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未来の会

社会福祉法人あそか会巨額の公金横領の真相㊤㊥㊦

法人あそ額の領の真


 あそか会の2回にわたる記事掲載後、全国の地方自治体や社会福祉法人から問い合わせが相次いだ。東京都や江東区がこのような巨額の不正を放置し、今でも補助金を出し続けていることに驚きの声が上がり、あそか会の元常務理事と東京都や江東区の担当職員が癒着しているのではないかという意見もあった。

 また、元常務理事を仮名としたことについても、社会福祉法人の常務理事職は公職であり、実名を出すべきだ、との多数の指摘を受けたため、今回は実名表記とする。ある社会福祉法人の理事からは「不正が見逃されるような抜け道があるなら、(まねをしたいので)ぜひその方法を教えてほしい」というとんでもない申し出もあった。こうしてコンプライアンス(法令順守)は崩壊し、血税が私的に流用されていくのだ。

 東京高等検察庁の幹部は「これだけの巨額資金が横領されているとなると、警視庁では手に負えない。東京地検特捜部の出番になるだろう」と話す。事実、あそか会を退職した複数の職員が東京地検特捜部に呼び出され、あそか会内部の人事組織図と指揮命令系統を聞き出され、記録されたと関係者は伝えている。

元常務理事周辺に暴力団関係者の影
 記事掲載後、筆者の携帯に脅しの電話が3回入った。「あそかの記事を続けるとどうなるか分かっているのか」「お前の会社に行くよ」「あそかを必要としている人間がいるんだよ」とすごまれた。いったい誰の指図なのか。

 記事の内容からしてあそか会元常務理事、荻原勝(以下、荻原)の周辺にうごめく暴力団関係者だと思われるが、確たる証拠はない。しかし、以前、荻原個人が所有する江東区の冨士工第二ビルの最上階には、荻原の用心棒として暴力団関係者の会社が入居していたと聞いている。荻原は、社会福祉法人の実質経営者である常務理事という役職には似合わないような裏の顔も併せ持つようだ。

 あそか会職員からの意見も多数いただいた。特に介護施設の職員という方からの連絡が多く「ここ数年の経営悪化で、職員たちはみな強制的に給与やボーナスをカットされてきたが、荻原常務と関係を持つ女性だけが幹部手当を支給されるなど優遇されてきた。働く気力とモラルが下がり、ホームのお年寄りに当たってしまうこともあった。職員の中にはあいさつしない人も増え、いつの間にこんな腐った職場になったのかと悲しい気持ちになった。顔を合わせれば愚痴しかいえないような状況を作った荻原常務は許せない」と憤る。

 荻原の悪行を知りながら、それを正せるような雰囲気ではなかったことは前号で述べた。しかし、見返りを享受していたのはあそか会内部で荻原にはべる4人の愛人ばかりではない。メインバンクであるみずほ銀行錦糸町支店も内情を分かった上で見ないふりをしていたのだろう。

 つい先日、ある業者から1枚の写真が弊誌編集部に届いた。あそか会の出入り業者と名乗るその人物によると「この写真は、ある案件の依頼のために荻原を訪問した際に、謝礼として300万円を渡したときのものです。荻原は慣れた感じで当然のように受け取りましたよ」とのことで、荻原が裏切ったときの保険として隠し撮りをしたという。しかし、前号の記事で荻原が500万円や1000万円もの金をいつも手にしていたことを知り、「うちにとっては大金でしたが、荻原にとって300万円なんて大した金ではなかったんですね」と落胆した様子だった。
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 ここに、あそか会の資金横領の舞台となった荻原のファミリー企業「あそかライフサービス」(以下、あそかライフ社)の決算書がある。

 資産合計7億3155万円 売上9億1149万円 売上総利益6億728万円、そこそこの規模の会社である。この会社の代表取締役は前理事長の福田充であり、荻原がオーナーである。

 本来であれば、これらの売上と利益はあそか会に帰属するものだ。あそかライフ社のビジネスはあそか会がなければ成り立たないものであるが、あそか会にとっては全く必要のない会社だ。あそかライフ社の売上、利益があそか会に計上できていたら、あそか会の職員たちは給与やボーナスを強制的にカットされる必要はなかったはずだ。

 このあそかライフ社が、昨年6月2日付の朝日新聞1面を騒がせた荻原の親族企業だが、この資金横領騒ぎを収めようと乗り出したのが山田コンサルティンググループ株式会社(以下、山田コンサル)の担当部長・滝村和仁(仮名)である。

 滝村は、朝日新聞で大々的に報じられ窮地に陥ったあそかライフ社と荻原に流れた資金を救う方法を考えた。それが、あそか会を伯鳳会に売り飛ばすという奸計だった。あそか会の実質オーナーが伯鳳会となれば、あそか会とあそかライフ社は親族会社ではなくなり、あそかライフ社は一業者としてこれまで通りにあそか会との取引が可能となり、あそか会の汚点も流出する心配がなくなる。その策に飛び付いたのが伯鳳会理事長、古城資久である。古城は日本大学医学部卒、医療界では無名に近い存在だが、ビジネスにおいてはかなりの野心家らしい。そうでなければ、刑事事件に発展する可能性もあるような危険な話に飛びつかないだろう。古城を古くから知る医師の一人は「医療の質ではなく徳洲会のような規模を求めていた」と語り、「今回の買収では日大卒の医師らにあそか会理事として名前を貸してほしいと頼んでいた。名前を貸した医師たちはこの記事を見て驚いている」と話す。

職員の退職金を運用資金に流用か
 ついに江東区は補助金の返還請求の検討に入った。あそか会に投入した公金である血税が、前理事長・福田充と元常務理事・荻原勝の個人資産として流用された事実を放置すれば、江東区民の住民税不払い運動が起こる可能性もある。

 国税庁幹部に取材すると「国民の納税意欲減退につながることだけは避けなければならない」と語った。山﨑孝明江東区長は、福祉の充実を掲げて今年4月の区長選挙を勝ち抜いたばかりだ。あそか会との妙な関係を疑われることを避ける意味でも、強硬な手段に出るのは間違いない。既にこの問題を検討するチームができたといわれているが、江東区長自らがあそか会公金不正流用を刑事告訴する可能性もあると関係者は話す。

 江東区から公金の返還請求があった場合、現オーナーである伯鳳会が返還資金を調達して対応する必要に迫られる。しかし、荻原のシンパであるみずほ銀行は融資を実行することはないだろう。

 また、りそな銀行錦糸町支店に積み立てた、職員の退職金約2億数千万円が解約され、あそか会の運転資金に流用されたことも先の第三者調査委員会の調査で発覚した。あそか会の職員たちには退職金が支払われない可能性もあるのだ。

 荻原と山田コンサルの謀略があそか会を火の車にし、その火中の栗を拾った伯鳳会の息の根を止める可能性も出てきた。歴史ある社会福祉法人あそか会の価値をおとしめた責任は重い。 (敬称略)

 

 

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