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未来の会

医療改革やデジタル化、少子対策 社会保障制度の維持に不断の努力

医療改革やデジタル化、少子対策 社会保障制度の維持に不断の努力
加藤 勝信(かとう・かつのぶ)1955年東京都生まれ。79年東京大学経済学部卒。大蔵省(当時)入省後、同省大臣官房企画官、代議士秘書等を経て2003年衆院選で自民党から出馬し初当選。当選7回。国務大臣や自民党総務会長等を歴任。22年8月から4度目の厚生労働大臣。

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが「5類」に引き下げられ、3年以上続いた新型コロナ対策もようやく一段落した。今後は医師の働き方改革や医療DX等の医療改革が本格化するが、働き方改革については医療サービスの質の低下に繋がるのではないかとの懸念の声も有る。又、将来の医療体制だけでなく、日本社会全体の未来を考えると少子化対策も待った無しの所まで来ている。今後、国はこうした課題の解決にどう取り組んで行くのか。厚生労働大臣の加藤勝信氏に新型コロナへの対応から見えて来た日本の医療の課題や今後の医療改革の展望等について聞いた。

新型コロナ禍への対応で、医療行政として最も難しかった点を教えて下さい。

加藤 当初は新型コロナウイルスがどの様なものか、誰も分からなかった。命を落としたり重症化したりする方が続出する中で、医療現場は手探りで対応せざるを得ず、対応出来る医療機関も非常に限られていた。そうした状況の中で対策がスタートしました。感染の拡大防止を図る為に緊急事態宣言も発しましたが、一方でこうした対策は社会や経済活動に大きな影響を及ぼしました。命を守る為の感染防止対策と医療、経済活動のバランスをどう取るかが常に問われていました。亡くなった人の数を人口当たりで見れば、日本では医療現場を始め多くの方の努力のお陰で、かなり低い水準に抑えられた。この点は海外からも評価されていると思うのですが、一方で医療を必要とする方に十分な医療が提供されたのかと言えば、課題が有ったのも事実です。ワクチン開発でも、結果的に薬事承認されたワクチンは現時点でも出来ていない。政府として反省すべき点は数多く有ったと思います。

——ワクチンの開発が出来なかった要因については。

加藤 嘗ては日本もワクチン先進国と言われた時期が有りましたが、その後ワクチン接種に伴う副反応等が問題になり、政府や製薬会社、研究者がワクチン開発に慎重になってしまった。その分、その他の分野に注力していった事は間違い無いでしょう。

——5月8日に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」へ移行しました。

加藤 感染対策は、患者の隔離から始まって、一時期は国民の皆様に行動制限をお願いもしました。その後、昨年位から高齢者や基礎疾患等の重症化リスクの有る人に重点を置いた対応に切り替え、発生の届け出も全数報告を止め、対象者を絞りました。そうした形で段階的に体制を縮小していく中で、経済・社会活動を元に戻して行く転換点の1つが5類への位置付け見直しだと思っています。当初、多くの人が命を落とされる中、ウイルスの特性が分からず「2類相当」とし、それから見直し迄3年を超えました。そうしたウイルスに立ち向かって頂いた医師を始め、医療関係者の皆さん、それから福祉の現場で高齢者を守って来られた方々、或いは市区町村の保健所等で努力して頂いた方々のお陰で、海外からの高い評価を得られる程の成果を上げられた。こうした方々の奮闘が5類への見直しに繋がったと言えます。

——もう少し早い段階での移行は難しかったのでしょうか。

加藤 オミクロン株が主流になった後は、対策の重点が高齢者や重症化リスクの有る人達に絞られる様になった。これはワクチン接種が進んだ結果でもありました。又、昨年には感染症法の改正が行われ、位置付けの見直しを速やかに検討する事にもなりました。こうした状況を踏まえて1月に位置付けの変更を政府として決定しました。状況の変化を踏まえながら判断して来たのですが、確かに「2月から移行出来たのではないか」という意見も有ります。しかし、2類から5類への移行は大きな変更であり、3カ月位の移行期間は必要だろうと判断しました。更に、5月の連休は人が大きく移動する時期で、医療機関も通常とは異なる体制になる。そこで移行は連休明けの5月8日からとしました。ただ、高齢者や重症化リスクの有る方を始め、未だ感染に不安を抱く方もいらっしゃいます。国民の皆様には引き続き必要に応じて感染対策を取って頂き、又、高齢者等の方々への配慮もお願いしたいと思っています。

より良い医療の実現に繋がる働き方改革

——WHO西太平洋地域事務局(WPRО)の葛西健事務局長の解任についてどの様にお考えですか?

加藤 先ず、問題となった人種差別やハラスメントについては我々も容認しないという立場です。ただ、WPROの事務局長は地域から選挙で選ばれた人ですから、調査や事実認定には地域のメンバーもしっかり関与出来る様にすべきだったと思っています。私も、最初から公正なデュープロセスの必要性を主張して来ました。各加盟国とも様々な話をし、多くの加盟国からも理解を頂いたのですが、残念ながら結果は解任という事になってしまった。我々の努力が足りなかったという点については、忸怩たる思いが有ります。

——厚労省はもっと彼を擁護すべきだったのでは。

加藤 WPROのコロナ対応については、世界的にも非常に評価されていますし、それを踏まえ、我々も様々な場で、公正な手続きがなされるよう訴えて来ました。勿論、人種差別やハラスメントを許容するつもりは有りませんが、今回のやり方については納得出来ないところも有ります。地域で選んだ人なのだから、選んだ側にも責任が有ります。その責任を共有しながら、公正な手続きを進めて欲しいという事はかなり強く主張しました。

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