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武田「健康経営優良法人」「プラチナくるみん」返納の真相

武田「健康経営優良法人」「プラチナくるみん」返納の真相
複数社員が行った内部告発による指摘とは?

従業員の健康管理に戦略的に取り組んでいる企業を評価する経済産業省の「健康経営優良法人」と、仕事と育児の両立支援に取り組む企業を評価する厚生労働省の「プラチナくるみん」の認定を受けた武田薬品工業。しかし、認定後も時間外労働時間に関する基準を遵守できず、労働基準法に違法する事案が生じたことにより、6月、いずれの認定もそれぞれの担当省に「返納」↘した。

 まず、健康経営優良法人の返納について。同制度は2017年に始まり、今年は「大規模法人部門」に820法人、「中小規模法人部門」に2502法人が認定された(6月1日現在)。製薬関連企業では大規模法人部門に33社が認定された。武田もその一つ。18年11月に申請し、今年2月に認定を受けた。ホームページでは〝ホワイト企業〟ぶりをアピールしていたが、現在は削除されている。

 健康経営優良法人の認定を受けるには、「健康経営優良法人2019(大規模法人部門)誓約書」を経産省に提出する必要がある。誓約書の中には「事業者は、2017年4月1日から申請日までに以下の事実がないこと」として、その複数の条件を挙げた中で「長時間労働等に関する重大な労働基準関係法令の同一条項に複数回違反していること」を求めている。

認定後も労基署から是正勧告と指導

 しかし、編集部に寄せられた武田社員の内部告発によると、武田は十数年前より、各地の労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を出されているという。

 この2年間でも2回の36協定違反や賃金不払いなどを起こしている↖ことは、武田自身も認めている。グローバルHR日本人事室が今年5月24日に「従業員各位」として出した「【至急・重要】時間管理におけるコンプライアンス遵守の再徹底」という文書がそれだ。

 文書では「2017年頃から労働基準法が改正となった2019年4月にかけ、法令で定められた基準を遵守できず、法令違反に抵触する事案が複数の事業場で再三発生しています」と述べ、以下のような労働基準監督署による指摘事項を挙げた。

 18年11月と19年4月にグローバル本社が36協定違反で、18年9月にグローバル本社、19年5月に光工場(山口県)が賃金不払いでそれぞれ是正勧告を受けた。また、過剰労働による健康障害を防止する観点から18年5月に大阪工場が指導を受けた。つまり是正勧告は4件、指導が1件である。武田は健康経営優良法人の申請時だけでなく、認定中も指摘を受けていたのだ。

 経産省の「申請内容に虚偽等があった場合の対処の方針」では「申請後又は認定後に新たな法令違反等が発生した場合」として、①自主申告により申し出た場合は、認定を行わない又は認定書を返納させる②認定法人の内部からの情報提供により虚偽等の事実が判明した場合は、認定を行わない又は認定を取り消す——とのルールを明記。さらに②では、故意の場合、事実上申請できない期間(最大3年間)に加え、さらに1年間、申請を認めないこととするとしており、最大で4年間申請を認めないと規定している。①の「返納」と②の「取り消し」では社会的な信用も違ってくる。

 内部告発者は「虚偽内容に基づく申請」や「重大な労働基準関係法令の同一条項に複数回違反」の疑いを指摘する。ただ、申請時の場合、前出の再徹底文書を見る限り、誓約書が求めている「2017年4月1日から申請日までに」「長時間労働等に関する重大な労働基準関係法令の同一条項に複数回違反していること」には該当していないようだ。

内部情報で虚偽事実判明したケースか

 一方、「申請後又は認定後に新たな法令違反等が発生した場合」の「②内部からの情報提供により虚偽等の事実が判明した場合」には該当しないのだろうか。

 再徹底文書には「コンプライス違反は、いかなる理由があっても許されず、このような事態が再発していることは極めて深刻な状態です。また、結果としてレピュテーションリスク(編集部注:企業の評判が下がり業績が悪化する危険性)に大きく影響していることも、重く受け止めなければなりません」と記している。

 これに対し、内部告発者は「もっともらしいことを記載しているが、違法行為を隠蔽する体質は変わっていないため、今回の情報提供に繋がっている」と言い、複数の社員が経産省に対して内部告発を行ったという。

 一方、武田のコーポレート・コミュニケーションは「認定後に労基署の指摘があったことから、担当省と相談して認定を自主返納することにした」と編集部に説明する。

 また、経産省商務情報政策局ヘルスケア産業課は「個別の企業の返納理由については公表できない。企業の事情によって返納するケースはある」と言う。また「虚偽内容に基づく申請」や「重大な労働基準関係法令の同一条項に複数回違反」の疑いについては、「経産省としては適切に対応している」としてルール違反はなかったと話す。

 次にプラチナくるみんの返納について。同制度は次世代育成支援対策推進法の改定に伴い、15年からスタート。「子育てサポート企業」として厚労相が認定した「くるみん」を受けた企業のうち、より高い水準の取り組みを行った企業が認定を受けられる制度。認定マークを広告や商品、求人広告などに付け、子育てサポート企業であることをPRでき、一定の要件を満たせば、税制上の優遇措置も受けられる。

 くるみんは3104法人、プラチナくるみんは289法人が認定を受けており(今年5月末時点)、武田は15年に認定を受けていた。

 認定基準の一つに「法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと」があり、その中に「労働関係法令の同一条項に複数回違反」がある。

 内部告発者は健康経営優良法人のケースと同様、違反に対する疑惑を指摘するが、厚労省雇用環境・均等局職業生活両立課は「個別の事案については一切お答えできない」と編集部に話す。

 武田は健康経営優良法人の認定を返納した直後の6月7日、グループ内部監査部門(GIA)監査等委員会室が「時間管理におけるコンプライアンス遵守徹底に向けた私たちのコミットメント」と題したメールを「日本の従業員の皆さん」に送った。この中で、健康経営優良法人の返納とプラチナくるみんの返納予定を知らせ、各職場のマネジャーには適切な勤務管理、従業員には働き方改革への取り組みを呼び掛けた。メールに幹部社員の氏名が列記されていることに対し、内部告発者は「労基署に向けたポーズ。後日提出することで、『労基法違反について真剣に受け止めている』と見せかけるため」と冷ややかに受け止めている。

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