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未来の会

第95回 厚労省人事ウォッチング
消費者庁長官に厚労官僚就任 そのワケは

第95回 厚労省人事ウォッチング消費者庁長官に厚労官僚就任 そのワケは
堀井奈津子消費者庁長官

 7月1日に発令された人事で厚生労働官僚が消費者庁長官に初めて抜擢された。人材開発統括官だった堀井奈津子氏がその人だが、何故、彼女に白羽の矢が立ったのか——。

 先ずは堀井氏の経歴を振り返りたい。愛知県出身の堀井氏は東北大学法学部を卒業後、1990年に旧労働省に入省した。社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室長や職業安定局派遣・有期労働対策部外国人雇用対策課長、雇用環境・均等局雇用機会均等課長等を歴任。千葉労働局総務部長や愛知県副知事、財務省大臣官房審議官等本省以外のポストにも着任した。局長級では雇用環境・均等局長と人材開発統括官をそれぞれ1年ずつ経験した。

 或る労働官僚は「特に熱心に取り組んだ分野が有る訳でも無いが、労働分野を幅広く経験している印象だ。仕事ぶりも可も無く不可も無くという感じだが、非常に世渡り上手で敵を作らないタイプだ」と指摘する。

 旧労働省に入省した経緯について、堀井氏は「村木厚子元事務次官にも面接でお会いし、女性がとても活き活きとされていたからです。女性の先輩方からお話を聞いて、働き易そうだと思いました」と明かしている。順調にキャリアを重ねていたが、同期には村山誠職業安定局長や岸本武史労働基準局長が控えており、「厚労省でこれ以上、上に上がれない」(厚労省OB)という事情が有った。

 一方で、消費者庁側にも堀井氏を求める「事情」が有った。2009年に発足した消費者庁の初代長官は内閣広報官等を務めた内田俊一氏で、堀井氏を含め現在迄に8人が就任している。注目すべきは3代目以降の人事だが、阿南久氏以降、全て女性が就↘任している。阿南氏は全国消費者団体連絡会事務局長だった民間人だが、4代目の板東久美子氏(元文部科学審議官)以降に限れば官僚出身者だ。消費者庁関係者によれば、今回の人選でも女性官僚である事が重要視された様だ。

 更にもう一つ条件が有ったとされる。消費者行政では時に複雑な行政法の解釈が必要になる。様々な消費トラブルにも対処が必要で、近年では旧統一教会問題の一部も消費者庁の所管事項だった。こう↖した行政庁のトップに立つには、過去に一度でも勤務している者が良いとの考えが有った様だ。堀井氏は11年7月から2年間、消費者庁消費者制度課長を経験している。大手紙記者は「こうした要件を満たしたのが堀井氏だった」と明かす。

 消費者庁長官人事といえば、数年前に永田町や霞が関界隈で厚労省の大坪寛子健康・生活衛生局長が就任するのではないかと「噂」が立ったことが有る。これは国土交通省出身の伊藤明子元長官が和泉洋人元首相補佐官のお気に入りだった為で、和泉氏と懇意にしている大坪氏にもお鉢が回ってくるのではないか、との見立てからだった。だが、和泉氏が官邸中枢から離れて求心力を失った今、大坪氏が消費者庁長官に就任する可能性は無くなっていた。

 消費者庁長官は今後、厚労省の指定席になるのだろうか。今回の条件等を鑑みると、少なくとも厚労官僚から継続的に人材を輩出する形にはならないだろう。政府は女性官僚の幹部登用を進める最中である。当面、消費者庁長官が女性官僚の「指定席」になるのは間違いない。

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