
米国債売却の禁じ手を口にする政治家はいるか?
「結局、あの人はただ会って来ただけ。期待したのが間違いだった」──経済界、市場関係者の多くの人がそう思ったのではないだろうか。そう、今年2月、相互関税の概略がトランプ米大統領によって発表された後にようやく実現した、石破・トランプ会談に対する評価だ。
一律の10%については仕方が無い。しかし、24%という高関税率はEU各国の20%を超え、先進国でより厳しい数値が示されたのは日本以外ではカナダだけ。会談の時点で既に厳しい結果になると分かっていたと思われるのは、発表される直前、経済産業省とジェトロが共同で「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」設置する等、政府が手厚い対策を発表した事からも窺えよう。果たして、トランプ大統領は石破首相をまともに相手にしていたのだろうか。会談では故・安倍晋三元首相の名前を連呼する等、現職に対して失礼とも言える態度ではあった。
石破首相が力不足なら、会談の直後から挙党態勢で別の人物を特使として交渉に当たらせる手は有ったと思える。例えば、トランプ大統領をして「タフ・ネゴシエーター」と言わしめた茂木敏充元外相が相手ならどうなったか──他にも、色々なオプションが考えられる。しかし、今回の関税騒動で改めて分かった事は、「税率を下げて下さい」と言うだけなら無策も同然という事。且つ、トランプ大統領の交渉第一主義をまざまざと見せ付けられたのが、対中報復関税の泥仕合の最中での、相互関税の90日間停止措置だ。
今後も予断を許さぬトランプ対策ではあるが、どうしようもなくなった場合の強力な施策が1つだけ有る。禁じ手とも言えるが、政府保有の米国債の売却がそれだ。世界で最も米国債を保有しているのは日本。それを大量に売れば、米国は瞬く間に立ち行かなくなる。米国が望む円高に一発に向かわせる事になるが、それは円高等という生易しいものではなく、ドル暴落と米金利急騰をもたらす。
4月に入ってからの金利急騰局面では、米国債で損を抱えていた農林中金による売却が噂されたが、実際には3月迄に売り終えていたとか。誰が売ったか疑心暗鬼になる程日本勢に視線が集まっている。過去には、故・橋本龍太郎元首相が米国での講演で「米債を売りたい誘惑にかられた」と漏らしただけで、ドル、米債は急落。即否定した為事無きを得たが、米国を警戒させるには十分だった。果たして、それだけ肝の据わった事を現政権が出来るのか──。
異物混入は店舗オペレーションに変化をもたらすか
ネズミの死骸の次はゴキブリ──とても信じられない異物混入が、大手外食チェーン店で起こった。ゼンショーが運営する「すき家」で起きた今回の不祥事。鳥取県の店舗で味噌汁にネズミの死骸が入っていた画像がSNSで拡散した事案が切っ掛けだが、これが広がるまでに明らかにしなかった事が糾弾されたのである。
その後、今度はゴキブリが混入。こちらはSNSで公表される前に、翌日に自ら公表したが、ネズミ混入事件がなければ、隠蔽していたかも知れない。さすがに、騒動の最中での新たな不祥事で万事休すとなり、謝罪をした上で全店に於いて4日間の営業休止を余儀なくされた。不祥事はすき家だけではない。「焼肉きんぐ」では「嘔吐客の放置」が問題になったが、店内には食品を運ぶ「特急レーン」が有り、その側で嘔吐客を放置──これもSNSで拡散されて炎上したのだ。
何れも、現場の対応は勿論、会社としてSNSの対応の不手際にも注目が集まったが、実はこれには現場の店員の権限の問題が絡んでいるという。要するに、こうしたトラブルの対処について、夜間勤務のアルバイト店員に本社等への報連相のルートを含め、明確な裁量が持たされていなかったのだろう。
事件後、すき家は営業を再開するも24時間営業の看板を下ろし、毎日午前3時から午前4時の間、店内の清掃を励行するという。この間に店長やアルバイト店員の権限の在り方も含め、店舗のオペレーションの見直しが進むと良いのだが。
LEAVE A REPLY