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第92回 厚労省人事ウォッチング
事務次官「ほぼ当確」村山官房長 時期は?

第92回 厚労省人事ウォッチング事務次官「ほぼ当確」村山官房長 時期は?

 厚生労働省で事務次官の座をほぼ確約されている官僚がいる。旧労働省出身の村山誠官房長だ。2013年7月〜15年10月に就任した村木厚子氏(1978年、旧労働省入省)以降、事務次官の座は旧厚生省出身者で占められており、「そろそろ旧労働省出身者に回さないといけない」という機運が高まっているからだ。

 嘗て、この欄でも紹介したが、村山氏の経歴を簡単に振り返ろう。千葉県出身で開成中・高を経て、東京大文学部を卒業。90年に旧労働省に入省した。労働基準局労働条件政策課長や同局総務課長、同局安全衛生部長を歴任。局長級ポストとして大臣官房総括審議官や雇用環境・均等局長を経て、23年7月から現職に就任している。

 経歴から分かるように労働基準局での勤務が長く、労働基準法のスペシャリストだ。労働条件政策課長や労働基準局総務課長の時代に、働き方改革関連法の柱の1つ、残業を年720時間以内とする規制の導入に携わった。或る中堅職員が「村山氏以上に労基法に詳しい人物は省内にいない」と明かす等、政策面での実力は折り紙付きだ。

 一方で、トラブルシューターとしての能力も鍛えられた。企画業務型への裁量労働制の拡大に向けた厚労省調査で、実態データに誤りが見つかった際には、担当者の1人として関係者回りに奔走。最終的に裁量労働制の拡大はこの一件で法案から削除されたが、関係者への「お詫び行脚」を経て、従来から定評の有った村山氏の説明能力に磨きが掛かった様だ。

 現在、官房長は2年目に入ったが、「裏官房長」とも呼ばれる大臣官房総括審議官と合わせると計3年に達する。大臣官房総括審議官は官房長と共に人↘事や会計等を司るが、旧厚生省と旧労働省が合併した名残で担当を分け合っている。労働官僚が官房長なら旧労働省の人事や会計等を担当し、大臣官房総括審議官は旧厚生省の分野を担うといった具合だ。

 当初は昨年夏の幹部人事で官房長から労働基準局長に異動する筈だったが、「閣僚留任を期待した武見敬三厚労相が村山官房長を手放さなかった為、留任する事になった」(幹部)との事情が有るという。只、こうした経験も無駄では無かった様だ。別の↖幹部は「官房長を2年も経験した影響で、社会保障分野の政策にも詳しくなった印象を受ける。労働のみならず厚生の分野も触った事で事務次官への道が大きく開けた」と打ち明ける。旧厚生系の事務次官OBも「10年もの間、旧厚生出身者が事務次官を占めて来たので、そろそろ旧労働出身者に回さなくてはならない。村山氏は適任だ」と指摘する。

 では、事務次官への起用は何時になるのか。今夏の幹部人事で昇格する可能性は無さそうだ。秋に高額療養費制度の見直しに加え、年末には診療報酬改定が控える。厚生官僚が事務次官に就いた方が安心ではある為、伊原和人事務次官の留任説が囁かれている。人事に詳しい労働官僚OBは「社会保障にも携わるポストをもう1回ぐらい経験してから事務次官に登用されるのでは」と期待を込める。

 旧労働官僚OB等も事務次官ポストの奪還に向け、幹部人事の際には村山氏を後押しして来た背景が有る。早ければ来夏の幹部人事で、煮え湯を飲ませられ続けて来た労働官僚の「悲願」が果たせるかも知れない。

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