生活にどの様な影響を及ぼすのか探ってみよう。

物価高止まらない中で日銀は1年振り利上げ実施

昨今の金融市場を見ると、80年代後半のバブル経済が崩壊して以降、「失われた30年」等と言われていたデフレ経済が遂に終わったと言えそうだ。モノの値段が下がり、金利が低下、そして不景気へ──これが一般的に認知されるデフレの状況だ。現在は“実感無き好景気”との指摘は有るが、物価は高止まり、金利は上向きと、典型的なインフレ局面に近い。

一時はゼロ金利どころか、貸し手が利息を受け取れず、寧ろ差し引かれてしまう「マイナス金利」も経験した。コロナ禍でサプライチェーンが機能不全に陥った事に端を発した物価上昇は、落ち着きを取り戻してからも収束せず、物価高を抑える為に金融当局は政策を転換。一転、「金利が無い」時代は終わりを告げたのである。

それを象徴したのが、昨年12月の日本銀行・金融政策決定会合で示された利上げである。政策金利(無担保コール翌日物誘導目標)は、24年3月にマイナス0・1%→0・1%、同7月に0・25%、25年1月に0・5%と段階的に引き上げられ、直近決定で0・75%へ到達した(24年3月+0・2ポイント → 7月+0・15ポイント → 25年1月+0・25ポイント)。1年近い据置の背景にはトランプ関税の国内経済への悪影響懸念が有ったが、それが落ち着いた今後は、金利上昇局面が続くとの見方が広がる。

この0・75%が持つ意味は大きい。政策金利は0・5%前後で推移する事が長く続き、この水準が実質的な「壁」と意識されてきたが、約30年振りにこれを上回り、貸出・市場金利の参照点を更新したからだ。足元の物価上昇に加え、積極財政派・高市早苗首相の就任に伴う財政悪化懸念が背景に有り、金融市場では「次の利上げは何時か」「どこ迄上昇するか」に注目が集まっている。実際、国内金利の目安である債券市場では、利上げ決定後、指標10年国債利回りが19年半振りに2%台へと上昇し、先行きの金利が現状より大幅に上がる可能性を示唆した。

米国の利下げ継続は日本株の明らかなプラス材料

金利が上昇すると、将来的に景気が冷え込む為株価は下落、そして、高い利回りを求めて資金が利上げをした国に向かう為その国の通貨は上昇──これが今迄の定石だった。

しかし、実際にはそうなっていない。利上げ直後の動きを見ると、株式相場で日経平均は上昇、為替市場では円高にはならなかったのである。しかも、ドル/円相場に於いては、一方の米国ではFRB(連邦準備制度理事会)が昨年12月のFOMC(連邦公開市場委員会)に於いて3回連続の利下げを実施し、ドル売り要因があったのにも拘らずだ。

その理由として、高市政権による積極財政が考えられよう。景気を上向かせる為に予算を膨らませれば、予算を執行する為に資金を確保せねばならず、国債増発は避けられないとの見方が広がる。財政が悪化した国の通貨は売られ易い為、これが円の売り材料になった。一方で、需要押上げが実体経済に波及すれば企業収益の改善期待が先行し株価の支えとなる。何れも“条件付きの経路”であり、発現のタイミングや強さは指標や市場環境に依存する。

株価に関して売買に関わる資金の流れとなる需給面から見れば、金利上昇となると売られるというのが教科書的な見方になる。しかし、この面から見ても、日本の株価は崩れない。それは、現在の株式市場の売買シェアは平均すると7割を海外投資家が占めており、彼らの資金の流れを左右する米国金利が低下している為だ。更に米金利の低下が進めば、余剰資金が流入して、日本株はバブルのような動きをする様になっても不思議ではない。

米国では前述の通り、利下げの動きが鮮明となっている。実はFRBの内部でも見解は割れているが、インフレ鈍化・成長減速の指標が積み上がる限り、市場は利下げ継続をメインシナリオに置く——これに政治的圧力観測も重なり“低下方向にバイアス”が掛かっている。FRBでは、現在のパウエル議長が5月に任期満了を迎える事が注目されている。その後任はトランプ氏に考えが近い人物が就任すると見られ、そうなると年後半の利下げは規定コースとなりそうだ。余剰資金が世界を巡り、その流れが日本に波及する事は想像に難くない。

金利上昇は住宅ローンに影響、市町村も苦境に

話を国内の金利に戻すと、このまま金利が上昇し続けた場合、企業業績のみならず、家計にも大きな影響を及ぼす事は間違いないだろう。

そして、家計への影響で最も大きいのは住宅ローン金利だ。多くの変動型住宅ローンには、返済額を5年間据え置く「5年ルール」と、見直し後の返済増は25%迄に留める「125%ルール」が有り、当面は直ぐに影響が生じるものではないが、毎月の返済額は安定しても、金利上昇で返済額に占める利息の割合が大きくなり、元金の減りが遅くなる。その為、返済期間が延びたり、総返済額が増えたりする事から注意が必要になる。

結局、手取りが増える政策を実施しても、それが財政負担を伴う事で金利が上昇してしまうのであれば、足元の可処分所得は増えても、将来にツケとなって返ってくるのかも知れないのだ。

又、住んでいる自治体にも金利上昇の影響が及ぶ事は避けられない。現段階で財政が悪化している市町村は、国からの交付金でも賄えない場合、起債(地方債を発行)する事になるが、そうなると、当然の事ながら利払いが嵩む。反対に、財政の健全度が高く、懐に余裕が有る自治体も実は深刻な状況に置かれている。

例えば、使い切れずに余った予算が有った場合、それを基金として積み立て、安全面から債券で運用しているケースが大半だが、金利が上がって債券価格が下落すると損が生じる。「満期迄持てば全額返るので大丈夫」という立派な姿勢が、実は曲者なのだ。例えば同じ1億円でも、満期迄に物価高騰が続けば、1億円の価値が実質棄損するのは言う迄もないだろう。黒字の自治体でも金利上昇の悪影響は大きく、下手をすれば住民サービス低下に繋がり兼ねないのだ。

日銀は追い込まれる格好で追加利上げを実施か?

この様に、株価が上昇して一見、世の中が明るい状態になったと見る事も出来るが、「金利が有る世界」というのはシビアな側面がある事を忘れるべきではないだろう。最悪なのは、景気が一向に上向かない中で物価のみが上昇するスタグフレーションになる事。今後の金融、経済政策を一歩間違えると悲惨な状態になるリスクが生じる。

当然、日銀としては、昨年12月に実施した利上げは、物価高を収めるものと実施したが、このまま物価が上がり続けるとしたら、それは現象面として紛れもなくインフレであり、日銀は難しい判断を迫られる事になろう。

物価が騰勢を強める中では、それを沈静化する為に利上げをしたいところだが、その場合、景気を冷やす事は避けなければならない。しかし、財政悪化懸念から円安が進めば、輸入価格の上昇→物価上昇のコースを辿り、悪循環となってしまう。如何に物価を抑える為とは言え、利上げを継続すればより景況に悪影響を及ぼすのは間違いないが、それでも日銀は追い込まれる形で追加利上げを実施すると想定される。

米国が利下げを継続すれば、余剰資金が金融市場を席捲して、見た目の経済は華やかな雰囲気を醸し出すかも知れない。その一方で国民全体の生活が楽になるとは想定出来ず、金利上昇が読まれる26年は引き続き、「実感無き好景気」となりそうな気配だ。

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