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第215回 厚労省ウォッチング
今年が正念場!「介護保険の自己負担2割対象拡大」

第215回 厚労省ウォッチング今年が正念場!「介護保険の自己負担2割対象拡大」

介護保険の自己負担割合が「2割」の人を拡大すべきか否か——。厚生労働省は2022年末から検討してきたこの課題について、4度目の結論先送りを余儀無くされた。議論の主舞台、社会保障審議会介護保険部会で拡大派と慎重派の意見が真っ向からぶつかって妥協点を見出せない中、官邸の意向が働いた。次のゴールは「26年度中」とされたが、「5度目の正直」は有るのか。

昨年12月24日、片山さつき財務相と上野賢一郎厚労相による来年度予算の大臣折衝の際、両者の間では、介護保険(原則1割負担)を2割負担する対象者の拡大に関し、27年度からの「第10期介護保険事業計画期間の開始」の前迄に結論を得る、との考えで一致した。

最長で1年を超す検討期間を設けた理由について、上野氏は「いろんなご意見を反映した上で調整を進めたいという趣旨だ」と述べ、他制度の負担増の状況も併せて検討する必要が有る事も付け加えた。8月以降、高額療養費の自己負担の上限額が順次引き上げられる事が決まっている中、介護もとなると二重、三重の負担増になる点を考慮すべき、という趣旨だ。この大臣折衝を踏まえ、翌25日の介護保険部会では「ケアプラン作成への自己負担導入に丁寧な検討を行う」事等、他の制度改革は了承する一方、2割負担対象者の拡大については「26年度中に結論を出す」として、正式に4度目の持ち越しを決めた。

厚労省の考えは既に事実上示されている。介護給付費は10兆円超と00年度の制度発足時の約3・3倍に膨れており、2割対象の拡大は不可欠、というものだ。

今の2割負担の対象者は「年収280万円以上」(単身世帯)。同省は昨年末にはこの基準を「260万円以上」から最大で「230万円以上」迄下げる4案を示している。一方で、当面、自己負担の増加幅の上限額を7000円に抑える案も提示し、更に年収基準では2割負担に該当しても、預貯金が「700万円以下〜300万円以下」(単身世帯)であれば1割に据え置く考えを公表している。

2割になる人の年収基準を「250万円以上」としつつ、1割に据え置く条件を「預貯金500万円以下」とする中間案の場合、新たに2割負担になる人は約13万人。厚労省幹部は「要介護者の増加で保険料が跳ね上がっており、介護保険財政のバランスを考えてギリギリ了承頂ける数字を出した」と話す。

しかし、この案に関しても介護保険部会では「応能負担」を求める声と、高齢者の負担増を懸念する声が拮抗して結論は出ずじまい。医療の負担と重なる事を嫌った高市早苗首相の意向も伝わり、「25年末迄に結論を得られる様検討する」としていた政府方針は又も空文と化した。

先送りを受け、介護保険部会では政治の都合で設定された「26年度中」をメドに引き続き2割の対象拡大の有無を議論していく事になるが、27年4月の「10期計画」開始に合わせた締め切りの設定は現実に即していない。同計画に基づいて27年度からの保険料水準を決める市町村に一定の準備期間を与えなければならず、最も遅い「26年度末に決着」では綱渡りになってしまうからだ。

とりわけ収入だけでなく預貯金を「1割据え置きか否か」の判断材料にする場合、資産状況の把握に時間を要する事が見込まれる。この点は介護保険部会でも「(2割対象拡大の有無に関する)結論が遅れれば、介護保険料の設定等の事務に悪影響が出る。検討スケジュールはしっかりと管理する必要が有る」(大西秀人高松市長=全国市長会介護保険対策特別委員会委員長)との指摘が出されている。

そうした事を勘案すると、「それ程議論する時間は残されていない」(厚労省幹部)のが実状だ。この幹部は「今後の医療の負担増、衆院選で各党が打ち上げている消費税減税の行方等、様々な要素が絡み、介護保険単独で結論を得られる話ではないかも知れない。何れにせよ、今年が正念場だ」と話す。

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