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製薬企業から「癌診療ガイドライン委員」への謝金の実態

製薬企業から「癌診療ガイドライン委員」への謝金の実態
255人の委員に総額3億7800万円が支払われる

製薬企業から代表的な癌診療ガイドラインの委員へ支払われた謝金についてまとめた論文が4月26日、米国医師会雑誌『JAMA Network Open』に掲載された。公益性の高いガイドラインの作成において、委員と製薬企業との関係に透明性を求める内容となっている。

 NPO法人「医療ガバナンス研究所」と、調査報道を行っているNGO「ワセダクロニクル」が共同で構築したデータベースを基に、同研究所メンバーの医師5人が論文を作成した。弊誌3月号で報じた、医学会理事に対する製薬企業の支払いをまとめた論文に続く第2弾だ。

 近年、高額な癌治療薬が多く登場している中、医師の処方や治療の方針に大きな影響を与えている癌診療ガイドラインの委員に対して、製薬企業がどのような影響を与えているのかを調べることは重要だ。

 そこで同研究所の医師らは、日本製薬工業協会(製薬協)に所属する71社と、製薬協規約に準じた7社が公表しているデータを基に、2016年度に各社から医師個人に支払われた金額を集計。肺癌、胃癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、乳癌の6つの主要な診療ガイドラインの委員に提供された金額を解析した。

 その結果、6つの癌診療ガイドラインの計326人の委員のうち、255人(78・2%)が謝金などを受け取っていたことが分かった(表①)。件数は計3947件で、金額は計約3億7800万円に上った。内訳は講演料が約2億9600万円、コンサルタント費が約6000万円、原稿料が約2000万円だった。

 受け取った金額の平均は116万円で、17人が550万円以上(5万㌦)、3人が1100万円以上(10万㌦)を受け取っていた。

 ガイドラインごとの金額と受け取った委員の割合は、胃癌(4800万円、92%)、大腸癌(4400万円、92%)、肺癌(1億2700万円、77%)、膵臓癌(3400万円、76%)、乳癌(5700万円、75%)、肝臓癌(7800万円、74%)。

 製薬企業から金銭提供が行われていることに関する情報が公表されているかどうかも確かめたところ、乳癌ガイドラインだけが個人ごとに製薬企業名を記載していた。大腸癌、膵臓癌、肝臓癌、肺癌の各ガイドラインは委員全体でまとめて記載していた。胃癌ガイドラインは公表するセクションがなかった。

 さらに、ガイドラインごとに金額の多い製薬会社を調査した(表②)。これらの製薬会社はいずれも各領域の癌に関する治療薬を販売していた。

 また、受け取り額の多い上位15人の氏名と所属を同研究所に明らかにしてもらった(表③)。

 製薬企業からの金銭受け取りが医療行為に影響を与える懸念から、ガイドライン作成に関わる委員は受け取り金額を公表したり、受け取り金額の多い委員は作成に関わらないようにしたりすることは世界の潮流だ。

 論文の筆頭著者の齋藤宏章・仙台厚生病院消化器センター医師は「究極的には、診療ガイドライン作成委員は、製薬企業との金銭の受領がない医師から選出することが理想。そのような在り方がすぐに実施できない場合、ガイドラインが製薬企業の影響を受けていないということを担保するために、どのような工夫や取り組みが必要か、より活発な議論が行われるべき」と言う。


製薬企業から「癌診療ガイドライン委員」への謝金の実態

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