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第94回 厚労省人事ウォッチング 伊原氏留任の幹部人事 間氏シフト明確化

第94回 厚労省人事ウォッチング 伊原氏留任の幹部人事 間氏シフト明確化
伊原和人事務次官

 厚生労働省の7月の幹部人事が公表された。本欄での記事通り、伊原和人事務次官(1987年、旧厚生省)は留任した。迫井正深医務技監(92年、旧厚生省)も留任し、骨格は維持した形となった。ただ、高額療養費の見直し問題で揺れた保険局は、鹿沼均局長(90年、旧厚生省)が社会・援護局長に「左遷」された。一方、同期の間隆一郎氏は年金局長から鹿沼氏の後任に就任。今後、よほどの失態を演じない限り、来年夏以降の間氏の事務次官昇格は既定路線となった。

 伊原氏の人事は88年に旧厚生省に入省したこども家庭庁の渡辺由美子長官留任の影響が大きい。初代医療介護連携政策課長や会計課長を歴任した渡辺氏は事務次官候補だったが、こども家庭庁に転出。未だに賛否両論のある来年4月開始の子ども・子育て支援金制度を見据え、留任の運びとなった。加藤勝信財務相らが「こども家庭庁長官経験者が厚労事務次官に就任したら序列が出来てしまう」と主張したことも少なからず影響したのだろう。中堅官僚は「ワーカホリックの伊原氏の留任はショック。働き方改革に逆行しかねない」と漏らす。

 予想されていたとは言え、今回の幹部人事で一番の衝撃は鹿沼氏の処遇だろう。首相秘書官や政策統括官等の要職を歴任し、出世街道を歩んでいた鹿沼氏に「×」が付いた形になったからだ。人事課長経験者は「高額療養費制度の迷走の責任を負わせた形だ」と解説する。「とは言え、新任地では最高裁で生活保護費引き下げの違法判決を受けた難しい対応が待ち受けている。責任は負わされたが、能力は買われている証拠。挽回のチャンスは十分に有る」と見る。

 鹿沼氏と事務次官レースを競っていた間氏は、困難と見られていた年金改革関連法案の通常国会成立を成し遂げた。老健局長や年金局長時代に積み残していた課題をこなし、トラブルシューターとしての面目も躍如である。先述の人事課長経験者は「高額療養費制度を解決し、晴れて事務次官に昇格するだろう」との見通しを述べる。

 その陰で割を食ったのは、社会・援護局長だった日原知己氏(89年、旧厚生省)だ。鹿沼氏の人事に押し出されるように辞職の憂き目に遭い、国立病院機構副理事長に就任する。或る大手紙記者は「仕事面の評判が良くなかったので仕方ない」と指摘する。

 医系技官人事では、大坪寛子健康・生活衛生局長(2008年)と森光敬子医政局長(92年、旧厚生省)は留任した。大坪氏は消費者庁長官への転出も兼ねてより噂されていたが、「複雑な行政法を理解しないといけない消費者庁長官は務まらない」(政府関係者)との意見も有り、自然と潰えたようだ。来年夏には迫井氏も就任から丸3年を迎える為、後任人事が取り沙汰されている。

 この他、間、鹿沼世代の朝川知昭氏が政策統括官から年金局長へ、村山誠官房長(90年、旧労働省)は職業安定局長にそれぞれスライドした。

 意外な人事として受け止められているのは、東北厚生局長から政策統括官に就任した辺見聡氏(91年、旧厚生省)だ。堅実な仕事ぶりで知られているが、一旦省外に出たにも拘わらず、要職で復帰するのは稀なケースと言っていいだろう。

 夏以降は年末に掛けて高額療養費制度の見直しや診療報酬改定、社会保障制度改革など難題が目白押しだ。伊原氏は早くも正念場を迎えている。

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