SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

「医師法21条の解釈は変わらず」を再確認

「医師法21条の解釈は変わらず」を再確認
元厚労副大臣・医事課長・医師らの懇談会で疑念を払拭

犯罪死の見逃しを防ぐため、死因究明体制を充実させる死因究明等推進基本法が6月6日に衆議院本会議で成立し、2020年4月に施行する。子どもの虐待防止にも繋げる。

 これに先立ち、同基本法案が参議院本会議で可決された5月31日、死因究明制度への提言などを行ってきた一般社団法人医療法務研究協会が「医師法21条(異状死体等の届け出義務)に関する懇談会」を衆議院第二議員会館で開いた。3月14日に次ぐ2回目の開催だ。3月に懇親会を開いた背景には、2月に出された厚生労働省医事課長通知が「医師による異状死体の届け出の徹底」を求めていたことから、医療現場から従来の解釈を変えるものではないかとの懸念が出ていたことがある。

 第1回懇談会では、座長の小田原良治・同協会理事長、橋本岳・自民党衆議院議員(元厚生労働副大臣)、同通知の発出元の佐々木健・厚生労働省医政局医事課長、同協会顧問の井上清成弁護士が参加した。懇談会では、これまでの厚労相や医事課長の発言、裁判所の判例を踏まえ、「今回の通知は従前の内容と同じで、何ら変わるところはない」と結論付けた。

 しかし医療界から、医師法21条に関するこれまで解釈との整合性などについて疑義が生じていると指摘されたため、2回目の懇談会を開くことになった。参加者は前回と同じ4人。小田原氏は、厚労省が懸念を払拭するために、「『医師による異状死体の届出の徹底について』」に関しての質疑応答集(Q&A)」を4月に発表、改定したばかりの「平成31年度版 死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」にも質疑応答集を含めた追補を入れたことを佐々木課長に確認した。

 質疑応答集では、2月の医事課長通知に対し①通知の発出の趣旨は何か②都立広尾病院事件との関係はどのように整理されているのか③医師法21条の「検案」に死体の外表の検査以外の行為を含ませようとするものか④医療事故などの事案について警察署への届出の範囲を拡大するものか——という医療界の疑問を提示した。

 回答として①医師が検案して異状を認めるか否かを判断する際に考慮すべき事項を示したものであり、医師法21条の届出を義務付ける範囲を新たに拡大するものではない②判決により示された医師法21条の死体の「検案」及び届出義務が発生する時点の解釈を含め、判決で示された内容を変更するものではない③通知は「検案」の従来の解釈を変えるものではなく、死体の外表の検査の他、新たに「死体が発見されるに至ったいきさつ、死体発見場所、状況など諸般の事情」を積極的に自ら把握することを含ませようとしたものではない④医師法21条の届出義務の範囲を拡大するものではなく、医療事故などの事案についての届出についても、従来通り、死体を検案した医師が個々の状況に応じて個別に判断して異状があると認める時に届出義務が発生することに変わりはない——とした。

 小田原氏は「これで疑義や懸念は払拭できた。次の本格的な死因究明推進の段階に進める」と締めくくった。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top